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そこにおりんがあるから

祖母の一周忌にそれは起こった。

法要が粛々と進むなか、後半の
折り返し地点である焼香タイム。

先陣を切った伯父は堂々と前に進み
お坊さん、家族に一礼をする。

焼香台で合掌、そして
抹香をつま…


チーン!


えっ…
今、おりん…鳴らした…?


いやいや。
伯父とは何度も法事を共にしてきたが、
焼香時におりんが鳴った記憶はない。

そもそも作法として鳴らすものだろうか?
えーとえーと…記憶をリロードする。

伯父が涼やかな顔で戻ってくる。

入れ替わりで義理の伯母が
焼香台に向かう。

一礼‥焼香台…

チーン!

そこから怒涛のおりんラッシュが始まった。


次の伯母。チーン!
伯母その2。チーン!
母。チーン!チィイーン!!


…もはや、おりんフェスである。


母の次は私だ。スマホ検索する時間は
残されていない。

どうする?
周りに合わせてチーンする?

いや。
私がこの流れを絶ち切らねば。

作法には無い、絶対に無い。
自信を持て私!

一礼…焼香台…遺影に一礼、
抹香を三度おしいただく。
合掌…

スマートだ。
これぞ、ザ・焼香だ。

さあ、姉よ!
安心して焼香するのだ!

姉が楚々と歩いて行くのを見守る。
焼香台に向かい、抹香をつま… まずに

チィィイーン!

鳴らすんかーい!!

結局、私以外の全員がおりんを
鳴らしたのであった。


会食時、伯父に聞く。

「ねえ、お兄ちゃん。なんでお焼香の時、
おりん鳴らしたの?」

「えぇ? だって置いてあったから」

そこに山があるから、みたいに言うな。

「え、だって今までの法事で
鳴らしたことなかったじゃん。」

「えぇ?そうだっけー?ハハハ…」

そこに伯母達が話に割り込む。

「そうよそうよ、あんたが鳴らすから
私も鳴らしちゃったわよ~」
「適当ねえ~」
「あんたは昔から‥…」
「‥…‥…」
「‥…」

…まあ、気持ちがあれば作法なんて
なんだっていいか。

家族がワイワイと話す様子を眺めながら、
あの世の祖母に話し掛ける。


ねぇ、おばあちゃん。
賑やかな法事で良かったね。
楽しかったね。


ー 翌年の三回忌


チィィイーン!!


私は静かに肩を震わせた。




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