第三話:お昼の眠気がひどい・異常に強い…それ、病気のサインかもしれません
「食後に眠くなるのは体質だから」「毎日のことだから慣れた」
そう思って放置していませんか。
第1話・第2話でお伝えしたように、お昼の眠気そのものは体内リズムや食後の生理反応による自然な現象です。しかし、眠気の「強さ」や「頻度」によっては、何らかの疾患が関係している可能性があります。
今回は、異常に強い昼間の眠気が示している可能性のある病気について、正確に整理してお伝えします。
「普通の眠気」と「異常な眠気」の境界線
まず、受診を考えるべき目安を確認しましょう。以下のような状態が続いている場合は、生活習慣だけでは説明がつかない可能性があります。
十分に眠っているのに、毎日強い眠気がある
話している最中・食事中など、眠ってはいけない場面でも眠り込んでしまう
短時間の仮眠をとっても眠気がまったく取れない、または逆にスッキリしない
朝起きても熟眠感がなく、体が重い
家族や同僚にいびきや無呼吸を指摘されたことがある
これらが複数あてはまる場合、以下に挙げる疾患の可能性を検討する価値があります。
昼間の眠気に関係する主な疾患
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
日本での患者数は約500万人と推計されており、日中の強い眠気を引き起こす疾患のなかで最もよく知られています。
睡眠中に気道が塞がり、呼吸が10秒以上止まる状態を繰り返す病気です。1時間に5回以上この無呼吸が起きると、診断の対象となります。本人は気づかないまま、夜中に何度も脳が覚醒状態になるため、睡眠の質が著しく低下します。
睡眠中に呼吸停止が繰り返されることで脳も身体も断続的に覚醒した状態になり、これでは休息どころではありません。その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされます。(睡眠時無呼吸なおそう.com)
特徴的なサインとして:
大きないびき(家族や同居者に指摘されることが多い)
起床時の頭痛・倦怠感
日中の強い眠気・集中力の低下
夜中に何度も目が覚める
肥満の方に多いとされていますが、顎が小さい・扁桃腺が大きいなど体格的な要因があれば、痩せ型の方でも発症することがあります。
放置すると高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高まることも報告されており、早めに専門機関を受診することが勧められています。
ナルコレプシー(過眠症の一種)
「眠くなる病気」として知られる神経疾患です。脳内でオレキシンを産生する神経細胞の機能が低下することで、覚醒状態を維持できなくなります。
日本ナルコレプシー協会によると、ナルコレプシーの眠気は「丸3日間睡眠をとらずに過ごした後に難しい問題に取り組んでいる」状態に例えられることがあります。通常ではありえない場面、たとえば食事中・電話中・試験の最中でも、眠り込んでしまうことがあります。
主な症状として:
場所・状況を問わない突然の強い眠気・居眠り
情動脱力発作(笑ったり驚いたりしたときに体の力が急に抜ける)
金縛り(睡眠麻痺)
入眠時の鮮明な幻覚
10〜20代前半に発症することが多いとされていますが、30代以降に発覚するケースもあります。診断には睡眠検査室での脳波検査が必要です。
「怠けている」と誤解されやすい病気ですが、適切な治療で症状をコントロールできます。心当たりがある方は、睡眠専門外来(精神神経科・神経内科)に相談することをお勧めします。
糖尿病・高血糖による眠気
第2話でも触れましたが、糖尿病の場合は血糖値を下げるインスリンがうまく働かないため、食後に高血糖が続きやすくなります。高血糖状態は脳の覚醒を維持するオレキシンを抑制するという研究報告があり、強い眠気が毎食後に続く場合は糖尿病の可能性を否定できません。
通常の健康診断の空腹時血糖値では見つかりにくいため、気になる方は医師に相談の上、食後血糖値や75g経口ブドウ糖負荷試験を受けることが選択肢になります。
うつ病・双極性障害
うつ病では、不眠と過眠の両方が現れることがあります。日中に眠気がひどい場合も、気分の落ち込み・意欲の低下・食欲の変化などが同時に現れているなら、精神的な疾患が関係している可能性があります。
特に双極性障害では、抑うつ状態のときに過眠が起きやすいとされています。
薬の副作用
抗ヒスタミン薬(花粉症・アレルギーの薬)・一部の降圧薬・睡眠薬・抗不安薬などは、日中の眠気を引き起こすことがあります。服用中の薬がある場合は、その副作用として眠気が出ている可能性も考慮に値します。処方医に相談することで、眠気の出にくい薬に変更できる場合があります。
どこに相談すればいいのか
眠気の原因によって、相談先が異なります。
疑われる原因相談先の目安睡眠時無呼吸症候群呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来ナルコレプシー・過眠症精神神経科・神経内科・睡眠専門外来糖尿病・血糖異常内科・糖尿病内科うつ病・双極性障害精神科・心療内科薬の副作用かかりつけ医・処方医
まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのが一般的な流れです。「毎日強い眠気がある」という情報だけでも、適切な検査につないでもらえることがあります。
まとめ
お昼の眠気は多くの場合、体内リズムや食後の生理反応によるものですが、以下のような状況では疾患が関係している可能性があります。
十分な睡眠をとっても日中の眠気が続く
眠ってはいけない場面でも眠り込む
家族にいびき・無呼吸を指摘されている
気分の落ち込みや意欲の低下も感じている
「この程度で病院に行くのは大げさかな」と思いがちですが、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする疾患は、放置することで合併症リスクが高まります。治療によって劇的に改善するケースも多いため、心当たりがある方はぜひ早めに相談してみてください。
次回の第4話では、仕事中でも使えるお昼の眠気を覚ます実践的な対策についてお伝えします。
参考情報
兵庫医科大学病院「睡眠時無呼吸症候群 みんなの医療ガイド」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/93
千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学「睡眠時無呼吸症候群」 https://www.ho.chiba-u.ac.jp/dept/respir/sinryo/sas/syosai/
NPO法人日本ナルコレプシー協会「なるこ会 Q&A」 https://narukokai.or.jp/qa.html
MSDマニュアル家庭版「ナルコレプシー」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-脳-脊髄-末梢神経の病気/睡眠障害/ナルコレプシー
てらだ内科皮フ科クリニック「昼間の眠気は病気?原因や対策は?」 https://www.teradaclinic.net/daytime-sleepiness/
四谷内科・内視鏡クリニック「食べたら眠くなる状態が糖尿病と関係する理由」 https://www.yotsuya-naishikyo.com/diabetes-lab/sleepy-after-eating/
本記事は公開されている研究論文やレビュー論文などの情報をもとに作成した一般的な情報提供です。医療行為、診断、治療を目的とするものではありません。食事方法や断食の影響は個人の体質、健康状態、生活習慣などによって異なります。体調に不安がある場合や持病がある場合は、自己判断で食事制限を行うのではなく、医師や管理栄養士などの医療専門職へご相談ください。
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