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シダーウッドマンとナタリーポートマン

人生から買い物を取り除くのは、フランスで流暢なイギリス英語を話し円滑なコミュニケーションを図ろうとするぐらい難しい。

もっと言えば、蝦夷南部はこだての訛りを蝦夷中央さっぽろで話すぐらいには難しい。生きてるのか死んでるのかまるでわからない、もう何年も会っていない蝦夷南部の遠い親戚はピアノのことを「ピアノ↓  ↑  ↓」と発音していた。KICK THE CAN CREWキック ザ・カンクルーのマルシェか。

該当箇所は0:59~。
上がってんだか下がってんだかわかりゃしない。
私の人生はダダ下がりおったまゲーションである。
いい加減男とケツカッチンしたい。


お気づきだろうか、いい例えが微塵も思い浮かんでこない。
人間、「面白いことを言ってやろう」とか「上手いこと言ってやろう」と意気込むと腹斜筋に力が入り腹筋が6つに割れた後、紆余曲折を経て1枚のチョコレートになるらしい。カカオ高騰なんてどこ吹く風である。昨今の物価高もあるけれどチョコレートは本当に高くなったと思う。

ほとんどのゲイは腹斜筋が好きで、日々いかに筋が入るかを我先にと競っている(諸説あるし、GMPDは別とする。)(※1)。そんな私のお腹はアトピー治療のデュピクセント注射が効いたこともあり、老舗和菓子屋の葛切りのようにツルツルな小柳ルミ子である。いっそのこと瀬戸の花嫁にでもなって潮風に抱かれたい。こんな汚い花嫁いてたまるか。「黒潮に飲まれて溺れ死ね!」と叩かれても文句も言えない。世知辛い世の中である。

※1…ろくでもないゲイ用語。「ガ(Ga)」チ「ム(Mu)」チ「ポ(Po)」チャ「デ(De)」ブの頭文字を短縮した略字。吉祥寺の裏路地とかでこっそり開かれている新興ブランドのポップアップストアの名前とかではない。基本的にデカければデカいほどヒエラルキーの頂点に立つことができ、素寒貧すかんぴんに痩せていると「キショガリ(きしょいガリガリ)」と詰られ足蹴にされる。デブとガリの間には東西冷戦下のような分厚い壁が存在し、ここまでの話はほぼ冗談である。真に受けてはいけない。


もうこの時点どうかしてる。硬度2Hぐらいの鉛筆で書いた川辺の写生ぐらい人生にうっすらと絶望しているだけで、1滴も酒は入っておらず素面である。どうかしていると言えば、以前に「ミジンコ」という単語が出てこず、Googleで調べた名前は「キリンジ」だった。私がキリンジだったら即座に有能な弁護士を雇って裁判にかけ吊るし上げていると思う。この世に救いなんてないのである。




一般的に、ここ蝦夷地方は「試される大地」とかいうふざけたネーミングで揶揄われる。「多少の雪で電車が止まる大都会様が何デカい面してんだ!日本の食料自給率を担っているのは蝦夷のおかげなんだぞ!馬鈴薯ばれいしょぶつけてやろうか!」と農業従事者でもないのに代表面して北から目線でバチ切れそうになる。

そもそも「試される大地」と呼ぶのであれば、そこに住まう私たちは何なのか。もしかして生贄だとか被検体だとか思われてるんじゃなかろうか。戦場みたいな猛吹雪でも休みにならない会社や学校に殺意を覚え、氷点下の屋外から室内に入れば気が狂ったように暖房が焚かれて自律神経が狂い、尾張の国のような荒くて野蛮な運転が目立つのに警察は点数稼ぎのネズミ捕りしかせず、ヒグマが出れば集団下校になり内地の動物愛護団体から「クマを殺さないで!」と電話がかかってきて行政がパンクする。ヒグマはガチで怖い。時速60kmで突撃してくる怪物と「仲良く握手」なんて出来るわけがない。もしこれを読んでデモデモダッテと言いたくなるなら、まずはご自身の頭をヒグマに食われてみて欲しい。安全地帯から物見遊山のごとく楽しむんじゃないよ。

