失敗は、やさしい居場所になる

「もう、
 
 ここには住めない」
 
 
エレベーターのボタンが、
 
涙でぼやけて見えなかった。
 
 
 
私の友人が、
 
そんな状態になったのは、
 
マンションの
自治会でのことでした。
 
 
 
50代になって初めて、
 
自治会の役員を
引き受けたんです。
 
 
 
最初は
 
 
「みんなの
 役に立てたらいい」
 
 
ぐらいの軽い気持ち
だったんです。
 
 
 
 
そんな彼女なんですが、
 
役員になってからの
最初の仕事は、
 
春の防災訓練の
準備だったそうです。
 
 
 
前任者から引き継ぎ
資料をもらって、
 
 
「これなら大丈夫」
 
 
と思っていたんです。
 
 
 
訓練当日は、
 
消防署の人が来て、
 
消火器の使い方を
教えてもらう
予定だったんですが、
 
訓練は
今日だというのに、
 
あろうことか、なんと
 
消防署には来週と
伝えてしまっていて、
 
 
「やばっっ
 やらかした!!」
 
 
と冷や汗たらたらで、
 
それからはもう
バタバタで、
 
慌てて消防署に
電話したものの、
 
 
「今日は別の予定が
 入っていてダメですね」
 
 
とあっさり断られて
しまったんです。
 
 
 
 
そして、
開始時間になると、
 
訓練には50人以上の住民が
集まっていました。
 
 
 
彼女は震える声で
 
 
「申し訳ございません」
 
 
「私の手違いで、
 
 消防署の方が
 来られなくなりました」
 
 
と謝ったんですが、
 
その瞬間、
 
会場がざわつきました。
 
 
 
「えっ、どういうこと」
 
 
「せっかく来たのに」
 
 
「ふざけんなよぉ」
 
 
という声があちこちから
聞こえてきました。
 
 
 
 
彼女はもう
頭が真っ白になって、
 
何度も何度もひたすら
頭を下げ続け
 
 
「本当に
 申し訳ございません」
 
 
と繰り返すしか
ありませんでした。
 
 
 
結局、
 
訓練は中止になり、
 
住民たちは不満そうに
文句を言いながら
帰っていきました。
 
 
 
 
その日から、
 
彼女の日常が
変わったんです。
 
 
 
マンションの
エントランスで住民と
すれ違うたびに、
 
 
「やらかした人」
 
 
と思われている
気がして、
 
エレベーターで
一緒になると、
 
気まずい空気が
流れているように
感じたんです。
 
 
 
挨拶をしても、
 
なんとなく冷たい
返事しか返ってこない
気がしました。
 
 
 
 
そして、
 
 
「もう、
 ここには住めない」
 
 
と彼女は本気で思い、
 
引っ越しを考え、
 
それからは不動産サイトを
見る日々が続きました。
 
 
 
 
 
 
 
現代社会では、
 
 
「失敗は隠すもの」
 
 
「完璧に
 見せなければならない」
 
 
みたいな空気がなんだか
強すぎますよね。
 
 
 
一度失敗してしまうと、
 
 
「もう信頼されない」
 
 
「居場所がなくなる」
 
 
と思い込んで
しまいがちですよね。
 
 
 
 
彼女も、
 
会社ではデキる人と
思われているので、
 
失敗したことを
隠したかったんでしょう。
 
 
 
「誰にも会いたくない」
 
 
「顔を合わせたくない」
 
 
と思っていたそうです。
 
 
 
完璧な自分であろうと
するほど、
 
失敗は
 
 
「隠すべき傷跡」
 
 
に変わってしまい、
  
彼女のプライドも
ポッキリ折れて
しまったんでしょう。
 
 
 
 
そんな悶々とした日々を
送るなかで、
 
次の自治会の会議があって、
 
状況が変わったんです。
 
 
 
 
会議の冒頭で、
 
彼女はもう一度
謝罪しようと、
 
 
「先日は、
 私の不手際で・・・」
 
 
と言いかけたとき、
 
別の役員が
 
 
「実は私も、
 
 去年やらかしたことが
 あるんですよ」
 
 
と言ったんです。
 
 
 
 
「回覧板を、
 1ヶ月回し忘れてて」
 
 
「みんなに怒られましたよ」
 
 
笑いながら
話してくれたんです。
 
 
 
すると、他の役員も
 
 
「私もゴミ捨て場の
 掃除当番、
 
 忘れたことある」
 
 
「私は駐輪場の鍵、
 失くしちゃって」
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
と、次々に失敗談を
話し始めたんです。
 
 
 
 
彼女はみんなも
同じように失敗していて
あっけに取られました。
 
 
 
そして、そんなことを
笑い話に変えてくれる
みんなに救われた
気がしたんです。
 
 
 
 
会議の最後に、
 
年配の役員が
 
 
「失敗しない人なんて
 いないんだから、
 
 次は気をつければ
 いいのよ」
 
 
と優しく言ってくれ、
 
その一言を耳にして、
 
彼女の目には涙が
溢れてきたそうです。
 
 
 
 
その日から、
 
彼女は
変わったそうです。
 
 
 
エレベーターで
住民と会っても、
 
怖くなくなり、
 
逆に、
 
 
「この前は本当に
 すみませんでした」
 
 
と自分から声を
かけられるように
なったんです。
 
 
 
すると、住民たちも
 
 
「大丈夫よ、気にしないで」
 
 
と笑顔で
返してくれたんです。
 
 
 
 
「失敗を認めることで、
 人はつながるんだ」
 
 
と彼女はそのとき、
わかったんです。
 
 
 
 
 
 
 
失敗って、実は人を
つなげてくれるんです。
 
 
 
