二次創作 「秒速5センチメートル」再会編 第2編 (閲覧注意・これは個人の願望による二次創作です)
二次創作 「秒速5センチメートル」再会編 (閲覧注意・これは個人の願望による二次創作です)
僕は新宿御苑を一人ぼんやり歩いていた。
輿水と名前が変わっていた美鳥先生は相変わらず素敵だった。
だったというか、高校時代、彼女は26歳。
今の僕と同じ歳だったんだなと思うと、今、僕は16歳の高校生にどう思われてしまうのだろうか?
夢を亡くして毎日パソコンに向かって日々ノルマに負われるしがないサラリーマンの僕を。
そう考えると、あの高校の、あの世界はなんて貴重な時間だったのかなと思う。あの時は必死に未来を見ていて焦っていたけど。
今は時間があってないようなものだ。
いつも何かに追い立てられてる。
このままじゃ、あっと言う間におじいちゃんになっちまうな。
そんなことを考えてたら夕方になっていた。
まだ桜の花びらが完全に葉桜になる前の4月上旬。
空気がまだ肌寒い。
第2章 美鳥と明里
「しのちゃん!」
「あ、おはようございます!輿水さん!」
「この間のワークショップ成功おめでとう!」
「ありがとうございます!輿水さんのおかげです!」
「そんな、しのちゃんが前日まで一生懸命資料や演出用の紙飛行機しっかり作ってくれたから~!」
そこにフロアマネージャーの西田が割り込んでくる。
「輿水さん、確かにしのちゃん、いや、篠原さん。君のおかげ。なので、正式にうちの社員決定とします!」
「え?私が?ありがとうございます!」
うっすら涙を流す篠原。
「よかったねぇー!しのちゃん!ほんと頑張ったよ!」
篠原こと篠原明里は大学時代からこの紀伊国屋でバイトをしていた。
卒業して正社員になりたいと思っていたが、時代は氷河期真っただ中。
採用人数は少なく、狭き門だった。
それでも明里はあきらめず、この3年間採用されるまで粘り強くバイトをしながらその機会をうかがっていた。
「店長、本当にありがとうございます!たぶん、マネージャーの推薦があったからだと思います!」
「いやいやそんなことないよ~!しのちゃんの頑張りだよ~!」
「ねぇ、今日はお祝いしよう!二人きりで!」
美鳥が言った。
「おいおい、俺も入れてよ~」
フロアマネージャーの西田は悔しがったが、美鳥の前では引き下がるしかなかった。なぜか西田は美鳥には弱い。
夜7時の新宿界隈。鹿児島料理の店に美鳥と明里がテーブルを囲んでビールで乾杯をしている。
「おめでとう!しのちゃん!なんか自分のことのように嬉しいよ」
「ほんとにありがとうございます。これで私もやっと社会人になれたような気がします。えへへ。」
「そうだねぇ。私も25歳だったかな。地元の高校教師になった時、同じこと思った。やっと地に足がついたって感じ?」
「そうですね。でも私の場合、地に足がつきすぎて、埋まっていたって感じです。ほら、薩摩大根みたいに!」
「上手い事言うわね~私は根無し草。根付くところなくて、世界中をふらふらしてたなぁ。」
そこに鹿児島料理が運ばれてきた。
黒豚、さつま揚げ、きびなご、鶏飯(けいはん)、白くま、焼酎
「しのちゃん、焼酎飲める?」
「あっと、少しなら」
明里は少しだけという指を作り、片目で表現する。
「あ、いける口だな!」
美鳥はとっくりに入った薩摩焼酎を明里のグラスに注いで行く。
「あー!ストレートですか!氷入れてください!」
「今日はしのちゃんを酔わすわよ!聞きたいこといっぱ~いあるんだから!」
「ななな、なんですか!?それ?」
美鳥はいつの間にか手酌で自分のグラスに焼酎を注ぐと、ぐびぐびと飲み始めた。
「ねぇ、しのちゃん、いや、明里さん。あなたは恋人いますか?今!」
「えええ!いえ、いません。」
「ほんとに~!嘘だぁ~。私の目に狂いはない!絶対いるでしょ!白状しなさい!誰にも言わないから!」
「いえ、本当にいません。元彼ならいましたけど・・。」
「元彼~!?いつ別れたのさ~」
「ちょっと、酔っぱらてませんか?輿水さん」
「輿水って言わないで、み・ど・り!って呼んで!」
「あ、寄ってる・・。み、みどりさん、いましたよ。彼。別れたのはもうそうですね、12年前です・・。」
「え~~~!」
店内に響く声。
「ちょっとちょっと、いつの彼?12年前なら中学生じゃん!」
「ええ。その時の彼が最後で、そこからずっと一人です」
「まじで~!????」
「その、まじですぅぅ・・。」
「ごめん、じゃぁ、時々思いつめたような表情って、そのなんだ、12年前の彼氏の事、考えていたってことぉ?」
言葉に切れがない。
明らかに酔っている美鳥。
「そういう風に見えましたか?あれ、なんだろう。そんな、あれ?」
明らかに目が泳ぐ明里
「あのさ、わかるの。私には。昔、教え子に同じような表情する子がいて、私の妹が好きな男の子だったんだけど、それが悲しくて、好きって言えないまま、別れたの。その男の子とあなたは同じ表情するの!だからさ!絶対彼氏いるって。だからもしかしたら遠距離恋愛だったのかなって。その男の子も東京に残してきた彼女みたいだったらしいし、私も・・。」
「え?美鳥さん、遠距離恋愛してたんですか?」
美鳥はテーブルにつっぷしていまい、寝てしまっている。
「まさか、こんなにお酒弱い人だったとは!」
しばらくして美鳥は目を覚ました。
そこは貴樹と入った純喫茶だった。
「あれ?なんでここに私いるの?」
「あの、酔っぱらって、それで会計して、タクシー呼んだんですけど、ここの店に行って!って美鳥さんが言って・・・。」
「え?じゃぁ、しのちゃん、お金全部払ってくれたの!m(__)m!」
「いや、全部、美鳥さんが払いました。私はタクシーからここまで介助したぐらいで・・・。」
「あちゃ~全然覚えてないてごわす!すんもはん!」
ははは!