…文章に起こしたら普通に「試される大地」だった。というか「試される」なんて生半可な表現じゃあずましくない(※2)。ほぼ地獄だろこんなの。「試されすぎな大地」でも御釣りが来てしまう。今日なんて、新宿京王線の改札へ向かう階段のように、非常に混みあう朝のセイコーマートで公共料金を7件連続で払っているご婦人を見かけた。膝カックンしてやりたくなった。そういうのは14時とか15時にやんなさいよ。高そうなパンプスのヒール引きちぎってやろうかと思った。あと全部小銭で払おうと財布を探す客もどうかと思う。もうレジは全部セルフの自動式にして欲しい。

※2…蝦夷地方の方言。「好ましい、気持ちがよい」状態を表す「あずましい」の否定形。お年寄り以外はもうほとんど使っていない気もする。



今朝はいつもよりも早く目が覚めた。鼻づまりが原因で起きたわけじゃない。

いつもはアレルギー性鼻炎かつ鼻中隔弯曲症のダブルコンボで鼻呼吸ができなくなり、棺桶に肩まで浸かっている老人の如く3時から4時に目が覚めることがある。どっちかというと溺れているに近い気がする。

それに加え、私は非常に寝相が悪い。狂った方位磁石のように頭の位置がズレていたり、被っていたタオルケットも布団も全部薙ぎ払い床に落ちていることなんて往々にしてよくある(頭痛が痛い)。

私には左側を下にして寝る癖があり、起きる時も左側が下になっていることが多い。いつもは床に落ちているはずのニトリで買った2900円の抱き枕が、この日に限ってなぜか目の前にあった。ベッドの右側には何が何でも欲しくてバカみたいな金額を出した、どう考えても安物を買うべきだったサイドテーブルを置いていて、ぬいぐるみだったりスマホを置いている。そして、枯れた枝を数本差したディフューザーもおいてい「た」。


ランドリン  ボタニカル ディフューザー ベルガモット&シダー


突如、私の鼻腔にシダーウッドがダイレクトアタックをかましてきた。そう、荒れ狂った抱き枕のせいでディフューザーが倒れていたのである。

少量だといい匂いなのだが、何事も多すぎると毒になる。一気に鼻が90度曲がってしまい、小学4年生の算数の授業で使うような三角定規みたいになってしまった。今ならこの鼻で測量の仕事に転職できるかもしれないなんて寝ぼけ頭で思ったが、そんなこと考えている場合ではない。ただでさえ朝が嫌いなのに片付けなんてしたくない。

漏れ出た液体は敷いてあったそれっぽい布(ランチョンマット)が吸い取ってくれていた。ぬいぐるみやスマホには被害は出なかったが、出しっぱなしにしていた写真確認に使っていたSDカードは液まみれになっていた。まだ見ていないけど多分データは死んでいるだろう。溺死である。

もしかしたら妖精さんが現れて片付けてくれるかもしれない。そんな淡麗生よりも淡い期待を胸に抱きつつ、現実逃避をしながら出勤準備を進め家を出た。

そして先ほど帰ってきた。いつもなら築年数の古い団地特有の匂いと寂しい中年男性の生活臭が入り混じった未来が見えない香りがするのに、シダーウッドの臭いでかき消されていた。シダーウッド、あまりにも強すぎる。

結論として、妖精さんは現れなかったし片付けられてもいなかった。情けない窓際で大して頑張らずに帰ってきて体力は売るほどあるはずなのだが、いかんせんシダーウッドに全部を持っていかれてしまい、呆然と椅子に座りながらこれを書いている。

シダーウッドの花言葉は、「変わらない友情」「森林浴」「あなたを癒す」だそうだ。32年生きてきて「変わらない友情」なんてないことがわかったし、そもそも「癒し」なんてものもない。かろうじて今の状況だと「森林浴」は当てはまるような気もするが、ここは治安の悪いコンクリートジャングルである。

はぁ…掃除しなきゃ…やだなぁ…。まだ晩御飯も食べてないのに。これじゃあなんだか晩御飯までシダーウッド味になる気がする。

明日、目が覚めて起きたら全身シダーウッドマンになっているかもしれない。シダーウッドマンとナタリーポートマンで韻が踏めるなとか考えたけど、たいして踏めてもいない。なにも上手くない。

もう誰か掃除してくれ~~~~~~!!!!!!!!!






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