10人中10人に止められた、株式三等分で3人起業の話。
前回、「安定を因数分解したら、公務員を辞めていた。」という記事を書きました。その最後に「3人で株をほぼ三等分して起業した。10人中10人に止められた」とさらっと書いたら色々反応をいただきまして。
「え、三等分? それ大丈夫なの?」と。
大丈夫かどうかは正直まだわかりません。1年しか経っていないので。ただ、今のところめちゃくちゃ快適にやれています。今回はその話を書きます。
スタートアップ支援の先輩たちに聞いてみた
自分は札幌市役所でスタートアップ支援の部署にいました。なので周りには、資本政策やら株主構成やらに詳しい諸先輩方がたくさんいます。VCの方、起業経験のある方、スタートアップを何十社も見てきた方。
起業を決めたとき、そういった方々に「3人で株を三等分しようと思っているんですが」と聞いてみました。
結果、全員に止められました。
10人に聞いて10人です。打率10割。逆にすごい。
理由はみんなだいたい一緒でした。
「もめた時に何も進まなくなるから」
33.3%ずつ持っていると、意見が割れたときに誰も過半数を持っていないので、デッドロックになる。よくある話として、創業期は仲が良くても、事業が大きくなるにつれて方向性の違いが出てきて、そのときに身動きが取れなくなる。だから代表が過半数以上を持つのがセオリーだ、と。
理屈としては完全に正しいと思いますし、スタートアップ支援をやっていた自分自身、他の起業家に対してもたぶん同じことを言っていたと思います。
それでも三等分にした理由
全員に止められて、それでもやったわけですから、よほどの確信があったのかというと、そういうわけでもないです。
正直に言うと、3人でもめている絵が、どうしても浮かばなかったんです。
たぶん、どのスタートアップも最初はそう思うんだと思います。「うちは大丈夫」と。なので自分たちだけが特別だとは思っていません。
ただ、ひとつ普通のスタートアップと違うことがあるとすれば、自分たちは全員が元公務員だということです。
利益を最大化してFIREしようとか、上場を目指してエクイティで一発当てようとか、そういう野心的な起業ではないんです。極端な話、
「公務員のときと同じ水準で暮らせて、自分と周りの人がもっと幸せにやっていけたら、それでいいじゃん」
というスタンスです。
公務員では得られなかった自己実現とか、自分の人生を自分でコントロールしている感覚とか、そういうものが欲しくて起業しています。億万長者になりたくて集まったわけではないので、お金をめぐってもめる絵がそもそも描きにくい。(多少、いやたくさんお金が増えたらハッピーのは事実でして、それはしっかり狙いにはいってます 笑)
それと、3人はもともと札幌市役所の中で一緒に働いていた仲間です。ビジネスチャンスを見つけて「じゃあ会社つくろう」と集まったのではなく、同じ志を持っていた人間たちが「これ、一緒にやったほうがおもしろくない?」と自然に合流した形です。
相手がどういう人間かは、何年もかけて知っています。仕事のスタイルも、大事にしていることも、譲れないポイントも。そのうえで「この3人なら対等でやれる」と思えたので、三等分にしました。
半年やってみてのリアル
起業して約半年。三等分のデメリットとメリット、正直に書きます。
デメリット:あるにはある
まず、1人に比べて3倍稼がなければならないこと。当たり前ですが、3人分の生活を支える売上が必要です。ひとり社長なら自分ひとり食べていければいいですが、うちは最初から3人。全員家族を持っている3人。上手くいかないときに自分だけが泥水すすって暮らせばいいやが成り立つ状況ではありません。
あと、重要な意思決定のスピードは落ちます。ひとり社長なら「やる」と決めた瞬間に動けますが、大きな話は当然3人で話し合います。とはいえ、日常的な業務判断(というか結構な意思決定まで)はそれぞれの裁量でやっているので、毎回3人で会議しているわけではないです。
正直、デメリットはこのくらいです。思っていたより少ないというのが半年経った実感です。
メリット:数え切れない
一方、メリットは書き出すとキリがないです。
一番大きいのは、話し合える仲間がいること。
これ、起業する前は正直そこまで重要だと思っていませんでした。でも実際に起業してみると、初めての経験ばかりで意思決定の連続が降ってくるんです。しかも共感してくれる人がいない。公務員時代も基本自分ひとりでどこまででも突き進んでやる!というスタンスで仕事していましたが、要所要所で上司がいて、同僚がいて、「これでいいかな」と確認もして安心を得ていたんだろうなと思います。ひとり社長だとそれができない。
うちは3人いるので、「これどう思う?」「いいんじゃない、やってみようよ」というやり取りが日常的にあります。これが精神的にどれだけ助かっているか、たぶん当事者にしかわからないと思います。
次に、3人分のチャンネルがあること。
人脈も3倍、仕事の入り口も3倍、受け入れられる案件の幅も3倍です。誰かの仕事が一時的に途切れても、他の2人が持ってくる。リスクヘッジとして、これはかなり大きいです。起業したての会社にとって「仕事がない期間」は致命的ですから。
それから、三者三様のスキルセット。
経理や管理が得意な人、営業が得意な人、人前に立ったり企画を動かすのが得意な人。得意な人が得意なことをやる。苦手なことを無理にやらなくていい。この分業が最初から成立しているのは、3人起業ならではだと思います。
そしてこれは意外だったんですが、最初から「組織」として動いている感覚があること。公務員から起業すると、「組織で働く」から「ひとりで全部やる」へのギャップに苦しむ人が多いと聞きます。うちは最初から3人なので、そのギャップがかなり薄まっています。会議もあるし、役割分担もあるし、報告もある。組織の良い部分を残したまま、自分たちの裁量で動ける。これはなかなかいいバランスです。
そして何より、経営方針で3人がもめたことが、まだ一度もありません。
細かい意見の違いはもちろんあります。でも「方向性が合わない」「あいつとはやっていけない」みたいな話は、本当にゼロです。これは結果論ではなく、もともとの価値観が近い人間で組んでいるからだと思っています。
「もめた時に大変」への備え
とはいえ、「今もめていない」と「今後もめない」は別の話です。それはわかっています。
なので、創業時に株主間契約を結んでいます。
内容をざっくり言うと、誰かが辞める場合は設立当初の株価で株を売却すること、辞めた後に競合になるような仕事はしないこと、などを取り交わしています。
つまり、「もめた時に何も進まなくなる」という最悪のシナリオに対して、契約ベースでの安全装置は入れてあります。もめないことを前提にはしていますが、もめた時のルールは決めてある。この両方があるから、今のところ安心してやれています。
数年後の自分たちへ
1年でこれだけ自信を持って「うまくいっています」と言い切るのは、さすがにちょっと早い気もします。3年後、5年後に読み返して「あのときは若かったな」と笑っているかもしれないし、「やっぱり正しかったな」と思っているかもしれない。
どっちでもいいです。その備忘録として、今のリアルな気持ちを残しておきます。
最後に
公務員からの起業って、不安だらけだと思います。自分もそうでした。
株式の持ち方、共同創業のリアル、家族の説得、退職のタイミング。聞きたいことがあれば何でも赤裸々にお答えします。きれいごとじゃなくて、実際どうだったかを。
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