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書いたものが、誰かの時間になる

何も書かれていない画面を開く。

最初は、まだ何もない。

そこに一文を書く。

一文を書くと、その先にもう一文が見えてくる。

この人は、どこにいるのか。

何を見ているのか。

どうして、その言葉を口にしなかったのか。

考えているうちに、何もなかった場所に、少しずつ世界ができていく。

昨日までは存在しなかったものが、文字になって目の前に現れる。

自分が書かなければ、生まれなかった文章。

創作の楽しさは、そこにあるのだと思う。

書き終えたあと、何度か読み返す。

言葉を直す。

余計な一文を削る。

タイトルをつける。

そして、公開する。

公開ボタンを押すと、さっきまで自分だけのものだった文章が、自分の手を離れていく。

誰が読むのかは分からない。

どこまで読んでもらえるのかも分からない。

それでも、誰かがページを開いてくれる。

文章を読むために、自分の時間を使ってくれる。

それだけで、うれしい。

ときどき、感想をもらう。

自分では何気なく書いた一文を、誰かが見つけてくれることがある。

書いているときには考えていなかった受け取り方を、教えてもらうこともある。

同じ文章でも、読む人によって残る場所は違う。

その人の記憶や経験が重なったとき、作品は自分の知らない形へ変わっていく。

書くことは、一人でできる。

けれど、読んでもらうことで、創作には自分の知らない続きが生まれる。

何もない場所に世界をつくる楽しさ。

その世界に、誰かが立ち寄ってくれるうれしさ。

その二つがあるから、また新しい画面を開く。

まだ誰にも読まれていない一文を、今日も書き始める。






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