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中指8本おかあさんとラッキードロー

昔から論述試験は大嫌いで、マークシートの試験が好きだった。

こう書くとまるで勉強が好きな模範生のようであるが、実際は真逆である。世界で一番勉強が嫌いだ。大人になったからこそ勉強が必要なのに未だに勉強から逃げている。




中学生時代の話だ。

国語を教えるハムスターみたいな女性の本庄ほんじょう先生が「ありおりはべりいまそかり」を微妙にズレたピッチで歌っているさなか、私は国語便覧の偉人たちに髭を生やしていた。

当時、近隣の学校で不良たちのリアルクローズ(※1)が開催され、我が母校もその流れを汲んでいた。親に構ってもらえなくてグレてしまうとかそういうレベルではなく、グレること自体が神格化されていたように思う。男子はいかにズボンを下げて腰パンで穿けるか、女子はスカートをどこまで捲ってワカメちゃんになれるかを競っているような時代だった。

※1…高橋ひろし氏著作のヤンキーマンガ「クローズ」。小栗旬など当時の名だたるイケメンたちが登竜門のごとく出演していた。同時期にすえのぶけいこ女史の壮絶いじめマンガ「ライフ」のドラマが大流行した。窓から机はぶん殴られ、ヤンキーが喧嘩でガラスを割り授業が授業の体を成していなかった。

当然そんな時代の覇権を取った陽キャたちは教師を揶揄いまくる。陽キャが性格いいなんて嘘である。近年のメディアのせいで「陰キャの性格は悪くて陽キャの性格はいい」なんてイメージが付いてしまったが、陽キャの凶暴性を考えたらそんなことは言えない。

円山動物園の猿山のほうが秩序があると思えるような崩壊した教室の中で、本庄先生の授業は思うように進まない。年度末には彼女の頭に10円剥げが出来ていた。そして、私の国語便覧は髭だらけになっていた。


ぽてぽて歩く本条先生は格好の餌食になっていた。


国語便覧のほとんどにこんな髭を生やした。
なお、私は髭の「商標登録」をしていない。




そもそも論述試験の何が嫌かというと、根拠を持って論を成立させるところだ。大学生の時なんて、初めてテストを受けてうろたえた。何をどう書いていいのか正解がわからないからだ。次回からは、過去問を血眼になって必死に探し回った。そして付け焼刃のように丸暗記して、試験が終わるころには尿と一緒にすべて小便器に流れていった。パラッパラッパーならぬパッパラパーである。

この曲が好きすぎてガラケーの着うたに設定していた。



論述をする際、私の筆圧が邪魔をする。鉛筆が正しく持てないからだ。文字に起こすのが難しいのだが、親指を内側に巻き込む持ち方のため筆圧がかなり高くなる。わら半紙のプリントなんて何枚破ったか覚えていない。破れたプリントはおでこに当てて油取り紙の代わりに使っていた。顔にインクが付くのさえ目を潰れば、よーじやの8掛けぐらいの吸収力でなかなか使い勝手はよかった。

修学旅行の定番土産。

この筆圧や書き方の癖もあり、論述を書いていると字がどんどん左下に下がっていった。書き終わるころにはアジア通貨危機の₩(ウォン)のように他の回答欄に食い込む始末で、文章もしっちゃかめっちゃか支離滅裂だった。そう考えると、世の論述を求められる試験を突破された士業や師業の方たちって本当に素晴らしいと思う。

とてもじゃないが士業や師業持ちに「ちゃっちゃっとやってよ。」なんて口が裂けても言えない。PTAや町内会の寄り合いで「パソコンが触れる。」なんて言ってしまったが最後、その土地を離れるまでしょうもない文章やポスターの作成依頼が舞い込んでくる。そして、断ると村八分にされるまでがお決まりだ。田舎の人間ほど「どうして若い人が出て行くんだ」と嘆くけれど、そりゃそうである。火事のときに「誰も救急車を呼んでいないのである!」というあのミーム(インターネット流行り言葉)を思い出してしまう。



そんなわけで私はマークシート試験となると途端に息を吹きえす。たとえ内容がわからずとも、選択肢が4つなら25%の確率で正解するからだ。10円ガムで当たりを出すよりもロト6で1等を当てるよりも勝率は高いはず。ただ、選択肢が6つ以上だったり、数多くの選択肢の中から複数選ぶタイプになると途端に機嫌が悪くなる。マークシートの選択肢は4つまでという法律を作ってほしい。出来ればついでに減税して欲しい。




留学するだとかインター校に行くとかではなく、コミュニティの一つとして幼少期から英語教室に通わせてもらっていた。あの経済状況でよく通わせてたなと思うけれど、今よりもうんと物価は安かったし、食卓にならぶオカズは殆どモヤシ炒めだったので大丈夫だったのかもしれない。

私は軽微な大豆アレルギーなので、元をたどるとモヤシもNGなハズなのだけど、背に腹は代えられなかったんだろう。だって当時は一袋9円で買えたはずだ。今は平気で35円とか40円とかする。あと5年もすれば1袋100円になってモヤシ料理は「高級料理」に格上げされるかもしれない。モヤシって冷凍すればマシだけど、ウサイン・ボルト並みに足が速い。足が遅くて冷凍につよいモヤシが早く生まれて欲しい。


