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【朗読1週間チャレンジを終えて】「守破離」は9STEP#継承法

プロローグ/継承は「守破離」で回っている

1週間、夏目漱石「火事」を朗読し続けて、ひとつの発見がありました。

「朗読」の守破離は、九STEPで回っているのでは?

守の中に守破離があり、破の中に守破離があり、離の中に守破離がある。

その螺旋を登ることで、師匠の技が弟子に継承されていく……。.

そう気づいたのです。

朗読は、フィギュアスケートに似ている

朗読を長年続けていて、いつも思うのです。
下手な人の演技は魅力が乏しく惹きつけられないのに、上手い人の演技は誰が見ても美しく惹きつけられ、そのスポーツに興味がそれほどない人の記憶にまで残る。羽生選手や浅田選手のオリンピックでの演技は、多くの人々の心の中に生きています。なぜでしょう?

フィギュアスケートには、ご存じのように二つの採点基準があります。
TES(テクニカルエレメンツスコア/技術点)
ジャンプ、スピン、ステップなど、技の難易度と完成度を評価

PCS(プログラムコンポーネンツスコア/演技構成点)
スケーティング技術、表現力、音楽との調和など、芸術性を評価

他のスポーツのように評価基準が2つあることが、朗読の評価と全く同じ
構造なのです。

テクニカル要素(文章読解)
【地の文】

主語述語の把握、文末の処理、発音の明瞭さ、声音の最適化、間の取り方
状況描写、心情描写、解説、
【会話】
登場人物ごとの声の切り替え、状況に応じた声の切り替え、

アーティスティック要素(朗読表現)
声の響き、リズム、情感を駆使できる作品世界の朗読法の台本作成
台本通りの音の再現、再現を可能にするメンタル・身体の整え方

頭で理解していること(読解)を、身体を通して音にする(表現)。
この二つが統合されて、初めて「伝わる朗読・魅了する朗読」になる……。

話して伝えることは、全身運動。その中でもフィギュアスケートなのです。

この1週間は「守の守」だった

7日間を振り返って、今ようやくわかりました。。
伝統芸能の継承法は「守破離」ですが、体験して初めて、
「守破離」は)STEPではないかしら……。と感じたのです。

この1週間は、守破離の「守」の中の「守」——その入口だったのだと。

守の守を終えたら、守の破へ。
守の破を終えたら、守の離へ。

そして守の守破離を完了して、初めて「破の守」に進める。

師匠の技を受け継ぐということは、
こうして螺旋階段を、一段ずつ登っていくことなのかもしれません……。

そして、その取得法は、テクニカルエレメンツが先。テクニカルが身につかなければ、プログラムコンポーネンツにたどり着けないのです。

では、この7日間で何があったのか、もちろんテクニカルエレメンツを実行するための心と呼吸の準備でしかなかったように思います。

一日ずつ、振り返ってみますね。
(朗読にご興味のない方は、振り返りはパスなさってくださいね)

1日目/焦りの発見

【留意点】
初めての録音。緊張。

【気づいたこと】
・思ったより緊張していた
・間の取り方が難しい
・でも、楽しかった

1日目は、「やってみた」という感覚だけでした。

でも、この日すでに、大きな問題が潜んでいました。それが「焦り」です。

読みたい。早く次に進みたい。
その前のめりな気持ちが、すでに身体に現れていたのです。ただ、この時点では気づいていませんでした……。

2日目/低音が出た理由

【留意点】
間を取ることを意識

【効果】
・低音の声が出やすかった
・場面転換時の間が取れた

【発見】
息を吸って準備する時間が取れると、発声場所を頭蓋骨ではなく胸に下げることができる。

「間」にはもちろん、準備の時間という側面があります。

間を取る→息を吸う→発声位置を整える→低音が出る
この一連の流れが、初めて体現できました。

ただし、ここで注意しなければならないことがあります。
「自分勝手な表現」にならないようにすること。

間を取って映像を思い浮かべるのは良いけれど、
あくまで「夏目漱石が語っている」雰囲気でなければならない。

朗読者は、透明でなければならないのです。

3日目/最悪の集中力

【留意点】
文の読み始めに、文末を意識する

【結果】
・まだ4割しか文末まで目が通せていない
・読み間違えが一か所
・7分の集中が持たない

この日は、最悪でした。
集中状態が作れず、3回録音しても、最後まで納得して読めない……。
強がっているけど豆腐のメンタルな私は、不安感とお友達になってしまいました。

そこで、「こんな日もある……。」とできない自分を受け入れて、3回目で録音を終えました。

でも、この日の失敗が、後に大きな気づきをもたらします。

焦りがあると、句読点までしか見えない。

文末まで見切って読み始めることができないと、
語尾が適切に処理できないのです。
主原因の「焦り」を手放す方法を最優先に行動することを考えました。

4日目/原稿を作り直す

【改善】
原稿を再作成
・ページ切り替えを段落単位で
・主語と述語をマーク
・語尾の時間軸を明記
・ingを明記

【結果】
・集中力が戻った
・しかし、「わかったこと」と「やっていること」の乖離がある

原稿を整理したことで、全く判断をしないで済むようになりました。
頭がすっきりして、1文1文、ただ「読む」ことに集中して読めました。

でも、まだ課題は残っています……。
文章の指示を把握しても、その通りに身体を反応させる力が弱い。

これが、次の私の最大の課題です。

まるで、馬に乗ろうとしているのに、
馬は馬で勝手に動き、人は人で手綱を握っているだけ。

人馬一体になっていない状態。それが、私の朗読だったのです。

5日目/停滞

【結果】
4日目と同じ。進展なし。
この日も、壁は越えられませんでした。

6日目/階段を1段上がった

【留意点】
杉澤紀美子先生のレッスンを受けて、留意点がより明確化
課題箇所の演奏法が「楽譜」として手渡されたように感じました。
どこでその音を鳴らすのかが明確になり、頭がすっきり、
視界がクリアになりました。

