フィジカルAIニュース(2025/1/25号)
更新日:2026/1/25
エグゼクティブサマリー
テスラFSDの「中国で2月承認」発言は国営メディアが即否定し、データ主権・地図/測量規制・越境移転制限がフィジカルAIの海外展開を左右する構図が鮮明に。MobileyeはヒューマノイドMenteeを約9億ドルで買収計画し、カメラ中心の低コスト化を狙う。Figureは人間動画から全身運動を学習し触覚も強化。Waymoはマイアミで完全自律商用運行を開始。OpenAIは家事タスク向けアームでデータ収集を再開。PointWorldは3D世界モデルでゼロショット実機操作、日本はAI・ロボ国家戦略を策定へ。

1️⃣ テスラFSD、中国での2月承認報道を中国国営メディアが即座に否定
出典URL: Car News China, Electrek, CNEVPost
要約:
マスク氏がダボス会議で「2月にも欧州・中国でFSD承認」と発言したが、中国国営英字紙『China Daily』が「信頼できる情報筋」として即座に否定。データ主権、測量・地図法による地理情報規制、データ越境移転の制限など、構造的な障壁が存在し、フィジカルAIのグローバル展開が地政学的要因に阻まれている現状が浮き彫りに。
2️⃣ Mobileye、ヒューマノイドのMentee Roboticsを約1,350億円で買収へ
出典URL: Mobileye公式, New Market Pitch
要約:
自動運転技術大手Mobileyeが、ヒューマノイドロボットスタートアップMentee Roboticsを約9億ドル(約1,350億円)で買収する計画。カメラベースの自動運転技術をヒューマノイドに移植し、高価なLiDARに依存しない低コストなロボット製造を目指す。ヒューマノイドM&A史上最高額となる可能性。
3️⃣ Figure AI、Project Go-Bigで人間動作ビデオから全身運動を学習
出典URL: Figure AI公式, Figure AI - Figure 03発表
要約:
Figure AIがProject Go-Bigを発表。人間の動作ビデオのみからロボットの動作を学習させる大規模プロジェクトで、従来の上半身操作に加え、散らかった部屋でのナビゲーションや、人・物を避けながらの移動など全身運動の学習に焦点。また、Figure 03は3グラムの圧力変化を検知可能な超高感度触覚センサーを搭載し、クリップのような軽量物の把持や滑り落ち予兆の検知が可能に。
4️⃣ Waymo、マイアミで完全自律商用運行を開始(米国5都市目)
出典URL: Waymo Wikipedia, Programming Helper, Carbon Credits
要約:
Waymoが2026年1月22日、マイアミでセーフティドライバー不在の完全自律商用ライドサービスを開始。Design District、Wynwood、Brickell、Coral Gablesが対象地域で、Miami国際空港への拡張も計画。米国5都市目の展開で、車両規模は約2,500台から2026年に3,500台へ拡大予測。観光・ナイトライフ・多様交通環境が混在するマイアミでの展開は、自律走行の事業的持続性を示す。
5️⃣ OpenAI、秘密ロボティクス研究所で家事タスクに再挑戦
出典URL: Tekedia, Gizchina
要約:
OpenAIがロボティクス分野に再参入し、サンフランシスコの秘密ラボで研究を進めていることが報じられている。全身ヒューマノイドの一括開発とは異なり、「ロボットアーム」を用いた基礎的な動作データ収集に注力。特に「洗濯物をたたむ」などの家事タスクを対象とし、3Dプリント製コントローラー(GELLO)で人間がアームを操作したデータをAIに学習させる手法を採用。物理的な動きを「言語」のように扱い、大規模データセット構築を目指す。
6️⃣ PointWorld論文、3D世界モデルでゼロショット実機操作に成功
出典URL: arXiv:2601.03782
要約:
Stanford/NVIDIAのWenlong Huang、Li Fei-Fei、Dieter Foxらが発表した論文「PointWorld」が、RGB-D画像と低レベル行動指令から3D点群フローで世界変化を予測する大規模3D世界モデルを実現。約200万軌道・500時間の学習データで、実機Frankaアームでゼロショット(デモなし・追加学習なし)操作に成功。0.1秒の推論速度でMPCとの統合が可能で、ロボット基盤モデルが「物理的因果関係を理解」し始めた可能性を示す。
7️⃣ 日本、AI・ロボティクス国家戦略策定を開始(2026年3月末完成予定)
出典URL: IT Business Today
要約:
経済産業省が初の省庁間会議を開催し、2026年3月末までにAI・ロボティクス国家戦略を完成予定。産業用ロボット世界トップの日本が、サービスロボットで後塵を拝している理由を分析し、生成AI・フィジカルAIとの統合、サプライチェーン強靭化、サイバーセキュリティ、人材育成を柱とする。ヒューマノイド/サービスロボット商用化での出遅れを認識した政策転換。
総合考察
中国のFSD否定に象徴されるデータ主権・地理情報規制がグローバル展開の摩擦となる一方、Mobileyeの大型M&AやFigure/OpenAIの模倣学習データ整備、PointWorldの3D世界モデルによる高速予測、Waymoの都市拡大が「低コストで安全に動く」実装競争を加速させ、日本も国家戦略でサービスロボットの遅れを挽回しようとしている。
今後注目ポイント
中国でFSDが進まない本質は技術よりデータ・地図・越境移転の制度設計;各社の現地データセンター/合弁/地図ライセンス戦略を要監視。
Mobileye×Menteeが成立すれば、自動運転の“カメラ中心スタック”がヒューマノイドへ波及し、LiDARレス量産のコスト曲線が変わる可能性。
Figureの「人間動画→全身制御」はデータ規模が勝負;超高感度触覚と組み合わさることで“壊さず速い”作業性能が一気に伸び得る。
Waymoのマイアミ展開は観光・夜間・複雑交通での運用耐性テスト;空港送迎まで広がれば、台数増と収益性の同時達成が焦点に。
OpenAIが家事タスクから再挑戦するのは、汎用ヒューマノイドよりデータ収集と評価が回しやすいから;GELLO由来データの標準化が鍵。
PointWorldは「世界モデル+MPC」を現実速度で回せる示唆;ゼロショット成功が再現・拡張されればロボ基盤モデルの主流アーキに。
日本の国家戦略は産業用の強みをサービス領域へ転写できるかが焦点;規制・安全、サイバー、供給網、人材投資の具体策に注目。

