IT・コンサルの読書会#10_読書会を通じて、色々な視点で物事をみる大切さを考えた
0. なぜ、いまこの読書会をまとめるのか
仕事が忙しくなると、本が読めなくなります。
正確には、読めなくなるというより、「役に立ちそうなもの」しか読めなくなる。
私にも、そういう時期がありました。
でも、自分のキャリアを見つめ直してから、少しずつ読書を再開し、読書会を主催するようになりました。
そうして本を読み、人と話す中で、物事の見方が増え、仕事の進め方も変わってきた気がしています。
この「IT・コンサルの読書会」は、そんな感覚を共有したいと思って始めたものです。
これまで9冊の本を取り上げてきましたが、テーマは、キャリア、働き方、対人関係、失敗、多様性、合理性とかなり幅がありました。
でも、いま振り返ると、毎回ずっと同じことを別の角度から考えていたようにも感じます。
それは、本を読んで終わりにせず、仕事やキャリアをどう見直すか、ということでした。
このシリーズでやってきたのは、本の要約ではありません。
読書会で出た意見や違和感を土台にしながら、自分が仕事でつまずいた経験や、マネジメントやPMとして人を巻き込みながら進めてきた経験を重ねて、「これは現場でどう効くのか」を考えてきました。
一人で読んで納得するのではなく、いろいろな立場の人の見方を通して、本の論点を仕事の言葉に翻訳してきたつもりです。
今回のまとめも、9冊を通してどんな視点が増えたのか。
仕事がうまく回らないとき、人が動かないとき、自分の考えが偏っている気がするとき、何をどう見直せばいいのか。
そこを整理してみたいと思います。
1. この読書会で問い続けてきたこと
9冊を並べると、扱ってきたテーマはかなり違います。
それでも、読書会で毎回議論の中心に戻ってきた問いは、かなり似ていたと思います。
仕事ができるとは、どういうことか。
キャリアが積み上がるとは、どういうことか。
そして、本はその問いにどう役立つのか。
若い頃の私は、仕事に必要なのは「正しい答えを早く出す力」だと思っていました。
もちろんそれは大事です。
特にコンサルの仕事では、整理する力、判断する力、伝える力は欠かせません。
ただ、仕事を続けるほど、それだけでは足りない場面が増えてきます。
自分は正しいのに相手が動かない。
頑張っているのに仕事が回らない。
効率化したはずなのに、なぜか現場が苦しくなる。
読書会で本当に考えてきたのは、そういう「一つの見方では前に進まない場面」をどう捉えるかでした。
このシリーズを通して見えてきたのは、本を読む意味は、答えを増やすことだけではないということです。
むしろ大きいのは、見る角度を増やせることでした。
会社の中だけでキャリアを見ていないか。
努力だけで仕事を見ていないか。
自分の正しさだけで人や組織を見ていないか。
そうした問いを持てるようになることのほうが、長い目では効いてきます。
9冊を通して残ったメッセージを、いまの自分なりに言い直すなら、こうなると思います。
仕事やキャリアは、何を知っているかだけでなく、どんな視点で見られるかで変わる。
このあとは、その視点がどう増えていったのかを順番に整理していきます。
2. まず考えたかったのは、「今の会社の中」以外からキャリアを見ることだった
目の前の仕事は忙しい。
次の評価も気になる。
でも、その先まで含めて自分は何を積み上げているのかと聞かれると、少し言葉に詰まる。
そんな人には、ここが長期的なキャリアを考える視点になるはずです。
1冊目に『LIFE SHIFT』を置いたのは、まさにそのためでした。
今の会社の中でどう伸びるか。
今の役割でどう成果を出すか。
それももちろん大事です。けれど、それだけでキャリアを考えていると、視野はどうしても狭くなります。
10年後、20年後も含めて見たときに、自分に何が残るのか。
会社や肩書きが変わっても、自分を支えるものは何か。
読書会では、その問いが最初から強くありました。
私自身、若い頃はキャリアを「今いる場所」の中で見ていました。
どの案件で結果を出すか。
どの役割を任されるか。
次にどう評価されるか。
もちろん、それが大事な時期もあります。
ただ、ある程度仕事をしていくと、それだけでは少し心もとなくなってきます。
環境が変わったとき、自分に何が残るのかが見えにくいからです。
『LIFE SHIFT』を読んでから、キャリアを見る感覚が変わりました。
役職や実績だけでなく、その裏で何が積み上がっているかを見るようになった気がします。
