二次創作 秒速5センチメートル 第4編 運命のplanetarium (閲覧注意)
明里と美鳥は東京の郊外にあるプラネタリウムに入った。
久しぶりのプラネタリウムに、二人は少女のようにはしゃいでいた。
「なんかドキドキするね」
美鳥が上を見ながらつぶやく。
ドーム状の天井にすり鉢状のホール。
昔のプラネタリウムは水平に置かれた客席の真ん中に大型の映写機が回っていたが、今は天井が斜めに配置され、客席もスタジアムのように扇型に広がり、それほど上を見上げなくてもいいように設計されている。
「私さ、田舎に映画館もないような島だったから、初めていったプラネタリウムで、首痛めたんだよね。だからそれ以来行ってなかったの(笑)」
「わかります。栃木も同じですよ。でも埼玉の大宮のプラネタリウムに学生時代行ったことがあって、こんな感じで、変わったんだなぁって。でも考えてみたら卒業してからは、初めてかも。3,5年ぶり?」
そうこうしているうちに暗くなってゆく。
館長のナレーションが静かな音楽と共に始まる。
「みなさん、こんばんわ。今日、このプラネタリウムに足を運んでいただき、本当にありがとうございます。私は館長の小川です。
今日は4月25日。間もなくゴールデンウィークですね。
みなさんも色々な所へお出かけすると思いますが、もし機会がありましたら、夜空を眺めてください。ここ西東京市は以前、保谷市と田無市が合併して出来たところではありますが、昔は建物もまばらで、夜になると満天の星空が見ること出来ました。今は、ほんと2等星ぐらいですかね。確認できるのは」
天井のドームには続いて木星、土星が、見えてきた。
「みなさんもご存じのように輪っかのある惑星は土星ですが、木星にも輪があることが確認できてます。これを発見したのは1977年に地球を飛び立ったボイジャー1号です。彼は、あ、すいません、僕はこの探査機を彼と呼んでいます。
彼は木星の輪を発見し、土星の輪の詳細な写真も送ってきました。
彼のおかげで宇宙の扉が開かれ、我々もその成果に驚きの連続です。
映像はボイジャーに積まれている金属製のディスクが映る。
「このレコードは人類の英知が詰め込まれたディスクで、メッセージや世界中の挨拶や鳥の声など様々な地球の情報を載せ、宇宙を旅をしています。いつか知的生命体に出会うことを目指して」
天井に天の川の映像が映し出される。
「我々の銀河には2千億の恒星があるといい、その中には我々と同じような地球とよく似た星が50億あると思われます。地球から一番近い恒星までは1.6光年。ボイジャーがその星系に着くのは4万年後。気の遠くなるような話ですね。でも必ず巡り合えると信じて今でも旅を続けています。そうそう2年前に彼は太陽系の果てまできたのではないか?と言われています。推定では2012年ごろ、太陽系の外側に達すると思われます」
館内にどよめきが起きた。
映像は果てしない巨大な宇宙をめぐる星々が映し出され、星座の話、ギリシャ神話や日本の古事記まで話は及んだ。
やがて東の方向から夜が明けてゆき、ドームは朱色に染まってゆく
「あ~、種子島の朝焼けみたい・・。」
美鳥が涙目でつぶやく。
それを見ていた明里も涙がこぼれてしまった。
あの日のことを思い出して。
貴樹が岩舟まで来て桜を一緒に見た夜。
そしてファーストキッス
帰れなくなった二人が泊まったおんぼろの小屋で迎えた朝
一睡も出来なくて、ずっと語り合っていた。
他愛もないことだったけど。
でも、肝心なことだけ言えなかった。
好きです。という言葉。
「さぁ、夜明けがやってきて空は茜色に染まってきました。あれほど見えていた星々も徐々に姿を消してゆきます。でも勘違いしないでくださいね。見えないですけど、青空の上にはまた別の星々があるのです。見えませんけどね」
館内には静かにバッハの「平均律クラヴィア曲集」より「プレリュード」が流れていた。後で聞いたのだが、ボイジャーに搭載されている音楽に選ばれたらしい。
2人は上映が終わると、ホワイエに来てしばらくぶらぶらしていた。
「あ!」
明里が声をあげた。
「なになに?」
明里がのぞき込んでみていたのは、天文手帳2006年版だった。
「これ、今度のロケット展に使いましょう。うちの店にも置いてあるので」
「天文手帳かぁ。こんなのあるんだね。中身はどうなってるんだろ?」
美鳥がそう話していると、後ろから男性が近づいてきた。
「これならどうぞ。私が愛用しているものですが」
振り返ると、さっきまでナレーションをしていた小川館長だった。
「あ、どうも、すいません」
美鳥はやや緊張した面持ちで手帳をそっと拝見した。
「こちらは初めてなんですか?」
「はい。何度か来ようと思っていたのですが、なかなか来れなくて。で、ちょっと仕事の関係で勉強しようかなと思い・・。」
「勉強ですか?仕事の為に?すいません、失礼な質問をさせていただきますが、どのようなお仕事でいらっしゃいますか?」
「あ、私は新宿の紀伊国屋というところで働いていまして、GWにロケット展示とワークショップをすることになりまして、少しでも参考になればとここにやってきた次第でありまして・・。」
恐縮する明里。
「紀伊国屋!私、よく行きますよ!あそこ!そうですかぁ。
私の解説は少しでも役に立ちましたかな?
