成功体験からの脱皮と次フェーズへの対応が必要な「日本型経営」〜『コーポレート・トランスフォーメーション』に学ぶ日本のギョーカイをつくり変える方法
前作『コロナショックサバイバル』出版時から予告されていた後編。予約購入して読みました。期待以上にためになる本でした。
高度成長期からバブル崩壊の頃まで、持て囃された「日本型経営」が完全に時代と合わなくなっていることをロジカルに紐解き、対策を丁寧にまとめている素晴らしい内容です。
日本の大企業の病とも言える構造的な問題点を徹底的に炙り出している本です。サラリーマン経験のない僕ですが、外部に排他的に内部には曖昧な柔構造という日本の「カイシャ」は、そのまま日本の「ギョーカイ」と読み替えられるなと思いました。社員数的にも売上規模的にも、エンタメ領域の一つの業界は全体で、トップクラスの大企業と同じくらいと言えるでしょう。
環境変化が要求する変異幅が一定以内であれば日本的経営モデルは「あ・うん」の呼吸で現場主導でできて、強みが出るという指摘もなるほどと思いました。筆者が喩える、野球をソフトボールにするくらいまでだと上手に対応して、強みを発揮できるけれど、今は変化が激しいので、巨人の坂本選手がいくら身体能力が高いからって、いきなりセリエAの選手とサッカーしてかなうわけないというのも言い得て妙でした。
デジタル革命が進展する中で、カジュアルで済んだウエブサービスが、AI/IoT/ビッグデータを使った、リアルなサービスの領域に及び、シビアさが求められている、この「カジュアルからシリアスへ」の進展は日本企業にチャンスがあるという視点は、なるほどと膝を打ちました
カジュアル〜シリアスへの変化に加えて、グローバルが激化すると主に、ローカル産業の重要性が増す(「GとL」を区別するいう2つの指摘は、2017年刊(僕はこの本のあとに読みましたが)の『AI経営で会社は甦る』 の方が詳しくわかりやすいです。重要性を強調しても強調しきれない、貴重な視点だと思います。
グローバル競争は半端じゃない、そこにでていく日本人や日本企業を生みだすことも大切だけれど、ビジネスパーソンはローカルでしっかり貢献できる人材になることも同じくらい重要だ。Lの世界のデジタルサービスにシリアスの要素が入ってくるので日本企業の良さを活かす余地がある。でも、だからこそデジタル化への対応、従来日本型のままでは駄目で変わる必要があるというのは多くの日本人ビジネスパーソンに重要な指摘でしょう。地方創生の肝になる発想です。
トライアンドエラーの感覚で、サービスをローンチしながらグロースハックしていくという方法が有効な「カジュアル」なデジタルではシリコンバレー企業の独壇場だったけれど、生き死にが関わり、リアルトの関係が深くなる「シリアス」のあデジタルサービスは、日本的な丁寧さや蓄積を活かせるというのは日本人に勇気が出る分析えもありますね。
さて、エンタメビジネスという視点からだと、本書の中の「スマイルカーブ」の認識が最も重要でしょう。一つのサービスの中で、最も川上の商品の企画、広義のデザインを受け持つことと、ユーザー側川下の領域の両端が収益性が有り、その中間の生産、組み立て、流通といったところは過当競争に鳴って利益が上げられないという図のことです。経営学だとバリューチェーンという言い方をしますね。
これは例えば、音楽ビジネスで川上であるアーティストと川下である配信事業者が重要で、レーベルなどは中抜きされていくという構図で説明することができると同時に、商材やバリューチェーンの構造をもう少し大きな視野で捉えた時に、エンタメコンテンツがバリューチェーンの中でオプション的に果たすポジションという意味でも重要だと思います。商品がユーザーに届く川下のところで差別化ができるのであれば、高い収益性のある領域で活かすことができるという意味です。
本書で指摘されている公共財の再定義という観点でも、著作物であるエンタメコンテンツを日本産業浮上のために活かすことはできないのか、過去作品も含めたビジネス生態系を作れないのかという議論する価値があるなと思いました。
目からだけでなく、耳や顎からもウロコが落ちる、オススメの本です。カタカナタームも少なく有りませんが、とても読みやすくわかりやすいです。コロナ禍の現実にポジティブに向き合うためにも一読を薦めます。
前作の読書記録はこちらです。
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