情緒ある影を求めて
サラバ! 西加奈子 2014
小説の舞台は、ぎらぎらとした太陽の下に
あるイランやエジプトという外国と、陰影に
趣を見出す日本の間を行ったり来たりする。
陽気かつ陰鬱に、感情を揺さぶる物語である。
でもなぜだか清々しい。それは読み進めて
いくうちに感じることができる サラバ!
という言葉にこめられた爽快感かもしれない。
主人公の歩は、母に、姉に、おばちゃんに
翻弄されながらも処世術も身につけて、
傷つき、学び、強く逞しく生き延びていく。
登場人物に内面の振れ幅があるからこそ、
共感できたと思う。この物語に込められた
熱量に圧倒されたし、信じるものをみつける
ことへのメッセージに心を強く打たれた。
小説によって、自身の輪郭が解体され、
つくりなおされる体験は得難いものだ。
テヘランやカイロなどの街の生き生きとした
喧騒に、ぐいぐいと物語の中に引き込まれる。
実際に体を動かして、日常とは異なる遠く遥か
どこかの空間を体験したい思いに駆り立てられる。
この小説には、魅力的な表現が詰まっている。
風景を描写する表現にも、ぐっと心を掴まれる。
ぎらぎらとした強い外国の光があるからこそ、
日本のやわからな光の表現が浮き立ってくる。
「冬の光でも、すべてをつまびらかに
するような朗らかさがあった。」
「日本の光は、影すら遠慮がちに地面に、
横たわり、つまり情緒があった。」
そんな光を探しに、影を求めて、
明日もかけがえのない一日を楽しもう。
