一重まぶたで生きていく。
生まれてこの方一重まぶたである。
今年29歳になるが、アイプチやアイテープ、二重整形はしたことがない。一重まぶたのまま生きてきた。
一重まぶたについて、初めて意識したのはいつだろうか。小学校中学年くらいな気がする。
同級生の家に遊びに行った時に、その家の高校生のお姉ちゃんに、「あなたは目つきが悪くて怖いよ」と冗談混じりに言われたことがある。
はて、目つき?
鏡を見てみると、確かに、くっきり二重や奥二重の友人たちと比べて、私の目は目つきが悪く見える気がする。
それは、一重まぶたゆえに、黒目が隠れやすいからだろう。
次に一重について意識したのは、おしゃれに興味を持って、姉が持っていた雑誌『ピチレモン』や『ニコラ』を読んだ小学校高学年の時。
ティーン誌のメイクのページには、「まず二重幅にアイシャドウを塗る」と書いてあった。
二重幅とは?
一重には二重幅はない。
当然、一重の場合はメイクをどうすべきかなんて、「二重が正義」だった2000年代の雑誌には書いてない。
パソコンで検索してみると、女子中高生向けの掲示板『ふみコミュ』には、
「一重から二重にするマッサージ方法」や「モテないから二重になりたい」という少女たちの努力と嘆きが溢れており、
一重まぶたがどう生きるべきかは、結局よくわからなかった。
時は流れて、高校生。
私は「絶対に一重まぶたを貫いて生きていく」と決めた。
なぜか。
当時すでに、アイプチやアイテープを繰り返してまぶたが伸びるよりも、手っ取り早く二重整形をするのが当たり前の時代になっていた。
ネットでは、「一重まぶたの女性とは付き合いたくない」というアンケートや街頭インタビューが氾濫していた。
そこで、容易に二重にできる時代だからこそ、私は、その流れに抵抗して、一重まぶたを維持して絶対に生きてやる、と誓った。
思春期特有の全能感に溢れた私は、「一重だからモテない」としたら、「その世界がおかしい」と思っていた。
そこからさらに10年が過ぎた。
TikTokでは、一重まぶたの可愛い子たちが、一重用のメイクを解説した動画がたくさんある。一重まぶたのアイドルや芸能人も増えた。
そういえば、29年生きてきて、一重まぶただからといって特段困ったことはない。
蒙古襞があるので、目頭のまつ毛が眼球に刺さりやすく、チクチクすることくらいだろうか。(ちゃんと眼科に行ったけれど、そこまで酷くはないので治療は不要らしい)
今まで、付き合った男性に、「私一重だからさあ」と軽く話を振ったら、「え?! 一重なの?!」と驚かれることも何度かあった。
男性って、女が思うよりもずっと、人の顔の細部を認識していないんだなあ。
(いや、そういう細部に無頓着な人が、私のことを好きになりやすいのだろうか?)
ともかくも、よくよく考えてみると、会社の同僚やクラスメイトが一重だったか奥二重だったか二重だったかなんて、なかなか頭に残っていないものだ。よほどお人形のようなパッチリお目目ならまだしも。
高校生のときは、「一重を背負って生きていくぞ」なんて意気込んでいたけれど、アラサーになると、そんなこと自体、どうでもよくなってしまった。ある種自分のアイデンティティでもあった一重が、なんのこともない些細なものでしかなくなっていた。
時代とともに価値観も変わるし、自分自身も変わる。今の私の悩みも、きっと10年経てば、くだらない、思い出せないようなことになっている気がする。
変わりゆく世界と自分のなかで、私はこのまま、一重まぶたで生きていく。
(終わり)
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