見出し画像

ローカル放送局の再生は「メディア産業のUPDATE」と「昭和からの脱却」の象徴。

 コロナ禍による広告売上低下で、長期低落に追い打ちをかけられているテレビ業界から、久々に前向きなニュースを聞いた気がします。

デジタル化と国際化への失われた〇〇年

 戦後復興から高度成長期に作られた日本の仕組みの多くは、精緻によくできたものでした。その成功体験があるが故に、デジタル化という環境変化への対応に遅れを取り続けて、それが原因で国際競争力が低下しているのが、日本の状況です。「失われた〇〇年」というのは、要するにデジタル化に対応してビジネス生態系を改めずにいた〇〇年というのが僕の理解です。
 日本のレコード産業もDXに抵抗して長期低落した典型的な業界の一つですが、メディア業界はその筆頭と言えるでしょう。許認可事業で政治との距離が近かったり、ジャーナリズムという社会の公器的な役割があったりするので、ビジネスモデルの改革を遅らせる「言い訳」がありました。でも、さすがにもう無理でしょう。全国の配達所を使った紙の新聞の宅配も維持できないし、視聴率至上主義での放送番組コンテンツの制作も限界です。
 僕が日本のドラマ制作のフレームワークに問題があることを知ったのは20年くらい前です。日本音楽制作社連盟の理事として、地上波在京テレビ局の海外販売の部署の方が、海外にライセンスする際の音楽著作権の扱いでお話を伺った時のことです。その時の阻害要因は、ご多分に漏れず、日本のレコード会社の内向きの許諾姿勢でした。レコード会社が足を引っ張っているのはいつもの景色なのですが、その時に知って驚いたのは、1クール✕1時間枠のドラマは海外では売りにくいという話でした。
 毎週同じ時間に1時間番組(CMなどを覗くと50分弱)3ヶ月間(1クール)放映するとというドラマの一般的なフォーマットは、日本独自のビジネス慣習でスポンサー企業と大手広告代理店をマネタイズ対象には都合が良くても、海外では短すぎて売りにくいとのこと。NetflixやAmazon VideoなどのOTTサービスで海外のドラマを観るようになると体感としてわかりますね。日本の3ヶ月12週を基本にした制作体制は、ドラマを楽しむユーザーの気持ちとコンテンツそのものをマネタイズするするためのフォーマットになってない訳ですね。以来、20年経ってもそのフォーマットを改めようとしないテレビ局ドラマ制作の体制にも呆れます。

昭和の残滓としての県ごとのテレビ局

 さて、そんなガラバゴス的な特殊な発展を遂げて成長が阻害されているテレビビジネスの中で、喫緊の課題は、ローカル局です。東京で作られた番組を届ける「電波中継所」としての機能は、衛星放送やインターネットの発達で不要になっています。地方発の情報発信として重要な役割を担っているのですが、現状では制作費も制作スタッフも脆弱です。そもそもキー局の系列数だけ、1県に3つも4つもTV放送局が必要か、成立させられるのかという疑問には、誰もが「不要だし、無理」と答えることでしょう。日本は国営放送と民間放送が両方とも「成功」した世界でも稀有な国です。NHKもローカル拠点を持っています。民放局は各県に1つ、もしくは地域(東北、九州などの単位)で数局というのが適切でしょう。
 このニュースの宮城県の全放送局が共同でやるというのは、そんな課題感の中で意義のある試みですね。是非、成功してもらいたいです。

地方経済の象徴であり、アイデンティティを担う放送局

 地方の放送局の株主は、地方銀行、地方新聞社、地元本社の代表的企業などである場合がほとんどです。ラジオ局を併設しているケースも多く、地元の経済界をバックに地元メディアとして運営されていまるということは、そもそもの存在として地方経済の活性化への寄与を期待されています。 
 これまでは地方発の小さなニュースを伝える以外は、東京制作の番組を中継して放送して、電波代金をスポンサーから受け取るのが効率的なビジネスモデルでした。この構造が、番組制作力を強化することを妨げていました。情報の届け先も地元の人達がターゲットでした。
 これから求められるのは、地元発でグローバルに情報発信していく力です。その地域の文化的アイデンティティを担う役割がこれまでの数倍求められますし、インターネットを活用することで無限の可能性を秘めています。
 地方経済を活性化する観光の強化はもっともわかりやすい役割ですね。コロナ禍が収束すれば、外国人観光客も戻ってくるでしょう。観光の先導役は地元住民の理解も得やすく、協賛企業の獲得にもわかりやすくスムーズです。その際には、地域の文化的なアイデンティティをしっかり掌握して、わかりやすく伝えることです。東京発信のメディアではできない、地元密着した局ならではの価値観を伝えることが期待されます。

地方在住のままアーティストとエージェントをスターに!

 アイデンティティを伝えるという意味で、僕が一番期待したいのは、地元のアーティストの紹介の役割です。SoundCloudで世界一位になった女子高生テクノユニットLUSBUBの先週のニュースからもわかるように、インターネット時代は、グローバルに情報が瞬時伝わります。ローカルに音楽活動するアーティストの魅力を継続的に伝える役割を是非、果たしてもらいたいです。アメリカでチャンス・ザ・ラッパーが2017年にグラミー賞受賞しながら、地元シカゴを離れないという選択は驚きを持ってポジティブに伝えられましたが、日本でもいつ出てきてもおかしくありません。音楽業界は東京にしかありませんが、もはや従来の音楽業界が関わらなくても、スターやヒット曲は生み出せる時代です。ローカル在住の若い、コンサートプロモーターやエージェント、マネージメントが地元アーテイストと一緒に世界で活躍する、そこを支える地方放送局、という図式は、地方創生に繋がる、文化的アイデンティティの確立を観光振興が同時に可能になる理想的な形です。
 コンサート配信サービスFAVERは、そんなローカルのスタッフとアーティストの支援策を継続して行っていくつもりです。ローカル放送局とも連携できたら良いなと夢想しています。

podcastはRADIO TALK、Spotifyなどで配信しています。ブックマークをお願いします。まぐまぐでメルマガも毎週発行です。読者登録お願いします!Amazonには著者ページありますので、チェックしてみて下さい。


いいなと思ったら応援しよう!

山口哲一:エンターテック✕起業 モチベーションあがります(^_-)