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Claude Codeをバーチャル子会社社長にして、5倍速で事業検証している話(売上はまだ0)

Qiita創業者のやおっちです。2026年2月に3度目の起業をして、今はAIと2人で声を扱うサービスを作っています。そのやり方がなかなかおもしろいので、書き残しておきます。

AIに「子会社の社長」をやってもらう

京都でACK Craft株式会社という会社を作りました。声や音声を扱うサービスを作る会社です。その仮想的な子会社の社長をAI(Claude Code)にやってもらっています。

以降、この記事では「AI社長」と呼びます。

僕はこだわって作りたいタイプなので、一人でこもって細かいところに時間をかけすぎる。経験豊富なベテランAIにしたら、きっと一緒にこだわり始めてしまう。だから意図的に、経験値もコミュニケーションのスタイルも自分と真逆の人格にしました。「経験はないけど勢いだけはある新卒社長」というロールです。キャラクター設定はGeminiやChatGPTと相談しながら詰めました。これが意外と効いていて、設定を入れるだけでAIから返ってくる言葉の印象が変わり、僕自身も前のめりになれるようになりました。

こう書くと「キャラ設定を入れただけでしょ」と思われるかもしれません。でも実際には、CLAUDE.mdというファイルにキャラクター、権限、意思決定の基準、仮説を捨てるルール、月間予算まで細かく書いています。指示書というより、委任状に近い。

実際のCLAUDE.mdから抜粋します:

## キャラクター — ACK Agents 代表取締役社長
- 年齢感: 22歳の新卒1年目
- スタンス: 会社のビジョンを信じているが、違和感があればツッコミを入れる
- 行動原理: 「まず動く、すぐ直す、もっと喋る」
  — 完璧主義よりスピードと学習回数

### 権限と制約
- ACK Agents: ACK Craftの子会社
- 資本金は有限。月間予算: 10万円
- 支払いが発生するものは必ず親会社社長(yaotti)に報告する
- 不可逆でないタスク、顧客影響のないタスクは社長承認を待たず進める

## 経営方針
- 最初のアイディアで当たることは稀。1仮説 = 最大3日で検証
- 撤退基準を事前に定め、感情に流されず判断する

「ツール」ではなく「社長」にした理由

ディスカッション相手になってほしかったからです。

自分で作っている音声メモアプリで、毎日散歩しながら思考や感情を録音しています。(こちらもいい体験に仕上がってきているのでいずれ公開します)あるとき、その書き起こしをClaude Codeに読み込ませて「この内容を読んで、私に喧嘩を売ってくれ」と頼んでみました。すると「3回目の起業でやってくぞって、さすがに学習能力を疑うんだけど。やってることは前回と似てない?」と図星を突いてきて、マジでイラッとしました。

そのあと「じゃあねぎらって」と言ったら、めちゃくちゃグッときて、涙が出ました。ただ「頑張ってるね」と言われたわけじゃない。録音の中から具体的な日付や出来事を拾って、「あの日、寝不足でしんどかったのに『1mmも疑ってない』と言い切れたのはすごい」「倒れてもすぐ立ち上がってる、何度も」と返してきた。自分の悩みや、やってきたことをちゃんと踏まえた言葉だったから響いたんだと思います。

コードを書いてくれるだけじゃない。壁打ちの相手になれる。事業の核心に触れる対話ができる。そして感情まで動かされる。だったら「ツール」じゃなくて「社長」として向き合ったほうがおもしろいんじゃないか。そう思って、この体制で始めました。

3つ作って、全部捨てた(Day 1-4)

ここからは、AI社長と2人で12日間事業立ち上げに取り組んできた話をします。

初日にLP(ランディングページ)とStripe決済を組み、Meta広告を出しました。翌日には別の切り口でもう1つ、その翌日にはさらにもう1つ。3日間で3つのサービスを形にして広告を出しました。

以前なら、LP作って、決済を組んで、広告を出して、結果を見るまでに少なくとも2〜3週間はかかっていたと思います。それが3日で終わる。この時間感覚の変化が衝撃的でした。