今の会社の中で何を得るかだけでなく、会社の外から見たときに何が残るか。
短期の成果だけでなく、長く働くうえで何が効いてくるか。
キャリアを見る視点が、一段外に開いたのだと思います。
ここで大事なのは、キャリアをきれいな計画で語りすぎないことです。
実際の仕事や人生は、そんなに予定通りには進みません。
だからこそ必要なのは、目の前だけでなく、環境が変わっても残るものを見ることです。
この経験は何につながるのか。
いまの役割の外でも通用する力は何か。
キャリアを「今の会社での現在地」だけで考えない。
そこが、ここでいちばん持ち帰ってほしい視点です。
では、その土台の上で、毎日の仕事はどう整えていけるのか。
次は、仕事がうまく回っていないと感じている人にとって、実務に近い話に進みます。
3. 仕事は、気合いではなく「仕組み」で見ると変わる
やることが多すぎて整理しきれない。
頑張っているのに手戻りが多い。
自分なりに考えているのに、なぜか前に進まない。
そんな状況を、能力不足や気合い不足として受け止めてしまっている人には、ここが具体的に効く視点だと思います。
『エッセンシャル思考』『失敗の科学』『頭のいい人が話す前に考えていること』を読んで、読書会で繰り返し出てきたのは、仕事の詰まりは個人の頑張りより先に、仕組みの問題として見たほうがいい、ということでした。
何をやるかの前に何をやめるかを考えること。
失敗しないことより、早く見つけて直せる状態をつくること。
話し方より前に、相談の持ち込み方や整理の仕方を見直すこと。
振り返ると、どれも「頑張り方」ではなく「仕組みを考える視点」の話でした。
私自身、仕事が回らなくなったとき、昔はまず「もっと頑張る」方向に寄りがちでした。
時間を使えば何とかなる。
踏ん張れば乗り切れる。
そう思っていたところがあります。
短期的にはそれで何とかなる場面もあります。
でも、仕事の量や複雑さが増えるほど、それでは持たなくなる。
頑張っているのに空回りしている感じのほうが強くなります。
ここでいうのは、大がかりな制度の話ではありません。
もっと基本的なことです。
何に時間を使っているかを見えるようにすること。
レビューの時刻を先に置いて、途中で軌道修正できるようにすること。
相談を「詰まってから」ではなく「詰まりそうな段階」で持ち込むこと。
話す前に、事実と意見と提案を分けておくこと。
こういう地味な基本動作が整うだけで、仕事の進み方はかなり変わります。
たとえば、「できたら見せます」ではなく「明日の11時に途中経過を見せます」と先に区切るだけで、手戻りは減ります。
相談も、「ちょっと詰まっています」ではなく、「事実はこれで、詰まりはここで、判断してほしいのはこれです」と持ち込むだけで、相手の反応は変わります。
このあたりは、読書会の中だけでなく、自分の仕事の経験からも実感があります。
仕事がうまく回る人は、崩れそうなポイントを早めに見つけて、小さく修正できる人です。
完璧に進めることより、途中で違和感に気づけること。
失敗しないことより、失敗が見えること。
現場では、そのほうがずっと強い。
仕事が苦しいときほど、自分を責める前に、仕事を個人の能力ではなく、仕組みとして見る。
その視点を持てるだけで、仕事の見え方はだいぶ変わります。
ただ、仕事は自分の仕組みを整えれば終わるわけでもありません。
実際には、上司や関係部署、メンバーなど、他者と一緒に進める場面のほうがずっと多い。
次は、人との関わりをどう見るかについて考えてみます。
4. 人が動かないときは、「自分の正しさ」ではなく「相手の見え方」から考える
こちらとしては正しいことを言っている。
材料も揃えている。
筋も通っている。
なのに前に進まない。
上司、関係部署、メンバーなどが思うように動いてくれないと感じる場面に何度もぶつかっている人には、ここがいちばん直結するところです。
冒頭の例は、若い頃の私にもよくありました。
そのたびに、最初は「説明が足りなかったのだろうか」と考えていました。
あるいは「もっとロジカルに言えば伝わったのではないか」と。
もちろん、それで改善する場面もあります。
ただ、仕事を続けるうちに、それだけではないとわかってきました。
多くの場合、足りていなかったのは論理の強さというより、相手がどんな状況で、何を気にしていて、どういう順番なら受け取りやすいのかを見る視点だったのだと思います。
