【第8週】売って、住んで、また買って──週5時間FP1級挑戦記 #009
一つひとつの控除は、読めば理解できる。でも本番で問われるのは、複数の特例が「組み合わさったとき」と「いつ使うか」で結論がどう変わるか、だ。
今週のテーマ:所得税の控除・税額・譲渡
第8週は所得税の後半戦。所得控除(配偶者・扶養・基礎)、税額計算(速算表・住宅ローン控除・復興特別所得税)、そして土地建物の譲渡(3,000万円特別控除・軽減税率・買換え特例)。あわせて金融分野の計算(PER・PBR・配当利回り・債券の利回り)にも入った。
範囲は広い。でも相続税の計算であれだけ鍛えられたおかげか、一つひとつの計算そのものは、それほど苦ではなかった。
苦戦したのは「組み合わせ」だった。
売った家に、住宅ローン控除があったら?
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない。これは資料に書いてあった。でも読んでいるうちに、素朴な疑問が湧いた。
「住宅ローン控除を受けている自宅を売って、3,000万円控除を使ったら、これまで受けてきたローン控除はどうなるんだ?」
Claudeに聞くと、答えは「タイミング次第」だった。入居からまだ日が浅いうち(後3年の窓の中)に売って3,000万円控除を使うと、過去に受けたローン控除が遡って取り消される。でも何年か住んでから売れば、過去のローン控除はそのまま、売却益も3,000万円控除で非課税。両取りできる。
面白くなって、さらに食い下がった。
「じゃあ、売ったあと3年くらい賃貸に住んで、また家を買ったら、住宅ローン控除はもう一度受けられる?」
受けられる、と。3,000万円控除を使ってから2年を超えて空ければ、新居のローン控除を邪魔する「前2年」の窓を外れる。だから賃貸を3年はさめば、ローン控除は復活する。
一つの質問が、次の質問を呼ぶ。「売る」「住む」「また買う」──その順番とタイミングを少しずらすだけで、税金の結論がころころ変わる。単品で覚えたはずの知識が、時間軸の上で組み合わさっていく。この感覚が、今週いちばん面白かったところだ。
資料から抜けていた「退職所得」
今週は一つ、資料の穴を見つけた。
所得には10種類ある。給与、不動産、事業……と整理していて、ふと気づいた。退職所得の計算方法が、まとめ資料のどこにも載っていない。
退職金は多くの人がいずれ受け取るもので、しかも「控除が手厚く・2分の1課税」という大きな優遇がある重要論点だ。それなのに、給与も事業も譲渡も扱っている資料の中で、退職所得だけがぽっかり抜けていた。
Claudeに伝えると「説明が抜けていました」と認め、第8週の資料に退職所得のセクションを追記してくれた。勤続年数で控除額が変わること(20年を境に40万円と70万円)、退職金から控除を引いて2分の1すること、勤続5年以下だと2分の1が制限される例外があること。
1週間に5時間の勉強で合格を目指しているため、重要論点のみに絞って資料は作ってもらっている。退職所得は重要度が低いと判断したのかもしれない。ただ、退職所得は重要だと判断したため、資料に追記を依頼した。
脱線:「103万円の壁」は、もうない
いわゆる「103万円の壁」が、令和7年の改正で「123万円の壁」に変わっていた。給与所得控除の最低保障が55万円から65万円に上がり、扶養に入れる所得の要件も引き上げられたからだ。配偶者特別控除のように、所得が増えるとなだらかに控除が減っていく仕組みも合わせて整理した。
怖いのは、古い過去問や古いテキストの数字をそのまま覚えてしまうことだ。Claudeは改正後の数字で資料を作ってくれていたが、世の中に出回っている情報の多くは、まだ改正前のままだったりする。
「この数字、最新か?」と一度は疑う癖が要る。AIに作ってもらうにせよ、最後に確かめるのは自分だ。
今週の感想
税金は、一つの制度を単体で覚えるだけでは足りない。「どれと組み合わせるか」「いつ使うか」で、答えが変わる。3,000万円控除と住宅ローン控除のように、別々なら理解できても、時間軸の上に並べた瞬間に難しくなる論点がある。
裏を返せば、そこを理解できると、試験でも実生活でも一段強くなれる気がする。問いを重ねるほど、バラバラだった知識が線でつながっていく。今週はそういう手応えのある一週間だった。
来週の予定
第9週からはPhase2、理論型に入る。まずは相続分野に戻って「法定相続人と相続分」。代襲相続や、養子の数え方(民法と相続税法で扱いが違う)など、計算というより民法のルールの世界だ。
計算でリズムをつかんだ今、理論でどこまで踏ん張れるか。また来週。