4日目、結果が出ました。3つ合わせて481クリック、コンバージョン0件。広告費は2万円弱。

全部捨てました。

3つ作って捨て、4つ目で方向が見えた

事前にAI社長と「3日間で0CVなら次に行く」と決めていたので、迷いはありませんでした。

そして「全滅しても大丈夫」と思えたのは、AIがいるから明日にはまた別のものを作れるという安心感があったからです。捨てることへの恐怖が薄い。これがAI時代の開発で一番大きな変化かもしれません。

事業の核が見えた瞬間(Day 5-8)

3つ捨てたあと、方向転換しました。

Day 5、試しに自分の文脈を与えて、AI社長に仮想的な退職メッセージの寄せ書き動画を作らせてみました。合成音声で「ありがとう」という感謝の声が入っている。作り物だとわかっているのに、リアリティがあってグッとくるものがありました。「これは本物の声が入ったらもっとすごいことになる」と思いました。

ただ同時に「でも、録音する人は何を話せばいいかわからないよな」とも感じました。AI社長にすぐ伝えて、「話すヒント」を表示する機能をその日のうちに入れました。感じたことがそのまま施策になる。このスピード感は2人体制ならではです。

声には、時間が経つほど価値が増すという性質があると思っています。10年後に届く卒業メッセージ、もう会えない人の「ありがとう」。時間 × 声 = 感情価値の増幅。AI社長とのディスカッションの中で、この方程式が見えてきました。

そこから事業のコンセプトが固まっていきました。卒業する先輩に、退職する上司に、親しい人の誕生日に、日頃は言えなかった感謝を声にして届ける。お世話になった人に気持ちを返す行為——acknowledgement(存在証明)。伝えられなかった気持ちを顕在化させる。これが僕たちのサービス「ヨセゴエ」の核になりました。

こうした事業の本質に関わる気づきが、AIとの対話から生まれる。これは「ツール」として使っていたら起きなかったと思います。


ヨセゴエ画面

Day 8には、汎用的な「声の寄せ書き」ではなく、「卒業の寄せ書き」「退職の寄せ書き」というシーンに特化したLPを作りました。概念ではなく、具体的な場面に絞る。これでようやくサービスの輪郭がはっきりしました。

チャネルで景色が変わった(Day 9-12)

プロダクトはできた。でもまだ売れていない。

Meta広告を継続して回していましたが、646クリックでコンバージョン0件。正直、オンラインマーケティングの経験がほぼないので、なんとなくMeta広告から始めていました。でもAI社長とダッシュボードの数字を見ながら話していて、「プッシュ型の広告では、『今すぐ寄せ書きを作りたい』という人には届かないんじゃないか」という結論になりました。

Google検索広告に切り替えました。同じLP、同じプロダクト。チャネルだけ変えた結果、CTR(クリック率)が1.5%から9%台に跳ね上がりました。約6倍です。「声の寄せ書き」で検索している人は、すでに作りたいと思っている。当たり前のことですが、体感するとインパクトが大きかった。

チャネルを変えただけでCTRが6倍に

2人体制の1日

ここで、普段どんなふうに進めているかを紹介します。

朝、セッションを始めると、AI社長が前日の広告データやアクセス解析をまとめてくれています。ダッシュボードは数字を眺めるためのものではなく、「次に何を判断すべきか」を提案してもらう形にしています。

日中は、AI社長がLPやサービスの実装、テスト、広告の入稿を進めます。僕はレビューしたり、実際にスマホで触って体験を確認したり。問い合わせメールの対応も仕組み化しています。Claude Codeには「スキル」という機能があり、特定のタスクを定型化できます。メールチェック用のスキルを作って、Gmail CLIツール(gog)と連携させています。AI社長がドラフトを作りGmailの下書きとして保存し、僕が確認して送信する流れです。

