終末期酸素療法の適応を考える - 症状緩和と予後への影響
こんにちは、ドクターサポートの原田です。
毎週開催している「15分で終わる医師カンファ」では、現場での悩みをテーマに、やまと内の複数の診療所の医師が様々な視点から解決策を考えています。今回は「終末期酸素療法の適応」について話し合いました。
Take Home Message
終末期酸素療法は予後延長よりも症状緩和と家族の不安軽減が主目的
患者の苦痛の有無と家族の心理的負担を総合的に評価して導入を検討
低用量酸素でも視覚的・心理的効果により安心感が高まる
カンファでの意見交換
医師A(話題提供者):「終末期の酸素療法と生存期間の関係について伺いたいと思います。ご家族や医療者が予後改善を期待して酸素療法を勧める場面は多いですが、一方で終末期患者における酸素療法の効果は確立されておらず、生存期間との関連は乏しいとされています。先生方がどのように考えているのか、また酸素療法で状態が改善した経験があれば教えていただきたいです」
医師B:「明確なデータは持ち合わせていませんが、基礎疾患が少ない老衰や呼吸器以外の悪性疾患では、在宅酸素なしでそのまま亡くなる方も多い印象です。ただし老衰に至る経緯で誤嚥性肺炎や心不全の増悪を伴うことが多く、その際に酸素投与が導入され、1L程度の低流量のまま最期を迎えるケースがよくあります。
低用量酸素が予後にどの程度寄与しているかは不明ですが、顔色が良く見えるなど家族の安心感につながるため、侵襲が少ないこともあり有用だと感じます」
医師C:「酸素投与と予後との関係はあまり意識していませんでした。私が投与する主な目的は本人の呼吸困難の緩和と、家族の安心です。苦しそうに見える状況をそのままにするのは難しく、対応手段の一つとして提案することが多いです」
医師D:「予後改善との関連は乏しいと思います。使用するのはサチュレーション低下で家族や訪問看護師が不安を感じる時です。実際には煩わしくて外してしまう患者さんも多く、本人が苦痛でなければ使用しません。どうしても嫌がる方には枕元に置いて間接的に吸ってもらうこともあります」
医師E:「主体はあくまで苦痛緩和です。病院のように厳格にパルスオキシメーターで管理するのではなく、患者本人の反応や家族の受け止め方を相談しながら進めています」
医師F:「酸素は対症療法であり予後とは関係しないと思います。サチュレーションや呼吸困難の有無で判断します。家族や看護師が『何もしていない』と感じて後悔を残さないように、一定の役割はあると考えています」
医師G:「予後を延ばす目的で導入することはありません。患者が苦しそう、家族が何かしてあげたいと望むときに使う印象です。呼吸器内科の先生はナルコーシスを懸念して酸素増量を控える傾向がありますが、私は苦しければ多少ナルコーシスになっても構わないと考えています」
医師H:「酸素導入の是非は状況や使用している薬剤によります。予後との関連で考えることはあまりありませんでした。本人に苦痛があるかどうかを重視し、長期使用で褥瘡などのリスクも説明した上で検討します。酸素投与ありきではなく、他の方法と比較しながら適応を考えています」
医師I:「私も緩和的目的で酸素を使用することがあります。急に呼吸状態が悪化し、家族や多職種の不安が高まる場面では迷わず導入します。サチュレーションの数値以上に、表情が和らぎ楽になったように見えることもあります。普段の状態と比べて苦しそうであれば、薄く酸素を流す、あるいは扇風機で送風するなど工夫してきました」
医師A(まとめ):「先生方のお話から、酸素療法は延命よりも緩和目的での意義が大きいと理解できました。今後も患者と家族の安心につながる使い方を意識していきたいと思います」
おわりに
議論を通じて確認された重要な点は次のとおりです。
終末期酸素療法は予後延長ではなく症状緩和が主目的
家族や医療スタッフの心理的不安軽減にも有用
患者の苦痛や不快感と酸素療法の利益を比較し、慎重に判断する
終末期酸素療法は、エビデンスに基づいた生命予後改善よりも、患者の安楽と家族の心理的支えという観点から捉えることが重要であると再確認されました。
本日の議論が医療・介護現場の一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした。
