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イマーシブシアターPM記

イマーシブシアターのPMとして

先日、あるイマーシブシアターのプロジェクトマネージャーのお仕事をいただきました。

実は、昨今システム開発とイベント制作が似てきているという感覚がありました。そこで、システム開発の強力な知識体系をイベント制作にきっちり当てはめたらどうなるか、というテーマを自分の中で持って臨みました。

性質としては、ほぼアジャイル

ジョインしてプロジェクトを進めていったところ、特に今回の公演は新しい試みが多く、作ってレビューをして修正してまたレビューをする、を繰り返しました。これは完全にアジャイルです。考えてみれば当たり前でしたが、分かってしまえばアジャイルの手法が活用できます。

なるほど稽古もデイリースクラムだなと納得しました。大きく違うのは、演出家がスクラムマスターではなくプロダクトオーナー的であり、かつチームの絶対的リーダーであるところですね。

工程管理としてのPMの出番

しかし、公演日が決まっている点がアジャイルでは対応できません。そこがウォーターフォール型PMの出番です。

また、キャラクターデザインがないと衣装がつくれず、脚本がないと稽古ができない、この関係性もウォーターフォールです。自分はまずクリティカルパスを引き、どの工程がいつまでに必要なのかを洗い出しました。

クリティカルパスはかなり有効

ただし「他の部門へ渡せる最低限の成果物」と「品質を上げた最終稿」は別物で、前者はウォーターフォール、後者はアジャイルの別タスクと考えるべきです。

アサインとしてのPMの出番

本来のスクラムなら、必要なタスクを可視化してメンバーが自発的に拾う(プル)ことが理想です。しかし、0→1のクリエイションでは「そもそも何が不足しているか」に気付く担当者が必要でした。

そのため、全体をシミュレーションし、タスクを発見して明示的にアサインするプッシュ型の介入を行いました。

実際、タスク範囲の認識のずれから巨大なエアポケットが出来ていたことが2度ほどありました。
ただ、それに気付けたのは、自分の演劇制作経験から来てます。逆に、2.5次元舞台や飲食提供など未経験の範囲は他の有識者にお願いした方が良く、PMとしては他のレビュアーのアサインを提案したほうが良かった気がします。

マネジメントは「機能・品質」でしかできない

下記の図はプロジェクト三角形と呼ばれるもので、「納期」「予算」「機能」のトレードオフ関係を示してます。

予算も納期も低い位置で固定されたプロジェクトでは、要求機能が高い場合は低品質になることが示されています。だので、普通は機能制限と品質妥協を行います。

演劇は「持出し」でできている

ところが、演劇ではこの法則を「持ち出し」でひっくり返します。
私物の機材を貸す、自腹で購入する、知人に相談するなどにより、予算を増やし機能を高め、品質を上げることができます。それは担当範囲外だったとしても行われます。

これが当たり前に行われているのは、みな良い公演を作りたいというモチベーションが高く、舞台に人生を捧げているせいです。

プロジェクトマネジメントとしては反則技ですが、こうした主体的でクロスファンクショナルな動きはアジャイルそのものと言えます。

自己組織化環境構築としてのPMの出番

主体的行動のためには指針が必要で、アジャイルではプロダクトオーナーがそれを作ります。

今回の公演では企画書と、簡易まとめ資料がありましたが、それらは情報が多く、また情報更新も間に合わなかったので、仮説キャンバスのような資料を私が用意すべきだったかも、と思っています。

また、コミュニケーション難易度が高くコミュニケーションを取る時間がない点も、解決策が必要でした。

例えば、連れてきた人物からの電話でしか連絡できない人がいたとしたら、他の人からはコントロールが出来ません。
例えば、当日制作が現場に入りした際、緊急対応中の責任者がそこに居ないかもしれません。

ノンコミュニケーションでも自己組織化できる環境構築が必要です。
備品ケースは初見でも分かるようにラベルを貼る、とかそういう工夫ですね。

正確には、これはスクラムマスターかアジャイルコーチの仕事です。

PMがやらないこと

PMとしては、できるだけ価値判断を行わないようにしました。それはプロデューサーや演出家(つまりプロダクトオーナー)が担う聖域です。
ただ、プロジェクトマネジメント以外の実働では自分自身での価値判断が必要になるため、切り替えに少し難儀しました。

また、いろんな管理方法を使いましたが、最後はToDoリスト(バックログ)に落ち着きました。ただし、PMがToDoでマイクロマネジメントをするとアジャイルの良さが消えてしまいます。致命的でなければToDo未消化でもOKとしました。保留した結果、時間が解決したToDoさえもありました。

PMの工数は小さく

とにかく制作の手が足りず、明日までのタスクも今日やらなきゃいけないタスク優先なので後回し、という状態でした。

そんな状況だったので、公演日が近づくほどPMとしての実工数は制作業務に比べると相当小さくなりました。それでも回ったのは、スクラムとして全体が稼働したからだと思います。

総じて、PM担当はスクラムマスターのつもりでいた方が、役割としては整理される気がします。業界用語ではないので、心づもりの話ですが。

尚、PMOとか制作進行とかは、AIやbotがだいぶやってくれそうです。
例えば小道具調達も私が担当でしたが、台本をNotebookLMに上げれば必要な小道具一覧を出してくれるので、助かりました。

これは記録に過ぎない

上記はまだ、ただの記録に過ぎません。
もう一度、経験を踏まえて実践をしたら「舞台のためのプロジェクトマネジメント」なんてnoteが書けそうですね。


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