見出し画像

音楽ビジネス最前線2021〜「個」へのパワーシフトで全てのサービスが「as a service化」する時代に世界と日本で起きること

 事態が変わらなくてもくじけずに、正しいと思ったことを言い続けるのって、大切なことですよね。僕が脇田敬と二人でニューミドルマンというコンセプトで音楽ビジネスの「体質改善」の必要性を問い始めて、気づけば7年経っていました。日本の音楽業界のDXが、世界標準に比べて約6年遅れ、世界で最もIT化が遅れているのが日本の音楽界になっている現実は、自分の力不足を感じて忸怩たる思いです。ただ、そのお陰というのも変な言い方ですが、脇田と僕の発言力は、随分、大きくなったように感じます。「山口君の言う通りだったね」と言われることも増え、相談を受ける立場になっています。

 さて、新年度ということで、改めてニューミドルマンコミュの仲間たちと一緒に音楽ビジネスの構造変化について確認しつつ、ディスカッションする場を持ちたいと思います。
 起業家育成に取り組み、投資家に納得度高く出資してもらうというスタートアップスタジオ代表の立場だと、マクロ的な視点で、成長領域にしっかりと事業の核を置いて、ロジカルに説明することが必要です。音楽ビジネスについても、収益構造や役割分担の根本的な変化について伝えるのが僕の役割だと捉えています。
 この日も従来の音楽ビジネスの経験がある人ほど、陥りがちな、構造変化について、しっかりポイントを押さえて、考察を深めたいと思っています。

 前段としては、インターネットが全ての産業に及ぼした「特権階級の消滅=民主化」、個人へのパワーシフトが音楽でも強烈に起きています。これからもっともっと進みます。
 立派なスタジオでプロフェッショナルエンジニアと一緒に高品質の音源を作り、マスメディアを活用して沢山の人に知ってもらい、全国の専門店で効率的にCDを販売するというモデルは、レコード産業がビジネスの「プラットフォーム」の役割を担っていました。これがずべておいて「パワーシフト」しています。
 自宅でDAWソフトで安価な音楽制作が可能になり、SNSやUGM動画サービスので口コミ拡散が一番重要な告知方法になり、音楽ストリーミングサービスが音源ビジネスの中心になり、再生回数に応じて、ユーザーが月額で払った金額が分配されるというのが今の世界のモデルです。日本は6年遅れていますが、同様の状況になることは確定しています。

制作:プロ用スタジオ➡自宅でDAW
宣伝:マスメディア➡SNSで口コミ
販売:CD店に対象に並べる➡ストリーミングサービスでの再生
ヒットの肝:発売日を盛り上げる➡配信してからのユーザー反応で拡散

 全てにおいて「会社」や「大きな資金」が無いとできないことは、音楽活動においては無くなりました。これが、個人へのパワーシフトが起きている根本的な理由です。不可逆的な変化で加速することは合っても、元に戻ることは基本的にはありません。枝葉的な例外ケースはありますし、そういう「逆張り作戦」は音楽の場合あり得るのですが、まずは王道としての構造変化をしっかりと捉えましょう。

 僕が最近、衝撃的だったのは、Artist without Labelを自称していたAWALがソニー・ミュージックに買収されたことです。詳細は2月に書いたこちらのエントリーをご参照下さい。

 僕が衝撃的と感じたのは、「個へのパワーシフト」のフェーズが世界では僕の想定以上に速いからです。スタートアップが大企業に買収される(Exitすると言いますね)理由は幾つかありますが、同業大手の買収は潮目の変化を示すと見るのが一般的です。
 従来のレコード会社の機能をデジタル部分だけ切り取って、アーティストにサービスとして大教するというAWALのビジネスモデルを、経営者が成長曲線の角度が下がる、つまり売り時と判断したと思われます。親会社であるKobaltも同様の判断なのでしょう。日本の感覚でいうと、とても早い見切りですね。音楽ビジネスにおける急成長領域が「As a sevice型のレーベル」では無くなったと僕は受取りました。Startupスタジオ代表としては、次はどこかを見出していかないといけません。
 同時に驚いたのが、グローバルメジャー3社の一角であるソニーミュージックがこの段階で買収をしたことです。これは、アーティストが主役でレーベルは機能を提供するという次世代型のレコード会社の在り方をソニーが受け入れたことを意味します。僕はメジャー3社は、従来型からアーティスト主導への変化にブレーキを掛ける、遅らせようとする方向で動くのかと予想していました。ユニバーサルとソニーで競ったと噂のこの買収劇は、メジャー3社も「個へのパワーシフト」という流れを受け入れて、促進しつつ、自らのポジション取りを模索しているという意思を感じます。ブレーキを踏むプレイヤーがいないということは、必然的な変化がもっと加速していくことになるでしょう。

 そこで翻って日本を見ると、周回遅れの状況です。いまだに「サブスクって儲からないんじゃないの?」みたいな10年前に欧米で議論が済んで、試してみて検証も終わっている話を人すら居るのが日本です。AWALの買収のニュースを知って、また日本の周回遅れが1周増えたというのが僕の感覚でした。

 さて、大切のは音楽です。音楽家と音楽ファンが大切というのが僕の基本的な立ち位置です。レコード会社や投資家のために音楽がある訳ではありません。では、音楽を愛し、仕事にしている僕たちは、この構造変化に対してどう取り組めばよいのでしょう。具体は各論になりますね。「神は細部に宿る」とも言います。皆さんの悩みも千差万別でしょう。いろんな話をざっくばらんにできればと思っています。質問もなんでもお受けします。沢山の参加をお待ちしています。
  Peatixからお申込みください。

「知る」「創る」「つながる」で、次世代型の音楽ビジネスを先取りして実践する、日本のMusicTechの中心地「ニューミドルマン・コミュニテイ」の申込みはこちらです。



いいなと思ったら応援しよう!

山口哲一:エンターテック✕起業 モチベーションあがります(^_-)