青空と雲海と光と影
お知らせの”#夏の1コマ”を見たときに頭に浮かんだ登山があります。3年前の7月の山行ですが今でも鮮明に覚えています。
01 プロローグ
日の入り前に青空が戻った旭岳。山を包んでいた雲は少しずつ高度を下げ、その上に漂う透き通ったガスが頂上の斜面に沿ってゆっくりと流れる。そして景色が色づく。太陽が戻ってきたのだ。
そこに現れた虹色の輪。ブロッケン現象だ。数倍にも伸びた自身の影が七色の光に包まれ、中空に浮かび上がる。

02 旭岳の頂へ
コロナ禍の減便により、とかち帯広空港から大雪山に向かう行程が組めず、早朝便で旭川空港に向かう。9時半に旭川空港に到着後、レンタカーで東川町のモンベルとコンビニで2泊3日の装備と食料を調達して、旭川ロープーウェーに向かう。
11時40分発のロープーウェーで”すがたみ駅”まで登り、12時に登山開始。あいにくガスに覆われ視界は30mほど。もちろん旭岳は見えない。ガスがはれることを期待しながら登るも終始ガスが抜けることはなく、13時20分に登頂。景色のない頂は早々に後にして、裏旭のテント場に向かう。
テントを張り、遅めの昼食を摂っていると時折青空が覗く。しばらく散策していたが、再びガスに覆われ小雨が落ちてきたためテントに戻る。雨が止むのを待っているうちにいつのまにか眠っていた。
まぶしさと暑さで目が覚める。テントに戻ってから30分しか経っていないのにガスははれ、青空には今日初めて見る太陽。

03 夕刻の頂
陽光を照り返す雪渓を登り、旭岳の山頂に向かう。雪渓を越え、少し登ると満開のキバナシャクナゲの白い花が沈みゆく太陽に輝いていた。

17時20分に今日2度目の山頂に立つ。時折、ガスが青空を隠すが、少しずつ青空の時間が長くなる。そこに突然現れたブロッケン(冒頭の写真)。誰もいない独りの頂上で歓喜する。
沈みゆく太陽にあわせるように山を覆っていた大量の雲が引いていくと表台雪の峰々が姿を現す。切り落ちた斜面の先の地獄谷の噴気孔からはモクモクと水蒸気が立ち上る。斜面を昇ってきたガスが夕陽に染まりながら流れていく。

04 夜の頂
雲海が広がる西の空にはまだ明るさが残るが、熊ヶ岳の上にはうっすらと天の川が現れた。昼間の天候のせいかテント場は独り。

21時過ぎにテント場を出て、大雪の峰々に横たわる天の川を背に頂に向かう。21時半に今日3度目の登頂。トムラウシ山あたりから天の川が伸びていた。

地獄谷側の斜面では、ちりばめれれた星の下に街明かり。想像もしていなかった旭岳からの夜景。暗闇に雪渓が浮かび上がり、噴気孔からは絶え間なく水蒸気が昇る。

この景色も束の間。5分後には、ガスの中に景色が消える。ヘッドライトで見えるのは足下だけ。雪渓に残った自身の足跡を頼りにテントに戻る。
翌朝、テントから外を覗くとガスが立ち込め真っ白い世界。ゆっくり休むことにする。
05 エピローグ
ブロッケン現象には、これまで数回遭遇しています。いずれも穏やかで、ガスに覆われているときに突然現れました。その後、劇的に景色が変わっていく様に立ち会えます。
一方、ガスがはれるのを期待して登っていると雨に降られることもあります。それだけに青空が見え、後光が射すと願いを叶えてくれた神様に「ありがとう!」と独りごちています。
編集後記
7月に妻の妊娠がわかったと同時に激しいつわりに見舞われたことから、この夏に予定していたすべての山行をキャンセルし、妻の介抱第一に過ごしています。そして空いた時間は、このnoteの執筆を楽しんでいます。
なので今年の山での#夏の1コマ”は、「ないなー」と思っていましたが、冒頭に書いたようにこの山行を思い出したので紹介しました!

