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〈連作.1話〉神に愛された人

内田(24)という男性は、入社して2年目だった。

職場の先輩で、気さくで面倒見がいい女性の秋野(27)がいた。

内田が入りたての頃、秋野は指導係でもあった。

年齢が離れていない事もあり、休憩時間ではよく雑談を交わしていた。

そんな二人を見た周りからは、仲のいい姉弟のようだという。




ーーー




2023年1月4日



休憩時間、僕はいつものように秋野さんと話をしていた。

一昨日、秋野さんは高校から付き合いのある友人と、初詣に行ってきたと話していた。



「姫平神社で一緒におみくじ引いたんだけど、恋愛運にかかれていた事が去年と違ったんだ」

「去年は待てば吉・・・だったんだけど」

「今年は、迎えありって。表現が大胆だよね」



そう言いながら、秋野さんは笑っていた。

思えば、この人はこんな些細な事でも笑って空気を和ませる事が出来る。

愛嬌がいい人なんだ。

ただ、1年前のおみくじの言葉を覚えていた事に少し驚きだった。

自分ははっきり言って、占いを全くと言っていいほどあてにしていない。

そもそも最後におみくじ引いたのいつだったっけ。

そんな事を考えていた。



初詣の後は友人と喫茶店に入り、話をしていたという。



「その子、子供の頃から相手の守護霊が視えるんだって」

『守護霊・・・ですか?』

「うん。霊は色々存在して、人間だけじゃなくて動物が憑いている事もあるみたい」

『へえ・・・動物もですか・・・』



もしそれが本当なら、自分に憑いているのは昔飼っていた猫だといいな。



『秋野さんには何が憑いている、とか話してましたか?』

「以前は農民の女性だったんだけど、なぜか今はお爺さんで、長髪で髭をたくわえてて、杖をついてるみたい」

「で、全身白いんだって。まるで神様だよね~」

『それ、風貌からして本当の神様みたいじゃないですか。縁起がいいですね』





……いや、本当に神だったらエライ事なんだけど。

話を終えてお互い仕事に戻ったが、一つだけ気になる事があった。

守護霊はずっと同じだという認識があった。
変わったりするものなのか?

まあ、野暮なことはいいか。

そう思っていた。







1月5日




秋野さんがお休みされる事になった。

どうやら昨夜から、体調が優れないらしい。

休むことは滅多に無いだけに、同僚の誰もが珍しがっていた。








1月6日



今日もお休みされた。

疲労がたまってたんだろうか。

そう思いながら、「具合、大丈夫ですか?」とメールを送った。

……いや、そもそも大丈夫じゃないから休んでるんだよな。

しかし、夜になっても返信は来なかった。







1月7日




結局、秋野さんから連絡はなかった。

会社の方にも。

きっと、今流行っているコロナウィルスか、インフルエンザで寝込んでいるんだろう。







1月8日



………

突然だった。


秋野さんが、亡くなった。




今朝、市内にある姫平神社の境内にて発見された。

死因は手に持っていた刃物で、首の頸動脈を切った事による出血性ショック。

つまり自殺だった。

死亡時刻は昨夜とみなされた。





理解が追いつかなかった。


自分が知りうる限り、秋野さんは自ら命を断つ人ではなかった。

しかもなぜ、神社の境内に…。



………


あ……





(全身白いんだって)


(まるで神様みたいだよね〜)






神が守護霊。

本当に"それ"は

神だったのか…?





インターネットで調べたところ、一つの記事を見つけた。

旧約聖書から一部抜粋された、神の憑依について…。






ーーー






神は1日目に依り代を選び

2日目で降臨され

3日目で共鳴し

4日目で反映す

5日目で包み隠し

6日目で主を鎮め

7日をもって眠りにつく








ーーー






背筋がゾッとした。

秋野さんが姫平神社へ初詣に行ったのは、確か…1月2日だ。

仮にその日を1日目としてあてはめるなら、亡くなる日付は合ってしまう。

いや、まさかな…。

神が人間に憑依なんて、あまりにも非現実的な話だ。


………。




そんな時、秋野さんが話していた

ある言葉が頭をよぎった。













(恋愛運に書かれていた事が去年と違ったんだ)















(今年は、迎えありって)








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