【秋葉原アンダーグラウンド】第6章 13話
「なんだお前は?」
カイが渾身の力を込めて振り下ろした剣はロンには届かず、若い男の文字通り手によって止められた。
「オレ?スサノオって言うんだけど?」
「そうじゃない。なんでオレの剣を止められたんだと聞いている。」
中学生くらいの男は片手で大剣を支えている。次の瞬間その手が巨大化し引き離され、ロンやスサノオとの距離が空く。実はカイ自身は能力を発現させることができない能力者だった。しかし、能力の込められた武具を扱うことができる耐性を持って蘇った唯一の被験者でもあった。実際には火や水などの能力は武具に込めることはできてはいない。作られたのはワンの研究による対能力者用の能力を打ち消す剣「滅魔」だった。これによりカイは1級の中でも特別な強さを手に入れた。スサノオは明らかに能力を思わせる力を使っている。だが、そうであればカイの剣を受け止めることは不可能だ。これは一体何を意味するのか・・・釈然としないカイにロンが話しかける。
「理解できないという顔をしているな。無理もない。スサノオの力はサラから作られたものではないということだ。」
「どういうことだ。」
カイは思わず聞き返す。能力の根源は全てサラの血清によるものと思っていた。だがそうでないとすると別のところで同じような実験が行われていたに違いない。ロンは天才だ。その気になればサラの血清など使う必要はないだろう。どのようにしてスサノオが作られたのかはもはや気にするところではない。こいつはオレやワンへの対策として用意されたものだ。カイはスサノオの手を弾き再び剣を振るう。
「おや、貴様の能力が効かないというのにまだやるというのかい?」
「何もまともにやり合う必要はないからな。」
またしてもカイの攻撃はスサノオの巨大化した手によって止められる。しかし、戦闘経験で言えばカイのほうが一枚上手だ。一度剣に込めていた力を抜き、脱力するとともに地面すれすれを駆け、スサノオの背後に回り込む。そのままロンに攻撃を仕掛けるつもりだ。
「行かせないよ。」
そう言うとスサノオはすり抜けられた手を地面に叩きつけ、地中で指を伸ばし、カイの目の前に出現させ壁を作った。
「邪魔だ。」
カイは鬼のような形相でスサノオが作った指の壁を断ち切り、ロン目掛けて大剣を振るう。ロンは微動だにせず額からその攻撃を受けたが、ロンに傷を負わせることはできなかった。
「オレの体は常に水の膜で覆ってある。切れないということはオレの力が貴様より優っているという訳だな。」
「ふん。」
「そんな顔をするな。実力差はあるが私はお前をかっている。そこでどうだ?共にこの日本を立て直さないか?おかしいと思わないか。今や経済大国と言われる日本だが、いつまでアメリカの下につき、いつまで北朝鮮からのミサイルに怯えなければならない?この力をもってすれば核の脅威にだって怯える必要はない。国民にとっても嬉しい話じゃないか?なぁにポストはちゃんと用意してある。」
ロンは現首相だ。権力という力も手に入れた。今恐れているのは諸外国ではなく地下世界からの報復、すなわちシンだ。オレであればシンの力を打ち消すことは容易い。だが・・・
「いらん世話だ。」
カイは一度大剣をしまったが一瞬で抜刀し、ロンの頬に傷をつけた。ロンはうめき声をあげ傷を押さえるが出血は止まらない。
「その行動、仲間になるつもりはないと捉えていいんだな?スサノオ!」
「はいはい。」
ロンが叫ぶとスサノオは両手を巨大化させカイを握り潰そうとする。カイはそれを解こうとするもなぜか力が入らない。こいつの訳の分からない力が干渉しているのか?骨が軋みカイは思わず苦痛の表情を浮かべる。
「スサノオ、がっちり掴んでおけ!国家反逆罪として今からこいつを・・・」
そう言いかけたところで、急にロンの頬が淡い緑色に光り、そしてあっという間に傷が治ってしまった。
「誰か泣いてる。」
その声はカイたちから遠く離れた病室にいたマユのものだった。
