私と洗濯機の変遷記
🧺冬の二槽式
小さいころ、洗濯機は庭にあった。
二槽式洗濯機である。洗う槽と脱水の槽が分かれていて、洗いが終わったら、濡れている洗濯物を自分で脱水槽に移して脱水する。
すすぎの後も、また同じ作業を繰り返す。なんとも手間がかかる洗濯機なのである。
でも、昔はそれが普通だった。
洗濯は私の役目であった。
冬の洗濯が、とにかく、つらかった。
びちょびちょに濡れた4人分の洗濯物を、両手で取り上げて脱水槽に移す。
2回も。それも寒空の下で。
脱水槽は意外に容量が小さい。
濡れた冷たい洗濯物を、上からぎゅーっと押さねばならない。
私の手は冬になると、しもやけで真っ赤になった。
今でも、洗濯をしている夢を見る。
夢の内容はいつも同じ。二槽式洗濯機で洗濯をしている。
なぜか洗濯機は洗面所にある。
洗っているうちに、水が溢れそうになるところで、目が覚める。
大変な尿意を覚え、トイレに駆け込む。
🧺ベランダの洗濯機
大学に入って、1Kの安いアパートで一人暮らしを始めた。
洗濯機はベランダに置く造りだった。
ある夏、でかい台風が福岡を直撃し、夜、通過していった。
私はどこでも寝られる特技があり、
その日も、嵐の音などなんのその、すうすう寝ていた。
朝、ドドドという轟音で目が覚めた。
何事かと思って、音のするベランダに出ると、洗濯機が倒れていた。
倒れた勢いで、水道管ごと壁からもげて、水がドドドと噴き出ている。
急いで元栓を閉めた。
困ったのは、トイレである。流せない。
幸い、アパートの目の前にセブンイレブンがあった。
事情を話して、水道が治るまで、トイレを借りた。
セブンイレブン、いい気分であった。
先日、何年かぶりにそこを通りかかったら、空き店舗になっていた。
大学の移転で、そのあたりはもう学生がいないのだろう。
私が住んでいたドドドのアパートも、なくなっていた。
アパートの名前は「アンシャンテ」だった。フランス語であいさつの言葉らしい。
私はずっと「イーシャンテン」だと思っていた。
テンパイまであと一手。
なんのこっちゃ。
勘違いの証拠も消えた。
🧺10円問題 ちり紙問題
子供が小学生の頃。
洗濯機から「カラカラカラカラ」と音がする。
誰だ、また裸銭をポケットに入れたな。
壊れそうな音がする。開けたい。
でも洗濯機を途中で開けると「ピーッ」と怒られるから、ビビりの私は、開けられない。
終わるまで待つ。
やっぱりねと10円を拾い上げ、犯人捜しである。
「誰ね!またポケットにお金入れとるやろ。お金の神様が逃げるよ!」
たいてい、ちゃっかりものの下の子が名乗り出る。
言っても聞かない。
また「カラカラカラカラ」と、あざ笑うかのように鳴っている。
もう!と拾い上げると、100円。
……そっとポケットにしまう。
次また「カラカラカラカラ」。
……またか、まったく。
100円。
あれ?
よくよく考えたら、自分ががめた100円であった。
チリ紙はもっと悲惨だ。
「誰ね!」
こちらは誰も名乗り出ない。
洗濯物をパタパタさせられるからである。
🧺洗濯機、水族館、六月灯
とある番組で、洗濯機の呼び方が話題になっていた。
せんたっき。
「せんたくき」ではなく、「せんたっき」。
水族館も、「すいぞっかん」。
鹿児島には「六月灯」という夏祭りがある。
「ろくがつどう」ではなく、「ろっがっどう」。
ちなみに、パソコンでちゃんと変換できるのは、洗濯機だけである。
「せんたっき」に軍配があがった。
なんの?
それだけの話である。
🧺洗濯機を運ぶお値段
子育てにひと段落ついて、一人暮らしの引っ越しをしたときのこと。
見積もりの際、「全自動洗濯機だとお安いです」と言われた。
聞けば、ドラム式は重いうえ、運ぶのも設置も繊細で手間がかかるらしい。
その分、料金は全自動の倍ほどになるという。
デリケートなものほど、手がかかる。
そして、大事に扱われるということ。
そういえば先日、赤ちゃんを抱っこしている、若くて華奢なお母さんを見かけた。
「あんな身体で赤ちゃん抱いて大変だよね」と相方が言う。
嫉妬深い私は、
「いーよね。可愛いと大変って気を遣ってもらえて。私が抱っこしててもスルーよね」
と、全自動洗濯機みたいなことを言う。
私たちはケンカにならない。
相方は話をよく聞いてくれるし、私の憎まれ口も笑い飛ばす。
何より、料理が上手だから。
この日も、イカ墨のパスタが、私のどす黒い嫉妬を洗い流してくれた。
そのあと、食べこぼしの多い相方の服を洗濯機に放り込んだ。
また、洗濯物が乾かない季節が来る。
(おわり)
GW、皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
GW中は、投稿をここまでにして、
お休みにしようと思います。
(記事は読みにいきます♪)
楽しく、ご安全に、お過ごしください。
(マガジン用記事「エッチアスケッチ展覧会vol.4」は、どこかで投稿しようと思っています)
私は仕事です。GWのばか。
では、また!
