雪和尚 #毎週ショートショートnote
ある大雪の晩、信心深い老母が息を引き取りました。
息子は枕経を上げてもらおうと、腰まで埋まる雪の中を寺へ向かいましたが、
「この雪では無理だ」
と和尚に門前払いを食らいます。
「これでは母が迷ってしまう」
息子夫婦が涙に暮れていた、その時です。
戸を叩く音が響き、真っ白な法衣を纏った、童のような僧侶が現れました。
「経を上げに来た」
透き通るような声。
その読経は深く、心に染み渡るものでした。そして夜明け前、夫婦の引き留めにも構わず、僧侶は吹雪の中へ消えていきました。
「どこの坊さんだろうか?」
名乗りもしなかった無口な僧侶に、息子夫婦は首を捻りましたが、春になり雪が溶けた頃、夫婦は母が熱心に掃除していた地蔵堂で、思わぬ再会を果たしました。
そこにある地蔵様の顔が、あの晩の和尚に瓜二つだったのです。
それから夫婦は亡き母の遺志を継ぎ「雪和尚」と呼んで、生涯そのお地蔵様を大切に守り続けたそうです。
とっぴんぱらりのぷう
本文408文字
こちら、田原にかさんの「毎週ショートショートnote」の参加記事となります。田原さん、皆さん、よろしくお願いします!
「昔話みたい」ということなので、昔話風にしてみました。
これはもう、昔話の王道展開。
選択されるBGMの脳内再生も余裕。
ほっこりしていただいた後は、文字通り凍えていただければと思い、<おまけ>の方はホラー風味でございます。
<おまけ>
裏お題:好き化粧
彼女は毎朝、私の顔に触れる。
ファンデーションを塗る指はやさしく、リップを引く手つきは恋人のようだった。
「今日も可愛いね。これで、私の『好き』に近づいた」
鏡の中の私は、日に日に彼女に似ていく。眉の角度、口紅の色、目元の影。最初は褒め言葉だった。
「似合う」
「嬉しい」
断る理由なんてなかった。
ある朝、鏡に違和感を覚えた。
そこに映っていたのは、私の服を着た彼女だった。
背後で、声がする。
「ほら、完成。好き化粧。あなたはもう、私の顔が一番似合う」
鏡の中の彼女が微笑む。
私は叫ぼうとしたが、唇は彼女の形に固まって、もう開かなかった。
ふと足元を見ると、脱ぎ捨てられたストッキングのように、血の気のない「誰かの皮膚」が転がっていた。
それは昨日までの『私』だった。
「最近、雰囲気変わったよね」
街で誰かがそう囁くたび、私の内側で、彼女が嬉しそうに喉を鳴らしているのがわかる。
それが、彼女の一番好きな言葉だから。
本文408文字
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