『人を動かす』を読んだ回で強く残ったのは、仕事で問われるのは「自分がどれだけ正しいか」だけではなく、「相手がどう受け取り、どうすれば動けるか」だ、ということでした。
相手が重要に扱われていると感じているか。
依頼や指摘が、ただの圧になっていないか。
議論に勝つことが目的になっていないか。
忙しい現場ほど、このあたりは雑になりやすい。
むしろ、自分が正しいと思っているときほど見えにくくなります。
これはコミュニケーション論というより、仕事の進め方そのものだと思っています。
マネジメントやPMとして仕事をしていると特にそうですが、成果は自分一人のアウトプットだけでは決まりません。
上司に通す。
関係部署と調整する。
メンバーに任せる。
顧客に納得してもらう。
そういう場面が増えるほど、自分ができること以上に、相手の立場から仕事を見る力が効いてきます。
『頭のいい人が話す前に考えていること』が教えてくれたのも、相手の立場で考えることでした。
いま起きている事実は何か。
自分はどこで詰まっているのか。
相手に求めたいのは判断なのか、壁打ちなのか、共有なのか。
相手が受け取りやすい形に整理して渡すこともまた、相手の立場で考えることの一部です。
私自身、仕事がうまくいかなかった場面を振り返ると、説明が足りなかったというより、相手がどう見ているかを考える前に、自分の正しさだけを先に出していたことが多かった気がします。
依頼はしているのに、相手の負荷や立場を見ていない。
会議では論点を整理しているのに、相手が判断しやすい形にはなっていない。
そういう小さなズレが、あとから大きく効いてきます。
仕事は「正しいことを言うゲーム」ではありません。
もちろん論理は必要です。
でも、論理が通っていても人は自動的には動きません。
相手が何を見ているかを考えること。
相手が判断しやすい形に整えること。
一見遠回りに見えるこうしたことのほうが、実は仕事を前に進める近道だったりします。
ただ、ここまで来ると、別の問いも出てきます。
自分では相手や現場を見ているつもりでも、そもそも自分の見方自体が偏っていることはないのか。
次は、その違和感について整理してみます。
5. すぐに役に立たないものの中に、見方を深くするヒントがある
仕事では筋が通っているし、間違ったことを言っているつもりもない。
でも、どこかで見落としているものがある気がする。
合理的に考えているはずなのに、なぜかしっくりこない。
自分の考えや正義が偏っているのではないか、という違和感を持ち始めた人には、ここがいちばん効く視点です。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだとき、腑に落ちたのは、仕事が忙しくなるほど私たちは「役に立つ情報」を優先するようになる、という点でした。
すぐ使えるもの。
すぐ回収できるもの。
次のアクションにつながるもの。
その姿勢は実務では必要です。
ただ、そのモードが強くなりすぎると、いまは使い道がわからないものや、すぐには整理できない違和感を持ちにくくなる。
読書会でも、この感覚には多くの人が反応していました。
『奇跡の社会科学』で語られていたこともこれに近いのかもしれません。
ロジックやKPIや標準化は大事だけれど、それだけで人や組織は扱えない。数字には出ない負荷、会議で言語化されない違和感、制度の外で回している現場の工夫。
そういうものまで「ノイズ」として処理してしまうと、短期的にはきれいでも、判断はだんだん浅くなります。
ここで大事なのは、クリティカルシンキング=自分の前提を疑うことだと思います。
自分は何を当然だと思っているのか。
違う立場の人から見ると、何が見えているのか。
その意味で、私がこのテーマを語れる理由の一つは、ただ本を読んできたからではなく、読書会を通じていろいろな立場の違う見方に触れてきたからです。
一人で読んでいると素通りしそうな論点でも、他の人の違和感を通すと、急に見え方が変わることがあります。
読書会をやっていて面白いのは、そこでした。
一見、今の仕事とは遠そうな本や、直接のノウハウが書いてあるわけではない本のほうが、意外と議論が広がります。
その場ですぐに「明日からこれをやろう」とはならないかもしれない。
でも、少し時間が経ってから、別の場面で効いてくる。
会議の違和感の捉え方が変わったり、人の話の聞き方が変わったり、キャリアの見え方が変わったりする。
すぐに役に立たないものの中には、いまの自分の見方をずらすヒントがある。
そこに触れられるかどうかで、思考の深さはかなり変わってきます。