2人は大笑いした。
「なんか鹿児島弁の美鳥さん、不思議。でも新鮮!」
「そうだわね!(笑)いやいや、酔うとでるもんだね~」
そこにコーヒーが運ばれてきた。
「ねぇねぇ、さっき言った遠距離恋愛だけどさ、しのちゃんは中学どこだったの?」
「私は栃木なんです。栃木の岩舟町。東北自動車道の岩舟インターがるところで超田舎なんですけど、万葉集にも載ってる有名な和歌がある三毳山(みかもやま)が近くにあるんです。」
「え、でも、彼氏はどこにいたの?同じ中学だったんじゃないの?」
「その、同じ中学ではなかったんです。小学校が同じで、そのまま同じ東京の中学に進学するはずだったんだけど、急に親の転勤で私だけ栃木に転校して、彼はそのまま東京の中学に」
「え?じゃぁ、その彼氏って、小学校から付き合ってたの!?」
「はぁ、まぁ、そういうことになります」
「ちょっと意外!なんかしのちゃん、超おませな子だったんじゃない!」
まだ酔いが醒めてないのか、大きな声になる美鳥。
「あ、でも小学生の時は、ぜんぜん意識してなくて。たぶん、転向してからしばらくしてからだと思います。彼もそのあと転校したんです。」
「どこへ?」
「鹿児島です。種子島。あのロケットを打ちあげる」
「ぶー!」
思わず、コーヒーにむせぶ美鳥。
「種子島って、私、種子島よ!鹿児島県だけど、本当は種子島の人間!じゃぁ、その彼氏は種子島に中学生の時に引っ越してきたの?」
「はい。中2からです」
予感が予感ではなく確信に変わった。
「まさか、そこ男の子、遠野貴樹君じゃないよね!?」
「え。なんで?なんで、その名前」
明里の目が突然うるうるし始める。
「じゃ、貴樹なの!」
明里は雷にあったようなそんな虚ろな目から、大粒の涙が零れ落ちる。
「だって、その子と先週会ったんだよ!ここで!」
「嘘・・。まさか、そんな身近に彼が・・。」
「ちょっと、落ち着こう」
美鳥は両手を明里の肩に置くが、一番落ち着ていないのは美鳥の方だった・
「落ち着け~落ち着け~私~!」
「さすがに酔いが醒めたよ~。しのちゃんの思い人が貴樹君だったなんて」
「思い人?」
「だって以前言ってたでしょ?私が、ほら、図鑑を眺めていたあなたに、その月の写真さっきら観てるけど、なにか思い出でもあるの?って聞いたらさ、思い出ではなく日常なんですって答えたでしょ。その時はわからなかったんだけどさ、貴樹君のことだとしたらわかる。だって貴樹君はこう言ってたの。月だけは変わらない。どこにいても、どこで見てもって。私、痛いほどわかったんだ。私も世界中を旅してた時、寂しい時はいっつも月を見てた。ほんとに同じなんだよ。お月さんは!」
「私、静岡だったんです。元々の所が。そのあと、小5で東京に転校して、貴樹君に会ったんです。貴樹君も転校生で、彼は長野から。それで、一度、一緒に月を見たんです。それで貴樹君が、美鳥さんと同じこと言ったんです。同じだね、お月さんはどこで見ても。って。」
「いやぁ~、ませてるね~。それって小学生の時でしょ!私なんて30歳過ぎてもそんなロマンチックなこと言われたことないよ!貴樹、こんな子にメール毎日送ってたんだ!なんで別れたんだい?馬鹿野郎だな、貴樹は!」
「馬鹿じゃないですよ、貴樹君は。私です。馬鹿は。」
明里はそのまま下をうつむき、黙ってしまった。
「ご、ごめん、その、悪い!ごめんね」
2人の間に沈黙が走ったあと、美鳥がぼそっと言った。
「会ってみる?貴樹君に」
明里は、しばらく考え込んでいた。
続く
3話ぐらいで完結しないとね(笑)
