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閑話休題:僕の作った金融モデル “ABC-K6モデル” 。  この算数式で「何が見えて、何が見えないのか」

ここまで、僕はずっと
「偏った確率」
「偶然の連鎖」
「運の質的階層」

という言葉を使いながら、”ABC-K6(以下、K6)モデル”とその算数式の話をしてきた。

少し立ち止まって、
この算数式で、実際に何ができて、何ができないのか
を整理しておきたい。

これは投資指南でも、未来予測でもない。
あくまで、数式と計算構造の話だ。


K6が直接出力するものは「未来の答え」ではない。

まず大前提として

K6の算数式が出力するのは、
精度高い未来の評価額そのものではない。

出力されるのは、

評価額の「時系列」

だ。

しかも一つではない。
同じ条件、同じ数式から、
確率的に独立した無数の時系列が生成される。

言い換えるなら、

K6が作っているのは、
「未来の一点」ではなく、
「未来に至り得た無数の経路のレプリカ」 だ。



プログラミングコード化すると、パラレルワールドが量産される

この算数式をPythonなどでコード化すると、得られる情報量が瞬時に跳ね上がる。
同じ条件のもとで、何千、何万という評価額時系列を生成できる。

それぞれは、
• 独立した単一路であり
• 他の経路と混ざらず
• 内部の計算履歴をすべて保持している

いわば、

パラレルワールドを大量生成し、
その全履歴を同時に観測している状態

に近い。

現実の世界ではあり得ないことだけれど、計算の世界では、それが可能になる。


時系列レプリカから解析できる統計量

この大量のレプリカ時系列を母集団として、
次のような解析ができる。
• 最終評価額(End point)の分布
• CAGR*の分布
• 最大DD**の深度
• DDの発生頻度
• DDの回復期間

*CAGR  
Compound Annual Growth Rate(年平均成長率)

**DD  
Draw Down(資産評価額の下落率)  
※ 僕の文脈では「評価額が暴落している状態」
(=直近ピークから一定率下落した状態)も便宜的にDDと呼んでいる

ここで大切なのは、

これらはすべて
「レプリカ時系列を母集団にした統計量」
だという点。

リアル市場そのものではない。
あくまで、K6という数式が定義した
確率構造の中での話だ。


リアル時系列との比較は「評価」ではない。

次にできるのは、
レプリカ時系列母集団から得られた統計量と、実際の市場時系列母集団から計算した統計量の比較だ。

ただし、ここでやるべきことは、
• 正しい・間違っている
• 当たった・外れた
• 良い・悪い

といった判断ではない。

単純に、淡々と、数値と分布を並べ、分類し、羅列することだけ。

その受け止めや解釈は、年齢や資産規模、ライフスタイルによって変わる。
また、K6の計算式の各パラメータ設定も各個人の感覚で微調整は許される。
だから、レプリカ統計量とリアル統計量の比較の際に、受け止め方は個人によって一様では無いだろう。


K6の一番変わった特徴:内部計算履歴が残ること

K6の面白さは、
単一経路ごとに、「内部計算の履歴がすべて保存される」ところにある。

この性質のおかげで、少し変わったことができる。

たとえば、
• 一定期間をEnd pointとして定義する
• そこで
「バッドエンド(期待外れな成長率、元本割れなど)」
に到達した経路を抽出する
• その経路に対して、独立確率で未来を再連結する
• 再びEnd pointまで計算する
• これを繰り返す

すると、

「一度は失望を感じた未来」が
時間の延長によって救済される確率構造を、内部計算構造を保ったまま観察できる。


レプリカ内のDDは「物語」を持っている

各レプリカ時系列の中では、
• DDがいつ起きたか
• どれくらい深かったか
• どれくらい回復に時間がかかったか
• 連続したか、単発だったか

といった情報が、すべて残っている。

そのため、
• リーマンショック級
• コロナショック級
• 中規模調整
• 軽微な調整

といった史実のDDに対応する定性的または半定量的なラベルを、補助的に付与することもできる。

これは予言ではない。
あくまで、意味対応の補助だ。


それでも、この算数式は無機質だ

ここまで書くと、
この算数式が、何かを教えてくれるように見えるかもしれない。

でも、違う。

この算数式は、
シンプルで、無機質だ。

慰めも、導きも、答えも用意されていない。
計算結果として返ってくるのは、数字だけ。

その数字に意味を見出すかどうか。
その結果を引き受けるかどうか。

それを決めるのは、
いつも数式の外側で観察する僕たち自身だ。


僕のK6モデルは、既存の金融シミュレーションモデルとは際立って異なる立ち位置にある。
既存の金融シミュレーションモデルは、予測精度や妥当性の検証に主眼が置かれていることが多い。

K6モデルも、予測精度が出鱈目というわけではない。
ただし、それは主眼ではない。

では、K6は何をシミュレーションしているのか。

K6が提示するのは、資産運用という時間の中で、可能性として否定しきれない数々の未来のシナリオだ。
それらを通じて、自分自身の感覚や反応を自覚するためのシミュレータ。
そこにK6の最大のユニークさがある。

例えるなら、資産運用のドライビングシミュレータに近い。
将来体験するかもしれない評価額の元本割れなどネガティブな状況を数々の深刻度合いで具体的に提示し、事前に感情の揺れを自覚しながら、イメージトレーニングができる。

さらに事前に、ライフステージに対して複数の計画を立て、自身のシナリオがどこまで合理的か検証可能だ。

K6モデルは、資産運用を行う各個人の感情を映し出す鏡でもある。
鏡の中の自分を、どのように身繕いするか。
それを決めるのは、他人の指示ではなく、いつも自分自身だ。

きっとK6は、資産運用という市場に出かける前に立つ「姿見鏡」なのだと思う。
無機質な算数式が、人間味を持つ相棒になる——
そんな不思議さを、このモデルは持っている。


(追記)
本記事は、資産運用に内在するリスクを楽観的に矮小化したり、特定の金融商品や具体的な投資行動を推奨・指南する意図はありません。


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