【結果】
・ラクラク7分朗読できた
・ようやく文末まで意識できた
・これまでで1番、朗読構成を意識できた
・喉ではなく、身体を意識して朗読できた

【変化】
呼吸が楽になった。朗読し終わっても苦しくない。

初めて、階段を1段上がった気がしました。

作品に集中して映像で読むことが、最後までできたのです。
これにより、呼吸が昨日までより楽に息継ぎできるように変化しました。

「ここからが、やっと朗読への練習開始!!」
そう感じることができた日でした。

7日目/文末まで見切る

【できたこと】
初めて、作品最後の文末まで見切って読むことができた

【決意】
「今日は、コントロールしきる」
この決意が、身体に指示を送り続けました。

不思議なものです。
明確な意志が、自然と身体を導いてくれたのです。

そして、この日、もうひとつ大きなことがありました。

師匠の声を、6年ぶりに聴き直したのです。
杉澤陽太郎先生の朗読音声。

「こんなに、一拍ずつ分けていらっしゃる……」
「サラサラと流れる部分は、こんなにも素早く読んでいる……」

自分の記憶の中の朗読と、先生の実際の朗読。その間には、こんなにも距離があったのだと知りました。記憶の中の音のスピードは、東京スピード。関西圏の母音が伸びる話すスピードとは全くかけ離れていました、「母音の長さ」という忘れ去っていた根本的な課題をはっきりと認識しました。

そして、受講生への指導音声も聴きました。5人の方々の朗読を聴きながら、はっと気づいたのです。

一生懸命さは、要らない。

キリキリと追い込んで読むのではなく、
力の抜けた読みこそが、すっと耳に届く。

この1週間、私は、「次の文章を完璧に読もう」とし続けていたのですから、聞いてくれる人は存在していませんでした。。。

そのことに改めて気づいたとき、
初めて「間」で準備する中に、「力みを抜く」ことが含まれていることに気づき、腑に落ちました。

朗読は、「読む」ことではなく、「聴き手に届ける」こと。

この原則を忘れては、成り立たない。
この1週間が、そう教えてくれました。

この1週間で見えた、本当の課題

7日間を通じて、私が格闘していたのは何だったのか。
それは、焦りでした。

焦る心→文章が見切れない→間が取れない→正しい表現ができない
この負のループから抜け出せずにいました。

頭で分かっていることが、身体を通してやろうとしても、
全身がバラバラになっていて、統一して使えない。

馬が勝手に動き、人が手綱を持っているだけの状態。それを整え一体化するための1週間だった気がします。

毎日続けたことで、
「ああ、調教以前に毎日お世話しないと手懐けられない」
それに気がついたのです。

守の守、破の守、離の守

この1週間は、守の中の「守」でした。

師匠の型を守ろうとする、その入口。

まずは、自分の身体を整え、焦りを手放し、
聞き手のために文末まで見切る力をつける。

これが、「守の守」だったのだと思います。

次の1週間は、「守の破」かもしれません。
師匠から教わったものをキチンと破るための「守」の中の「破」の段階。

そしてその先に「守の離」があり、
ようやく「破の守」に進めるのでしょう。

守の中に守破離。
破の中に守破離。
離の中に守破離。

9STEPの螺旋を登ることで、
師匠の技が、弟子に継承されていく。

日本の伝統文化——歌舞伎や能、茶道、武道——
すべてに共通する継承の形が、この「朗読」にもあるのかもしれません。

エピローグ/あなたの続けてきたものの中にも

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

もしかしたら、あなたも何かを続けてきたのではないでしょうか?

仕事でも、趣味でも、子育てでも。

毎日同じことを繰り返しながら、
「これでいいのかな」と思う瞬間があったかもしれません。

でも、その繰り返しの中に、
きっと同じものが流れているのだと思います。

守破離の螺旋。

一見、同じことをしているように見えても、
実は少しずつ、階段を登っている。

そして、ある日突然「あ、変わった」と気づく瞬間が訪れる。

それは、魔法ではありません。

毎日の小さな積み重ねが、
目には見えない場所で、静かに育っていたのです。

あなたが続けてきたものの中に次の世代に渡すものがある

仕事でも、人生でも、技術でも……。
大切なのは、螺旋を信じて、一歩ずつ登り続けること。

焦らなくていい。
完璧じゃなくていい。

ただ、今日できることを、丁寧に。

それが、明日の自分への、最高の贈り物になるのだから。

【このチャレンジの記録】

  • 作品:夏目漱石『永日小品』収録「火事」

  • 期間:7日間(毎朝7分の朗読)

  • 朗読法:杉澤陽太郎メソッド

  • 気づき:守破離は九段階で回る

7日間、お付き合いくださり、本当にありがとうございました。

この先も、一段ずつ、登り続けます。次は「守」の中の「破」です。

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