では、ここまでの話をふまえて、若手ビジネスパーソンは何を持ち帰ればいいのか。
次は、その示唆を絞って整理します。
6. 若手ビジネスパーソンへの示唆
ここまでの話をまとめると、論点はかなり広がっていました。
キャリアの土台、仕事の運び方、人との関わり方、自分の前提を疑うこと。テーマだけ見ると別々ですが、若手ビジネスパーソンにとって持ち帰るべきことは、そこまで多くありません。
大きく言えば、三つです。
一つ目は、視点を今の会社の外に広げることです。
キャリアを今の会社の中だけで考えていると、どうしても評価や役割の話に閉じやすくなります。
もちろんそれは大事ですが、それだけでは長期の土台は見えません。
環境が変わっても残るものは何か、という見方を持つだけで、いまの仕事の意味づけは変わってきます。
二つ目は、仕事を気合いではなく仕組みで見ることです。
忙しくなるほど、自分の足りなさを能力や努力の問題として受け取りやすくなります。
でも実際には、仕事の詰まりはもっと手前の運び方にあることが多い。
何をやめるかを決めること。
途中で確認する場を置くこと。
相談を早く持ち込むこと。
話を整理して渡すこと。
こうした基本動作を整えるだけで、仕事のしんどさはかなり変わります。
三つ目は、自分の正しさだけで物事を見ないことです。
相手はどう見ているか。
いまの論理からこぼれているものは何か。
すぐには役に立たない違和感の中に、何があるのか。
そうした問いを持てると、仕事でもキャリアでも、判断が少し立体的になります。
どれも派手な話ではありません。
すぐに肩書きが変わるわけでもないし、急に仕事が軽くなるわけでもない。
ただ、振り返ると、こういう地味な差の積み重ねのほうが、数年後の働き方やキャリアの輪郭を変えていきます。
この読書会で本当に考えてきたのも、そういうことでした。
本から正解を受け取ることより、本を通して自分の見方を増やしていくこと。
その価値のほうが、ずっと大きいのだと思います。
最後に、この読書会全体を通して、自分が何を考えてきたのかをもう一度短く束ねて終わります。
7. まとめ
ここまで9冊を振り返ってきましたが、改めて思うのは、この読書会でやってきたのは本の要約ではなかったということです。
キャリア、働き方、人との関わり方、失敗、多様性、合理性。
扱ったテーマは違っていても、考えていたことはずっとつながっていました。
どう働くか。
何を積み上げるか。
正しさや速さが求められる仕事の中で、何を見落とさないようにするか。
そういうことを、本を入口にしながら考え続けてきたのだと思います。
いま振り返ると、9冊すべての根底にあったテーマは、「いろいろな視点で物事を見ること」でした。
今の会社の中だけでキャリアを見ないこと。
気合いだけで仕事を見ないこと。
自分の正しさだけで相手を見ないこと。
効率や合理性だけで現場を見ないこと。
そうやって見る角度を増やしていくことが、このシリーズを通していちばん言いたかったことだったのだと思います。
私がこのシリーズを書いてきた理由も、そこにあります。
単に本が好きだからではありません。
読書会を通じて、いろいろな人の視点を見てきたこと。
仕事の運用について、自分自身の経験から具体的な例で考えられること。
マネジメントやPMとして、多くの人と関わりながら仕事を進めてきたこと。
そうした実感があるからこそ、本の内容をそのまま紹介するのではなく、現場で使える言葉に翻訳したかったのだと思います。
コンサルのように、論点を絞り、早く整理し、次のアクションにつなげることが求められる仕事では、どうしても見方が細くなりやすいと思います。
でも、キャリアを長く見たときに効いてくるのは、それだけではありません。
いまはまだ説明しきれない違和感を持てること。
すぐには回収できない問いを手元に残しておけること。
目の前の成果だけでなく、その経験を別の角度から見直せること。
今回の9冊は、その感覚を何度も思い出させてくれました。
だからこの読書会は、これからも本を読んで終わる場にはしたくないと思っています。
本をきっかけに、仕事の進め方を見直し、キャリアの持ち方を考え直し、現場で使える言葉にまで落としていく。
もしこのシリーズが、同じように働き方やキャリアに迷う誰かにとって、自分の仕事を少し違う角度から見直す材料になれば、うれしいです。
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