宵笑八神ってぇ、筆の端くれでありんす
ごあいさつ
さぁ、お立合い右や左の旦那様方、通りすがりのご隠居様も、お目患いで申し訳もござりんせんが、ちょいとお立ち寄りくださんし
わちき、「宵笑八神」と申しまして、その名は「宵に笑う八つの神」なんてぇのは、見栄張ってのことばかりんす
実のところは筆の端くれ、三文狂歌で野心を育てる狂い咲きの小娘にござりんす
素性は夜の吹き溜まり、名乗るほどのもんじゃあござりんせんが、狂歌をひとつ、夜な夜な詠んではこの世の裏を覗き見て、笑いと毒とを匙加減
「少々野心がある」ってぇのも、名前の読みの洒落でして、夢と皮肉を混ぜこぜにした、江戸っ子の遊び心ってぇやつでござりんす
わちきの歌を聞いて、笑うもよし、眉をひそめるもよし
それもまた、浮世の味わいってぇもんでござんすから
今宵のご縁も夢のうち、どうかひとつ、わちきのことも胸の隅に、ちょいと置いといてくださんし
早速ではありんすが
床を急ぐなんざぁ、粋の皮をかぶった野暮の骨頂でござんすが
色町じゃあ、抜く手差す手も間合いが命
いきなり布団に飛び込むような真似をしちゃあ、風情も艶も吹っ飛んじまいますからね
とは言え、今宵お目見得の宵笑八神、まずはご挨拶の歌など少々、お許しくださんし
わちきの歌で、ゆっくりと夜をお楽しみくださんせ
床急ぎ 粋のつもりが 野暮の骨 艶の間合いを 知らぬ口説き手
今宵のお題は「曼珠沙華」
さてさて、今宵のお題は「曼珠沙華」でござりんす
赤き花、咲いては消え、艶と毒の間を揺れる、なんとも業の深い花でありんす
色町の裏路地にも、墓場の縁にも、人知れずひっそりと咲く情の花
曼珠沙華は「悲しい思い出」や「あきらめ」といった花言葉を持つ一方で、「情熱」「独立」「再会」「また会う日を楽しみに」といった前向きな意味も持ち合わせておりんすね
その姿は、わちきのような身には、どこか心を揺さぶられるものでござんす
毒持つゆえに、墓地などに植えられることも多かった花ですが、決して不吉な花ばかりではないのでござんす
曼珠沙華は赤色だけではなく、白や黄、ピンク、オレンジ色の種類もありんすね
それぞれ異なる花言葉を持つため、色の持つ意味合いも、また奥ゆかしいものでござんすよ
例えば、白は「想うはあなた一人」、黄は「追想」や「陽気」、ピンクは「快い楽しさ」や「深い思いやり」、オレンジは「妖艶」といった花言葉がありんす
咲きて散る 艶めく花は 人の夢 毒も甘いも 袖に隠して
赤き花 墓場で宴 開く夜 「生きてるうちに 来てほしかった」
君去りて 言の葉ひとつ 残りけり 胸に咲きたる 曼珠沙華かな
えー、ここらでちょいと趣向を変えて…
曼珠沙華 インスタ映えと 言うて撮り 祖母の墓前で 行儀欠く
通知なし 恋の終わりを 悟りけり 胸に咲きしは 曼珠沙華なり
つぶやくは 指先とろけて 光る文 彼岸の花も いいねで買うとき
てな風ではありんすが
幸手権現堂のお祭りには、どうもわちきと深いご縁があるようでござんすね
桜、紫陽花、曼珠沙華と、四季折々に美しい花を咲かせる堤のように、わちきもまた、季節の折々にこうしてお目文字するやも知れんせん
その節は、どうぞよしなに
今宵はこれにて、御免遊ばせ
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