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ペーパーナイフ⑦~骨董屋静海~

自宅兼店に帰宅後、漸は先ほどの店で購入したものと預かった品を比較した。

形、素材が同じのこと。そして彫られている模様は少し違うも曲線などが一緒であることが分かった。

きっと、同じ職人が作ったものなのだろう。
志野茉莉花から預かったほうは使い込まれた様子があるので、彼女の話は一部は本当であることが分かった。

「……彼女はもしかしたら」

漸は彼女の話を思い出す。

『前世で恋人がいた』『自分は城で反乱されて殺された』『それが恋人だった』『今の恋人から借りてきた』

「それは本当に恋人なのだろうか」

今の恋人と彼女から聞いただけで本当にそうなのか。彼女が思いこんでいるだけではないのか。または何か別なものに‥‥‥。
この職業柄変な事象には時々当たる。
まさか今回も‥‥‥。

色々なことを考えていたら電話の着信音がなった。
それが漸を現実へと戻してくれた。
電話の相手は京本だった。

「もしもし」

『店主!彼女の居場所が分かったよ』

電話の向こうで少し焦ったような声がする。電話から聞こえた住所を掻き取る。

『ごめん、仕事で一緒にいけないから。店主お願いね』

電話を切った後漸は時計を確認した。今は夕方の五時過ぎ。
なんだかんだペーパーナイフを購入しいろいろとやっている間に時間はあっという間に進んでいたのだ。
漸は書き写した住所のメモをもってすぐに出かける準備をした。
その時にふと目に入った二対のペーパーナイフ。
今これをもっていっても何もならないのはわかっているが、目に入った。
漸は何を思ったのか素早くそれらも荷物に入れて、玄関を後にした。

夕暮れが徐々に赤色を濃くして空を染めている。
これから徐々に黄昏時ー別名逢魔が時へと時は移っていく。


大通りでタクシーを拾い、漸はメモの住所を伝えた。
漸の店から三十分ほどでつく場所だが、交通事情などもあり一時間ほどかかってしまった。
支払いを済ませて急ぐ。指定された場所はマンションだった。
オートロックの為一階で番号を押して入らなければならない。
どうしたものかと思っていたら、ここの住人らしき人間が中から出てきた。
それに合わせてタイミングよく空いたので、漸はさらりと入った。

日はもう落ちかけていた。

そこから5階に行くためエレベーターに乗る。
エレベーターの機械音が漸の耳に入ってくる。
気持ちは焦っている。それに自分の予想が正しかったら、それこそ悲劇しか生まれない。刃物が生み出す悲劇は古今東西それしかない。

チン。エレベーターがなり、漸は素早く降りる。
円形のフロアから左右に住居部分へとつながる廊下がある。
どちらか把握していなかった。

『や、やめてくれ!』

男の声が漸の耳に届く。それが左であったため漸は急いだ。
声があったのはちょうど住所に書いてある部屋番号だった。
漸はノックもなく勢いよく部屋を開ける。玄関から伸びる廊下、後ろ手に手をつき逃げようとしている男、しかし、手は必死にまっすぐ前に出して牽制している。その手から血がぽたりとぽたりと垂れている。

その前には数週間前、喫茶店で話を聞いた志野茉莉花がナイフを構えて立っていた。
漸は息をのんだ。彼女の持っているナイフはあのペーパーナイフにそっくりだったから。

⑧へ続く。



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