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米津玄師とアウトサイダー・アート

アニメ「チェンソーマン」のオープニング曲がすばらしいので、ずっと聴いている。

漫画「チェンソーマン」が面白いと先日書いたが、そもそもこの作品は最近アニメ化されており、絶賛放映中のようだ。

ジャンプ作品のアニメというとドラゴンボールやワンピースみたいな、超ロングランのアニメを想像するのだけれど、最近の漫画はもっと短くキリの良い作品も多いため、「鬼滅の刃」などもそうだったがあまりジャンプのアニメっぽくない。誤解を恐れずに言うと、ジャンプのアニメとしては一話一話にしっかり金がかかっており、クオリティーが非常に高い。

で、主題歌が米津玄師である。ちょっと前にシン・ウルトラマンの主題歌を担当したのが記憶に新しいが、こういう話題作では引っ張りだこというか、いろいろなところで名前を見かける。

ウルトラマンの時も感じたのだが、米津玄師はこういった「主題歌」にかけてはとにかく天才的な才能を発揮するのである。僕もアマチュアではあるものの、依頼を受けて音楽制作をしたりもするので、「求められて音楽を作る」ことがいかに難しいかというのはわかる。

作品の雰囲気を壊さず、むしろ盛り上げることが必要だし、歌詞やその他いろいろな制約もあるだろう。その上で音楽としての完成度を高めていくというのは非常に難しいことなのだ。

このチェンソーマンのオープニング曲は「KICK BACK」と言うタイトルで、歌詞の内容もきちんと原作の内容に沿ったものになっている(かつ、作者の藤本タツキ先生の別作品「ルックバック」というタイトルをもじったものになっている)。

何より驚くのが構成の複雑さで、最初に聞いた時からなんだかガチャガチャした曲だなと思ったけれど、これを分析している音楽系YouTuberによれば、何度転調するんだというぐらい転調しており、とにかく混乱するほど複雑な曲らしい。

ただ聞いてる分にはそこまで違和感は感じないのだが、とにかく変わった曲だな、というのはわかる。




先日、「アウトサイダーアート」について書かれた本を読んだ。

アウトサイダーアートとは、正規の芸術的な訓練を受けていないアーティストによる芸術作品のことである。もっとも、世の中で活躍しているアーティストで正規の芸術的な教育を受けていないアーティストは死ぬほどいるため、定義づけが難しいのだが、なかでも、ヘンリー・ダーガーなどに代表されるような、発表することを前提に作っていない作品群のことを指すようである。

何が「インサイダー」で何が「アウトサイダー」かという区分は非常に曖昧で、芸術作品のほとんどはアウトサイダーなんじゃないかとも言えるのだが、しかしそういう区分は存在する。

米津玄師はもともと「ハチ」という名義で、ニコニコ動画で楽曲を発表していた経歴をもつ。僕も当時からニコニコ動画のヘビーユーザーだったのでよくわかるのだが、とにかくあの頃は音楽に素養のある人もない人も、とにかくガチャガチャといろんな楽曲を作っては気軽に発表していた。

パソコンソフトの発展により、音楽の知識がなく、楽器が弾けなくても楽曲を作ることが可能になり、とにかく「興味がある」というだけで音楽制作ができる時代になった。僕も音楽の教育は一切受けていないが、その頃に楽曲制作の楽しさを覚えた。

インターネットという公開の場があったからこそ、そういったことが可能になったのだが、あの時代に楽曲を投稿していた人の大半はプロを目指して楽曲発表をしていたわけではなく、あくまで「楽しいから」やっていたにすぎないため、その意味ではアウトサイダー・アート的と言えるのではないだろうか。



米津玄師はプロのミュージシャンを目指していたらしいので、その意味では正統派なところがあるのだが、動画配信サイトに無料で楽曲を発表していたということで、マインドとしてはアウトサイダー・アーティストと呼んだほうが近いのではないかと考えている。

今回の楽曲で、何回転調するんだと分析する人の頭を悩ませているのは、理論ではなく、感性を軸に楽曲を作っているからだろう。つまり音楽的な約束事を最初から一旦無視して作っているので、一見するとガチャガチャした曲なのだが、長年の経験や編曲の技術によってひとつの楽曲に纏め上げてしまう。そういう芸当ができるから天才なのだと思うのである。

制作手法が変われば、できるものも変わる。これまではピアノを前に五線譜におたまじゃくしを描いて楽曲を作っていたのに、今ではパソコンをガチャガチャと弄るだけで新しいものを生み出すことができる。

もちろんその真価を引き出し、使いこなすことができる人は一握りではあるのだが、そういう環境が生み出した天才が米津玄師だと言えると思う。

いずれにしてもこんなにすごい楽曲を作ることができて、かつ作品の雰囲気とマッチさせるというのは神業としか思えない。とにかく手放しで絶賛できるアーティストの一人である。

また、今回の楽曲で面白いなと思ったのが、繰り返し歌われるフレーズに「努力 未来 A BEATIFUL STAR」というフレーズがあるのだが、これはなんとモーニング娘。の歌詞の引用らしいのである。

チェンソーマンのイメージを体現しなければならない制約がある中で、全く毛色の違うモーニング娘。を引用するというセンスも、もう脱帽である。

米津玄師からは、どんなモチーフでも自分で咀嚼し、自分の中に取り込んでしまえる貪欲さと、強烈な個性を感じる。

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