【秋葉原アンダーグラウンド】第6章 16話
シンの提案の後、皆はサラとルリが目を覚ました場所へと急いだ。サラとルリは互いに抱き合い涙を流していた。その様子を見たリンは2人を包み込むように抱きしめた。
「サラ、ルリちゃん。おはよう。長い間お疲れさま。」
「リン・・・遅くなっちゃってごめんね。」
ううんとリンは言い、さらに強く抱きしめた。気付くとワンも涙を浮かべていた。
「さて、皆感傷に浸っている場合じゃないぞ。今にもやつらはこのアンダーグラウンドに乗り込もうとしている。」
「そうだな。だがシン、さっきお前が言ったことは容易くできるようなことではないぞ。」
「わかっている。オレに考えがある。皆協力してくれるとありがたい。」
それはこれまで以上に自分たちの能力を磨きあげるということだった。ただ強くなるのではなく、上手に扱うようにするというもの。いわば繊細さだ。対一般人は倒すことなく一撃で気を失わせ、対能力者には一般人に被害が出ないように戦うというもの。口で言うのは簡単だが、現時点でこれができるのはシンやカイ、そして今は亡きライくらいなものだろう。同じ1級でもモズやソウは重症を負っており、トガやリツはどこか粗々しさが目立つ。それは他の1級に対しても同じことだ。皆鍛錬が必要だった。
「今日は皆疲れているはずだ。本当にご苦労だった。修行は明日からにしよう。」
シンはそう言うとカイに見張りを依頼し、他の者たちを解散させた。
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公社から離れた森の中。シンは1人ライの眠る墓碑の前に佇んでいた。実際にはライは消失してしまったため中には何も残されていなかったが、イジュンの意向で建てられたのだった。
「ここにいたんですか。」
シンは振り返ると、そこにはレンが立っていた。余程シンを探し回ったのだろう。肩で息をしている。
「君か。」
「オレさっきの話聞いててずっと思ってたんですけど、修行するって嘘ですよね。」
「いや、嘘はついてないよ。皆にはこのアンダーグラウンドを守ってもらわなくちゃならないからね。」
「やっぱり、今『皆には』って。シンさん、まさか自首するつもりじゃないんですか。」
アンダーグラウンドには吹かない風が2人に流れる。シンはその風を感じながら穏やかな表情で呟いた。
「おそらく皆わかっていただろうな。わかっていて敢えて言わなかったのは止めても無駄だとわかっていたからだ。その上で聞くが、君は私を止めに来たのか?」
「もちろんです。そんなこと、サラさんやルリちゃんが悲しみます。シンさんだって辛いんじゃないですか?」
「もちろん辛いよ。でもね、私は前首相をこの手にかけているんだ。既に立派な犯罪者なのだよ。」
「それでも、行かせる訳にはいきません!」
レンは気付くと黄龍を抜き、シンに向かい構えていた。急にシンの目つきが変わった。
「力強くでも止めようというのか。やめておきなさい。今の君の力では私には敵わない。」
シンがそう言った次の瞬間、シンの頬に一筋の傷が走った。
「カマイタチみたいなものか。驚いたな、私の体には常に能力の膜を張っていて傷なんてつかないようにしていたのだけどね。それを上回るとは君の張摩の影響か。だとしたらこの辺り、いや全ての大気全体が君の必中の攻撃となるのか。」
もちろんレンに張摩など扱えない。この間ようやく能力の扱い方を覚えたばかりだ。しかし、シンを行かせる訳にはいかないという想いが風に乗り、一瞬だがシンに届いたのだった。シンは腰に携えていた剣を抜いた。
「君の全てをぶつけてみなさい。自首するかどうかはその上で決めることにするよ。」
シンが剣を構えると、辺り一面の空気が破れる気配があった。これがアンダーグラウンド最強。レンは剣を構えたまま微動だにすることができない。
「それじゃあ始めようか。」
二つの剣と剣が交わり、地下世界を揺るがすほどの風が吹き荒れた瞬間だった。
