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進捗報告をぶっ壊す(4)

ITプロジェクトにおけるいわゆる進捗報告について連載している。
わたしが提唱している「リアルタイム納品」「成果管理への移行」とは異なるアプローチで進捗管理を工夫しようという動きはあることを紹介しておく。ただし、わたしは懐疑的である。


今日、進捗管理手法の高度化のアプローチとして有効とされているもののひとつに、
タスクの定量化がある。

  • タスクは定義できる

  • 定義したタスクは数えられる

  • 個別のタスクの作業量は作業前に見積もれる

  • 残タスクが減っていれば進捗している

理論的にはこのように考えられているので、タスクを定義し、測定し、残タスクの状況を可視化するのがよいとされてきた。
その考え方は、例えば次のようなバーンダウンチャートで表現されてきた。

Copilotさんが書いたチャートのイメージ

バーンダウンチャートでは、タスクが減っていく姿が見られるので、進捗が順調であればカウントダウンをしているような感覚になって気持ちがいい。

しかし、適用技術が複雑化、高度化し、新たなチャレンジも増えている中では、進捗を管理しているだけの者にとって、現在の計画と実際が乖離していることに気づくことはあっても、それをどういう風にタスクに表現したらいいかわからない。
そして、小規模な仲間うちで行っているプロジェクトを除くと、様々な場所で様々な人が行っているタスクをもれなく把握するのも難しい。
そして、課題があればタスクは増えるのである。

現実世界ではタスクが増えていても「タスクが増えています」と報告するとプロジェクトが後退しているような印象を与えてしまう。すると増えたタスクを簿外管理しようとする者が現れ、管理者に届くデータとの乖離が発生する。
定量化すればすべて解決すると考えるのは悪いコンサルタントである。

EVMについても触れておく必要がある。ITプロジェクトを始めると人件費が発生する。単にかけた時間に応じて報酬を払うのではなく、働きに見合った価値を創出したかを見極めたいと考えた人がいて、定量的に管理していこうという手法がEarned Value Management、略してEVMである。
進捗・スケジュール・コストを一体的に管理できることに加え、数字で表現するから「だいたい順調です」「概ね予定通りです」といった感覚的な報告よりも先進的なイメージがある。
日本のIT業界では電気や水道のように発生したコストだけクライアントに報酬を事後請求する契約ではないにもかかわらず、なぜクライアントに定期的にコストを報告しなければならないのか。最初にこの学問を聞いたときから理解できなかった。
EVMを批判しているのではないので誤解しないでほしい。日本においてEVMを「クライアントへの進捗報告に使う」という発想に納得できないのだ。

EVMでは単なる進捗状況だけではなく、測定対象が増える。

  • 出来高 (Earned Value; EV)

  • 実コスト (Actual Cost; AC)

  • 計画コスト (Planned Value; PV)

プロジェクトルームの社内ネットワークに何か装置をつけておけばこれらは自動計測されるのか。実際には報告の元データは担当者の言い値である。数字の計上基準はマネージャーから提示があるかもしれないが、その通りに計測している保証はない。
100%終わったかどうかは、成果物を見れば比較的確認しやすい。あるかないかでしかないからだ。内容が伴っているか疑うのであれば、レビュー完了記録があるかないかでもよい。

しかし「着手しました」にごまかしがあったらどうやって見抜けるのか。そこで、着手時点での計上を認めないマネージャーがいるが、EVの立ち上がりが遅いのに気づいて後から慌てることになる。
あるタスクに課題が残っているとき、前述のバーンダウンチャートで説明した通り新たなタスクを定義することを現場は回避しようとする。かといって完了と報告するのも憚られる。そこで実際に見かけたのは90%の多用である。これも90%、あれも90%。概ね90%で推移しています。

つまり、どれも中途半端ということか?

クライアントから質問が来た

これらの扱いにくい数字をさらに計算式に突っ込んでいく。CPI (Cost Performance Index) = EV/AC、SPI (Schedule Performance Index) = EV/PV といった指標から、予測完了コスト (Estimate at Completion, EAC) や予測完了日 (Estimate to Complete, ETC) を算出。

理解できただろうか。
解説するつもりはない。理解していただく自信がないからだ。

マネージャーからはCPIがどうのこうの、SPIがどうのこうのと淡々と報告がある。
クライアントの担当者がたとえIT研修に出席して理論を学んだところで、このプロジェクトのCPIやSPIがどうやって導出された値なのかを理解するには無理がある。

バーンダウンチャートに、EVM。タスクの定量化の正体は極めて怪しい。
ちゃんと進捗管理作業をしていることをアピールする程度の効果しかなく、定量化された数字の確からしさは検証されない。

内製化できずに丸投げしたんだから、こっちに任せておけばいいんだよ

小難しい進捗報告からは、そんな本音が伝わってくる。


定性的な「概ね順調です」「遅れています」よりも、「実績値は0.96です」「残タスクは3です」の方が正確なような気分にはなるかもしれない。
しかし、進捗という事象の測定が自己申告かつ主観で行われることには変わらず、さらには管理手法を高度化するほど測定点が増えるので、ますます感覚的になる。

進捗報告の儀式に毎週参加していても事件は起こる。

  • 大規模な手戻り

  • 大規模な遅延の発覚

  • スケジュールの大幅な変更

加工された報告ではなく、実物に直接触れ、レビューにも参加し、成果に関心を持っていないと炎上は回避できない。

連載はここまでにします。

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