7種の焼き菓子/選べることを贈る、ということ
はじめに

今回のお菓子たちは、
ただ種類を増やしたかったわけではなくて。
自由を尊重して送り出してくれたことへの感謝を、
「自由に選べる」という形で贈りたくて作りました。
甘さ、香り、やさしさ、深さ。
そして、少しの遊び心も。
7種類それぞれに違う役割を持たせて、
その日の気分や、その人の好みに合わせて選べるように。
誰かのために作りながら、
同時に、自分の中にあった気持ちを
ひとつずつ確かめていく時間でもありました。
① 選べる、ということ

グルテンフリーの選択肢を入れたのは、
誰かが「食べられない」で終わらず、
ちゃんと“選ぶ楽しさ”まで味わってもらいたかったから。
甘いものは必ずしも必要ではないけれど、
心をふっとほどく時間の中にあるものだと思うから。
「あれなら食べられる」
「これなら選べる」
そうやって、
同じ景色の中にいられること。
それを、ひとつの形として置いてみました。
② 小さな選択の積み重ね

自分の目の前に広がる景色は、
いつだって選び直せる。
誰がどれを選ぶかな、と想像しながら
ひとつずつ箱に詰めていく時間は、
見えないものを見る時間でした。
ひとつひとつは小さな選択でも、
細かい部分にこそ、
その人のやさしさや思いやりが表れる。
(God is in the details)
だからこそ、
細かなところにも気持ちを添えてみました。
③ それぞれのお菓子のこと
【メープルと漬け込みフルーツのパウンドケーキ】


焼き上がった瞬間が完成ではなくて、
時間と一緒にゆっくり整っていくお菓子。
メープルのやわらかな甘さに、
漬け込みフルーツの奥行き。
焼き上がりにシロップを重ねて、
少しずつ中へしみ込ませていきます。
すぐに食べるのもいいけれど、
少し置いたあとに感じるまとまりや余韻も好きです。
見えないところで進んでいく変化に、
このお菓子の静かな美しさがある気がします。
時間を重ねることで、
輪郭がやわらかくなっていくような。
そんな変化も含めて、
ひとつの景色として焼き上げました。
焼いたあとも続いていくお菓子にしたかった。
【焦がしバターと白胡麻のマドレーヌ】


ころんとした貝殻の形の中に、
外側の軽さと、内側の奥行きを同時に持たせたくて
こっそり忍ばせた小さなフランジパーヌ。
見た目にはわからないけれど、
ひとくち食べたときに、
しっとりとした奥行きとしてふわっと現れます。
焦がしバターの深い香りに、
白胡麻のやわらかな香ばしさ。
ぷちぷちとした食感も重なって、
同じかたちの中に少しずつ違う景色を焼き込みました。
見えないところにこそ、
そのお菓子のやさしさや余韻が宿る気がします。
貝殻の中に小さな真珠をしのばせるような気持ちで🫧
焼き上がって割ったときに、
はじめて見える景色も好きです。
【サブレ(紅茶・塩バニラ・チーズ)】


見た目は似ているのに、
噛んだときの景色は少しずつ違う。
ザクッと輪郭が立つもの。
ほろりとほどけて消えていくもの。
見た目と中身が少しずれていることも、
今回大切にしたかったことのひとつでした。
紅茶と塩バニラは、
卵を使わない軽さとシンプルな構造で
ガリッとした食感に。
香りもまっすぐ前に出て、
ベルガモットやバニラ、塩の輪郭がそのまま届きます。
チーズペッパーは、少し違う。
チーズの油分と焼けた香ばしさで、
口の中でほどけていくような軽さに。
強そうに見えて、
いちばんやさしく消えていく存在。
そしてその奥にだけ、
ほんの少しだけ置いたもの🌿
言われなければ気づかないくらいの、
静かな気配。
でも、たしかにそこにいた記憶だけが
あとから残る。
強さとやさしさのあいだ。
見えるものと見えないもののあいだ。
その境界にあるものを、
そのまま置いてみました。
【GF白胡麻ココナッツクッキー】

小麦や乳製品を使わないお菓子は、
「代わりのもの」として見られることが多いけれど、
今回は、
この材料だからこそ生まれるおいしさを
大切にして作りました。
ココナッツや白胡麻の香ばしさ、
軽やかにほどける食感。
シンプルで、失敗しにくく、
日常の中でも作りやすい形にしています。
“選べること”の中に入っていることに、
意味がある存在だと思っています。
④ まとめ
今回の焼き菓子は、どれも少しずつ違うけれど、
強さとやさしさのあいだ、
見えるものと見えないもののあいだ、
はっきりと決めきらない場所に
置いていったものだった気がします。
どれを選んでも、
その時の自分にはこれが正解だと思える。
そんなものを作りたかったんだと思います。

⑤ レシピ
今回の中からいくつか、
日常の中でも作りやすい形に整えたものを置いておきます。
特別な材料や技術がなくても、
そのままのやさしさや香りが
ちゃんと立ち上がるように。
ここにあるのは正解ではなくて、
ひとつの選び方として🫧
【GF白胡麻ココナッツクッキー】
小麦を使わなくても、
ちゃんとおいしさは成立する。
そう思えたときの、
やさしい安心感のようなお菓子です。
香ばしさと軽さ、
ほどけていく食感。
シンプルだからこそ、
そのままの素材の表情が残ります。
材料
卵白 35g
きび砂糖 25g
白胡麻 15g
ココナッツファイン 20g
米粉 10g
ココナッツオイル 8g
塩 ひとつまみ
つくり方
・3cmくらいに、薄くやさしく広げる
・165°Cで10〜12分
【アールグレイサブレ】
噛んだときに、
ガリッと輪郭が立つ食感。
それは、材料の選び方で決まるもの。
卵を使わない軽さとシンプルさが、
香りをまっすぐ前に出してくれます。
材料
無塩バター 60g
粉糖 35g
薄力粉 90g
アーモンドプードル 15g
アールグレイ茶葉 2〜3g
塩 ひとつまみ
グラニュー糖(まぶす用)
つくり方
1. バターと粉糖をすり混ぜる
2. 粉類と茶葉を合わせる
3. 棒状に整え、冷蔵または冷凍で休ませる
4. グラニュー糖をまとわせてカット
5. 160〜170°Cで14〜16分
ザクッとした食感の奥に、
紅茶の香りが静かに残ります。
【メープルと漬け込みフルーツのパウンド】

焼き上がった瞬間が完成ではなくて、
時間と一緒に整っていくお菓子。
少し置くことで、
味も、香りも、まとまっていきます。
その変化ごと楽しめるように。
材料(スリムパウンド型1本)
無塩バター 70g
サワークリーム 30g
きび砂糖 50g
メープルシロップ 25g
卵 2個(約100g)
薄力粉 90g
ベーキングパウダー 2g
シナモン 少々(あれば)
ウィスキー漬けフルーツ 80〜100g
仕上げ用メープル 適量
つくり方
1. バターをやわらかくし、砂糖とすり混ぜる
2. サワークリーム → メープル → 卵の順に加える
3. 粉類を合わせる
4. フルーツを混ぜる
5. 170°Cで35〜40分焼く
6. 焼き上がりにメープルを塗る
カットしたあと、
ほんの少しウイスキーを重ねて寝かせると、
余韻が少し深くなります。
結びに
ここに置いたレシピは、
そのまま作っても、
少し変えても大丈夫です。
その日の気分や、
手に取る人のことを思いながら、
自分なりの“選び方”で
つくってもらえたらうれしいです🫧
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-写真はすべて筆者撮影-