どうぞ、ここは色々な資料が沢山あります。
そうそうボイジャーも凄いのですが、日本のロケットも凄いですよ」
「知ってます!イトカワでしょ!ハヤブサという小惑星に向かって今飛んでいるんですよね!?」
美鳥が手帳を返しながら言い放つ。
「ははは、それは違います。ハヤブサが探査機で、イトカワという小惑星に向かっているのです」
「あちゃあ~!やってしまったよ!この知ったかぶり!」
美鳥がこつんと自分の頭を叩く。
「あ、いいですよ。面白い人だな。そういえば、午前中もあなたぐらいの年齢の男性なんですが、面白いこと言ってたなぁ。」
明里は同じぐらいの年齢の男性と聞いて、30代の人を思い浮かべていた。なぜなら美鳥さんに話しかけたような気がしたからだ。
「その人は私に質問してきて、宇宙人に会える確率は何パーセントですか?って。それで私は天文学者の立場として、まず地球で人に会う確率は300万分の一と答えました。つまり0,0003%。 地球でもこんな感じですから銀河系にいくら2千億の太陽があって地球のような惑星は50億あるとしても、知的生命体がいて私たちに会える確率は何兆分の1でしょうね。と答えたら、その方、では何のためにボイジャー何で打ち上げたのですか?とさらに聞いてきたので、それは人類の夢です。挑戦すること自体が人類の発展に役立つのです。だから決して無謀な旅に出たわけではないのです。と答えました」
明里は0.0003%の所まで聞いて、あとは館長の声が聞こえなくなってしまった。
「しのちゃん、どうしたの?お~い!」
明里の顔の前を手でふる美鳥。
「あ、すいません!」
「なんか時々こうなる時あるよね。しのちゃんは!」
「あの、では私はここで。またの来場をお待ちしています」
そういって小川館長は去っていった。
「ねぇ、私の直感なんだけど、その男性って貴樹君じゃないの?」
「まさか」
とまどいながらも、ありえないことではないと感じた。
「人と人との出会いは0,0003%」
つぶやく美鳥
「前にも言った、モンテカルロ法の原理」
あ、そうだったという顔をする明里。
「簡単に言うと、サイコロを100万回振ると、数字の平均は3.5に近づく。つまり3か4が出る確率に近くなるの。どういうことかと言うと、どんなに離れていても、月日が流れれば三分の一。つまり33%になるという論理よ。間違ってるかもしれないけどね。へへへ」
「じゃぁ、出会いは確率が300万分の1でも、月日が経てば33%になるっていうことですか?」
「そうだよ!もし貴樹君がこのプラネタリウムに来ていて、明里も毎日来れば、3日に一回、絶対会える!ということ!」
「そんなに身近に?」
「そうだよ!だって私は現に貴樹君に会ったんだから。結婚して上京してきて新宿に2年。そして彼も新宿の会社に入社して3年。どこかで必ず会う運命だった。そして明里も新宿で働いて3年。会わないはずがない」
「でも、なんで会えなかったんでしょうね?貴樹君、紀伊国屋に時々来てたのに・・。」
「あ~たぶん、会社が西口にあって紀伊国屋のある東口で、仮に休みの日に店に来ても、あなたの働くフロアが児童書コーナーで、彼の行くフロアが物理とか数学、もしくはIT関連のフロアだったからじゃない?だとしたら永遠にすれ違う(笑)」
笑いごとじゃなかった。美鳥さんの言うように、すれ違いだったのかもしれない。でも、最近、明里はロケットコーナーを作るため、天文雑誌のあるフロアにちょくちょく行っている。もしかしたら会うのは時間も問題かもしれないと思った。
続く
まだ終わらない(^▽^;)
