「あんしんって書いてあった箱」
それは、きれいな箱やった。
角は丸くて、触ると安心しそうな色をしてて、側面には大きく「あんしん」って書いてあった。
中に何が入ってるかは、開けてみるまでわからない。
でもみんな言う。「いい箱だよ」「持ってるだけで安心だよ」って。
ある日、箱がカタカタ鳴いた。
変やなと思って、そっとふたを開けた。
中から出てきたのは、説明書やった。
びっしり書いてある。
これは使える場合があります。
条件を満たした場合のみ有効です。
使えないこともあります。
その際はご了承ください。
あんしんは、箱の中には入ってなかった。
入ってたのは、あんしんの取り扱い説明書だけやった。
箱は軽いのに、説明書はやたら重かった。
それでも箱は言う。
ちゃんと書いてありますよ。
読んでくださいね。と。
でも、本当に欲しかったのは説明やなかった。
困ったときに、ここやでって手を引いてくれることやった。
だからその箱は、棚のいちばん上に置いた。
代わりに、自分で作った小さい袋を持つ。
中身は、時間と体力と、ちょっとの疑い。
かわいくはないけど、今のところ、ちゃんと役に立ってる。