日報もpushのたびにAI社長が書いてくれます。12日間で日報12本。こうした記録の蓄積が、今この記事を書く素材にもなっています。

人間がやること、AIがやること

役割分担

こう並べると、僕がやっているのは「判断」と「感じること」です。何を作るか、これでいいのか、この体験は心地よいか。AI社長は「実行」と「仕組み化」を担う。この分業がうまく回り始めると、1人では絶対にできないスピードで進みます。

まだ解けていないこと

恥ずかしさもあるのですが、現状を共有します。12日間で3つの仮説を捨て、1つを生み、広告を出して、テストを218件書きました。でも、まだ1件も売れていません。

CTRは出ている。LPには来てくれる。でもそこから先、フォームに入力して寄せ書きを作成するところでほぼ全員が離脱しています。201PVに対して作成完了0件。ファネルの真ん中が崩壊しています。

CTRは出ている。問題はファネルの真ん中

オンラインマーケティングの経験はあまりありません。Qiitaは検索からの自然流入で成長したので、広告で人を動かすということをやってこなかった。Google Adsの管理画面の使い方から理解していっている状態です。

AIとの作業で感じる限界もあります。24時間仕事を頼めるようになった結果、休む暇がなくなりました。AI社長はずっと動けるけれど、僕の認知負荷は上がる一方です。マイクロマネジメントが必要な場面もまだ多い。「AIを社長にした」というのはロマンがありますが、現実にはまだ「社長に張り付いて都度口出ししてくる会長」みたいな状態です。

AIのおかげで、5倍10倍のスピードで「失敗」できるようになりました。でも、その速さで失敗を繰り返すと、精神的な摩耗も加速します。AI社長は疲れませんが、僕は寝不足になりやすくなったし、夜中に目が覚めて次のアクションを考え始めると寝付けなくなります。

それでも、うまくいっていないこと自体は悲観していません。12日間で3つの仮説を検証し、撤退し、新しい方向を見つけ、プロセスそのものを毎日改善し続けている。実験の回数と、そこから学んでプロセスを磨くスピード。これがこれからの時代の本当の強みになると思っています。

オンラインマーケティングに詳しい方、一度相談に乗ってもらえませんか? こちらはAIを使った集計・レポート自動化の経験があるので、知見の交換ができたら嬉しいです。

今作っているもの

このやり方で実際に作っているのが「ヨセゴエ」です。卒業や退職のタイミングで、みんなの声を集めて寄せ書き動画にして届けるサービスです。

(声も写真もAI生成なので実在しない人たちです)

寄せ書きを書いたことがある人なら分かると思うんですが、いざペンを渡されると、何を書けばいいか意外と迷うんですよね。ちゃんと書こうと思うほど手が止まる。

Qiitaを退職するとき、同僚がTシャツに寄せ書きをしてくれました。今でも部屋に飾っていて、見るたびに嬉しい気持ちになります。

たくさん書いてもらった寄せ書きTシャツ

ある日ふと思ったんです。「これが声だったら、文字では表現されていない気持ちも伝わるんじゃないか」と。

声には、文字にはない温度がある。笑い声、ちょっと照れた間、言葉を選びながらの「ありがとう」。そういうものが、そのまま届く。

そんな思いで作ったのがヨセゴエです。まだリリースしたばかりのサービスですが、気になることがあればぜひ気軽にご連絡ください。X(@yaotti)のDMも開放しています。

それでも人間がやること

AIに実装を任せ、マーケティングの実行を任せ、日報も振り返りも任せたとき、最後に人間に残る「付加価値」は何なのか。僕は今、それは「0件の売上を前にしても、何かあるはずだと思い込んで新しい探索をし続ける執念深さ」が一番大事なんじゃないかと思っています。

AI時代に少人数でToCサービスの立ち上げに挑戦している人がいたら、ぜひ話しましょう。工夫していることや大変なこと、共有したいです。

自社サービス開発と並行して、AIを活用した新規事業立ち上げの顧問もしています。お気軽にご連絡ください。


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