獣医さんでも迷う、自分ちの老猫治療の選択肢
診断した日 ― それでも日常は続いていく
診断したのは、「私自身」でした・・・でも、それを受け入れるのは簡単ではありませんでした。
2015年11月21日、私は、愛猫キャンディ(1998年3月21日生まれ:当時17歳)を「慢性腎臓病」だと診断しました。
そう、診断したのは、他の獣医師ではなく、「私自身」です。
それでも、「その事実」をすぐには受け入れられませんでした。
いや、もっと正確に言うなら、「受け入れたくなかった」のかもしれません。

数値は明らかに慢性腎臓病を示唆するもの。
▶ 尿素窒素(BUN)63 mg/dL
(基準値15~33)
▶ クレアチニン(Cre)4.1 mg/dL
(基準値0.8~2.1)
振り返ると、その前から「兆候はあった」のです。

半年前の2015年6月、クレアチニンの数値は2.5 mg/dLに達していました。

IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類では、慢性腎臓病のステージⅡ。
本来なら、この時点で、何らかの「治療やケアを始めるべきだった」のかもしれません。
けれど、当時の私は、「少し高めだな」と思うだけで、そこまで深刻に受け止めていませんでした。
食欲が落ちることもあったけれど、「夏の暑さのせいだろう」などと、楽観的に考えてしまっていました。
体重だって、「若い頃は4.5kg」あったのに、この2015年11月の時点では、「3.5kgにまで減って」いました。

でも、毎日一緒にいると、変化に気づけないこともあります。
「週に一度でも体重を測る習慣があれば、もっと早く気づけたのに」と、後悔したものです。

2015年11月。
食欲のムラが大きくなり、嘔吐の回数が増え、私はやっと重い腰を上げました。
血液検査の結果を見て、ようやく「慢性腎臓病だ」と認めざるを得なかったのです。
だけど、本当に苦しかったのはここから・・・
「獣医師だから最適な治療を選べる」とは限らない
診断を下した後、私はまず1週間、自宅で連日、皮下点滴を行い、脱水を補正しました。
数値は少し改善しました。

▶ 尿素窒素(BUN)55 mg/dL
(基準値15~33)
▶ クレアチニン(Cre)2.9 mg/dL
(基準値0.8~2.1)
食欲も少し戻ってきたので、次に考えたのは「食事療法」です。
「腎臓病の猫には、療法食が推奨される」
それは、獣医師として当然の知識でした。
しかし、ここで「よくある壁」にぶつかりました。
20種類以上の療法食を試したのに、どれも積極的に食べてくれない。
やっと食べたと思ったら、数時間後に嘔吐してしまう。
家族からも、こんな言葉が出ました。
「療法食って、なんだか"食べ物"の香りがしないよね」
「栄養学的には正しいのかもしれないけど、これって"食事"じゃなくて、ただの"燃料補給"みたい」
確かに、そうかもしれない。
数値の改善を目指して、療法食にこだわることは本当に正解なのか?
「嫌がる食事を無理に与えることが、この子にとっての幸せなのか?」
私は、主治医であるはずなのに、治療の意味を見失いかけていました。
2015年から2017年、この2年間、私はずっと悩み続けていました
◆ 完全な療法食生活にすべきじゃないのか?
◆ 嫌がっても投薬を、もっと徹底すべきじゃないのか?
◆ 獣医師なら、それをやるのが当たり前じゃないのか?
飼い主としての感情と、獣医師としての知識の間で揺れ続けた2年間でした。
私が出した答えは、「治療のために、この子の自由を奪いたくない」というものでした。
私は、最期の最期まで「キャンちゃんが嫌がることをしない」と、決めました。
それが本当に正解だったのかは、今でもわかりません。
ただ、あの時の私が「できる限りのことをした」とは思っています。
このnoteでは、私が実際にどんな選択をし、どんな葛藤を抱えたのかを詳しく語ります。
「こうすべき」と断言するつもりはありません。
ただ、これを読んだあなたが「自分のおうちの猫にとって何が最善か」を考えるヒントにして頂ければ、と思います。
【この記事で得られること】
✔ 獣医師ですら迷った「老猫の治療やケア」のリアルな葛藤
✔ 「最善の治療」と「その子の幸せ」をどう考えるかのヒント
✔ 私の経験を通じて、飼い主として後悔しないための視点
「飼い主として、何を選ぶべきなのか?」
その問いの答えは、簡単には見つかりません。
でも、私が悩み抜いた記録を読むことで、あなたの決断が少しでも軽くなるのなら・・・
そんな思いで、私はこの文章を書きました。
「もし自分だったら?」と考えながら、読んでいただけたら嬉しいです。
温かい感想をいただきました。





投薬、食事、ケア ― 選択肢の多さが苦しさになる
薬を飲ませることが、正しいことなのか?
慢性腎臓病と診断したとき、私は「何をどこまでやるべきか」を考えました。
もちろん、獣医師としての知識はあります。
「腎臓の負担を減らす薬」、「血流を改善する薬」、「食欲を維持する薬」…さまざまな選択肢がありました。
当時、腎臓病の進行を抑える効果が期待されていた薬には、セミントラ(液体) と ラプロス(錠剤) がありました。
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獣医さんでも迷う、自分ちの老猫治療の選択肢
「獣医なら最善の治療ができて後悔もない?」 ――そんなことはありません。 愛猫の最期に向き合い、獣医師として、飼い主として悩み続けた2年…
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