15歳の夏、英検2級を取った。私の人生で頭脳のピークだった。

信じてもらえるかわからないが証拠を提出する。
英検2級って高校卒業程度なので、実はさして難しくはない。


人生で初めてのマークシートは英検だった。そして私はこのマークシートの洗礼を「英検2級」で受けることになる。そう、数字の連続である。

大問1は語彙を問う問題なのだが、選択肢「2」が異常に続いた。3つ連続で「2」になったあたりで、冷や汗が止まらない。指がとまった。パチンコならともかく、マークシートの数字が3つ揃っても確変に入ってボーナス点がもらえるわけでもない。偶数であれば確変確定なのだがそういう話もない。

気を落ち着けて、4つ目の答えを出す。またも「2」になった。

もうこの瞬間にワニワニパニックだ。脳内で井森美幸が珍妙なダンスを踊りだす。えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、よいよいよい。どう考えたって大人が作る試験でこんなに「2」が連続するはずがない。絶対にどこか間違っている。

とりあえず全問解いて見直しをした。

これは「1」か…こっちは「3」か…と訝しんで回答終了10分前にマークシートを塗りなおす。脳内では丁半の元締めが「よござんすね?」と私に囁く。私は「よござんす。」と答えて鉛筆を机に置いた。

解答速報を英語教室でもらい自己採点をする。すると、直す前の選択肢が正解で、直したものは全部爆死していた。な~にが「よござんす」だ。何もよよござんすじゃない。結局、私はこれを繰り返し3回目で1次試験を合格した。

3回受けた試験で得意のリスニングだけはぼ満点を取れた。ただ、どうしても語彙や文法などの選択問題はむずかしく、過去問を解いても半分あっていればマシなほうだった。結局3回目の試験では最低点ギリギリで合格した。ラッキードローは引けたらしい。準2級までと違い確率は渋柿よりも渋くなっていた。

その後、2次試験の面接試験へと駒を進めた。受けて思ったが、2級の面接試験は「ルー大柴」に成り切ってしまえば特に問題なく合格する。実際、心臓がひしゃげるぐらい緊張しながら面接を受けたが、頓珍漢な単語を並べていただけなのに受かってしまった。「これはリンゴですか?」と聞かれて「それは圧力鍋です。」と答えるぐらいには会話が嚙み合っていなかった。それでも合格しちゃうって、それはそれで試験としてどうなんだ。

受かった後に準1級も「面接なら余裕かも…!」と思い、例題の面接ビデオを見た。難易度が段違いだった。

2級が爆笑問題の田中だとしたら、準1級はチェ・ホンマンだったのである。2級と準1級の間にあまりのも難易度の差がありすぎた。

本能的に「あ、これダメだ」と思って、英検を取るのは2級で止めた。そして私の英語に対する熱もさめてしまい、結局そこから英語の資格を追加で取ることはなかった。




時々、大蝦夷ファクトリー(※2)のゲームセンターを通り過ぎて家に帰る。たまたま覗いたところ、miffyのガチャガチャが更新されていた。かわいい。

※2…ららぽーと的な商業施設。札幌駅の開発が進むまでは覇権を取っていたが、今は程よく空いている。オフィス棟に、吉本興業の事務所が入っているが芸人を見かけたことは一度たりともない。


もう小物を買ったって置く場所なんてない。金だって特にあるわけじゃない。それでも見た瞬間、磁石のように動けなくなった。

もうパブロフの犬ならぬ、パブロフのクソ釜である。ホットドッグを見て、二重の意味で涎を垂らすくらいの反応だ。…何の話だ。


1回400円のガチャに慣れすぎて安く思えてしまう。


今回のガチャのテーマは「POINT AT!」、つまり指差しのポーズがテーマなのだ。「どれが欲しいかな~黄色のミッフィが一番かわいいかも〜」なんて考えながらじっくり見ていてあることに気が付いた。







おかあさん、めちゃくちゃ中指立ててはる…!!!

※薬指説など諸説ある。

しかも両手…!!!!
もうこれは引くしかあるまい。両替をして意気揚々とガチャに向かった。









いや、あのさぁ…!!!!




2連続おかあさんの時点で嫌な予感はしたのだ。

3回目で乾いた笑いが出てきて、意地の4回目でその場にうずくまってしまった。
こんなラッキードロー望んでない~~~~!!!!


その後、お財布が空になるまでやけっぱち味噌太郎になったが、結局一番欲しかった黄色の子と先生は引けなかった。そしてオレンジの子はなんか顔の調子が悪い。公式画像を見ても目の大きさがちょっと変だ。いや、愛すけども…。


Twitter(旧:X)で検索をかけると、みんな偏っているらしい。交換希望の投稿をしている人たちが結構いた。8本の中指を立てられている私だ、6本ぐらい輸出したっていいじゃないかと思ったけれど、如何せん作法がわからない。騙し取られたらどうしようとか、下手をこいて郵便事故などで迷惑をかけたりトラブって晒されたらどうしようとか、結局ずーっと悩んでいる。

ああいうのってどうやるのが正解なのかしら…。女の子ばっかりだろうし、クソ釜から突然DM来たら怖いよね、うーん…。


なんか、どこまでも間の悪いオカマだな、私…。






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