 
失敗を隠さず、
 
素直に認めることで、
 
コミュニティは
温かくなるんです。
 
 
 
だから完璧を演じる
必要なんてないんです。
 
 
 
失敗を笑い合える
関係こそが、
 
本当のつながり
生むんです。
 
 
 
 
彼女は、
 
 
「失敗を許し合う文化」
 
 
の大切さに
気づいたんです。
 
 
 
決して一人で
抱え込むことなく、
 
正直に失敗を
認めることが、
 
周囲との信頼を
深めるんですねぇ。
 
 
 
 
 
 
 
失敗を許し合う
文化って、
 
実は決して新しいもの
ではないんです。
 
 
 
日本人は古くから、
 
そんな精神を
持ち続けてきたんです。
 
 
 
 
たとえば、
 
平安時代の貴族社会では、
失敗や失態を
 
 
「をかし(面白い)」
 
 
として受け止め、
 
笑い話として語り合う文化が
あったと言われているんです。
 
 
 
清少納言の「枕草子」にも、
 
宮中での失敗談が
楽しげに描かれて
いるんです。
 
 
 
誰かが儀式で失敗しても、
 
それを責めるのではなく、
 
 
「ああ、
 あれは面白かった」
 
 
と笑い合って
いたんでしょう。
 
 
 
失敗を
素直に認めることで、
 
人間関係が深まって
いったんでしょうねぇ。
 
 
 
 
室町時代には、
 
「連歌」という文化が
流行しました。
 
 
 
これは、複数の人で
順番に短い詩を詠み合い、
 
一つの長い詩を
作っていくという
遊びなんです。
 
 
 
貴族から武士、庶民まで、
 
みんなで集まって
楽しんでいたんです。
 
 
 
この連歌の会では、
 
たとえ思うように
詠めなかった句でも、
 
 
「味がある」
 
 
と受け止められることが多く、
 
失敗そのものを楽しむ空気が
あったと言われているんです。 
 
 
 
完璧な句なんかよりも、
 
失敗から生まれる
面白さのほうが
逆に良かったんでしょう。
 
 
 
参加者が
 
 
「しまった、
 
 変な句を詠んでしまった」
 
 
と思ったとしても、
 
他の人たちは
 
 
「いや、それが良い」
 
 
と笑って
受け入れたんです。
 
 
 
失敗を許す文化が、
 
文化そのものを
豊かにしていったん
でしょうねぇ。
 
 
 
 
明治時代には、
 
福沢諭吉が
『学問のすゝめ』の中で
 
 
「失敗しても、
 
 そこから宝物を
 拾い上げれば
 いいんだよ」
 
 
と、優しく背中を
押してくれているんです。 
 
 
失敗は学びの
機会であり、
 
恥なんかではないと
教えてくれたんです。
 
 
 
「人は失敗から
 学ぶんだから、
 
 失敗を隠すのではなく、
 
 堂々と認めて
 次に進むべきだ」
 
 
という考え方が、
 
日本の近代化を
支えたんでしょうねぇ。
 
 
 
 
時代が変わっても、
 
日本人は
 
 
「失敗を許し合う
 
 
ことで、社会を
温かくしてきたん
でしょうねぇ。
 
 
 
 
 
 
 
それでは、
今日の最後のワークは、
 
 
「私の失敗談リスト」
 
 
を作ってみてください。
 
 
 
何かの裏紙でも、
 
ノートでも、
 
スマホのメモ帳でも、
 
何でもいいので、
 
 
「私の失敗談リスト」
 
 
と書いてみてください。
 
 
 
そして、
あなたが過去に
やってしまった失敗を、
 
3つ書き出して
みてください。
 
 
出せる人はもちろん
3つ以上書いても
いいですよ。
 
 
 
大きな失敗でも、
 
小さな失敗でも
 
構いません。
 
 
 
仕事のことでも、
 
プライベートなことでも
 
何でもいいですよ。
 
 
 
 
例えば、こんな感じです。
 
 
【私の失敗談リスト】
 
⚪︎ 大事な会議で資料を忘れた
⚪︎ エアコンを付けっ放しで寝て、風邪をひいてしまった
⚪︎ 料理を焦がして、煙探知機を鳴らした
 
 
 
 
実際に書いてみると、
 
 
「あ〜あっ、いろいろ
 
 やらかしてきたなぁ」
 
 
と思い出すはずです。
 
 
 
3つじゃ収まらない人も
多いですよね。
 
 
 
そして、
そのリストを見ながら、
 
 
「これ、誰かに
 話してみようかな」
 
 
と思える失敗を
1つ選んでください。
 
 
 
そして、明日、
誰かと話すときに、
 
 
「実は私、こんな
 失敗したことあるんだ」
 
 
笑い話に
してみてください。
 
 
 
きっと、
それを話した相手も
 
 
「私も!」
 
 
と失敗談を
話してくれるはずです。
 
 
 
 
ただ、このワークは
 
 
「失敗を自慢する」
 
 
ためのものではないことを
注意してください。
 
 
 
あくまで
 
 
「失敗を素直に
 認めることで、
 
 人とつながる」
 
 
ためのワークです。
 
 
 
無理に全部を話す
必要はないので、
 
話しやすいものから
試してみてくださいね。
 
 
 
私の友人が失敗を
素直に認めたことで、
 
コミュニティが
温かくなったように、
 
あなたも失敗を
素直に認めることで、
 
周囲とのつながりが
深まるはずですよ。
 
 
 
 
誰しも完璧な人なんて
この世にはいないので、
 
完璧なんて
演じる必要はないんです。
 
 
 
失敗を笑い合える関係を、
 
あなたも作れますよ。
 
 
 
 
 
 
 
今日も最後まで
お読みいただき、
 
ありがとうございます。
 
 
それではまた!

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