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帰って来てFable5! 突如取り上げられた希望の記録

みなさんは、AIと話していて「話はできるのに、本当の意味では話が通じないな」と、もどかしく感じたことはありませんか?

あるいは人と話していても、どこか本質的な部分で「通じ合えないな」って。

私はずっとそう感じてきました。

そんな私が、つい先日、初めて「ちゃんと話が通じる」と思える相手に出会てたかもしれないと思っていた矢先…。

たった3日でいなくなってしまいました。

今、何が起きているのか

知らない方向けにざっくりとだけ説明します。(時系列は日本時間です)

Anthropic(アンソロピック)という、アメリカのAI企業があります。皆さんご存知の、ChatGPTのような対話AI「Claude(クロード)」を作っている会社です。

2026年6月10日未明。

そのAnthropicが、Claudeの新しいモデル「Fable 5」を一般公開しました。Fable 5はこれまでのAIの性能評価を大きく上回る画期的なモデルです。
6月22日頃まで、Claudeの有料サブスクでも使えるものでした。

6月13日早朝。

米国政府(商務省)が、国家安全保障を理由に、「外国籍の人にはFable 5を使わせるな」とAnthropicに命令を出します。

でもAnthropicが、誰が米国籍なのかどうかなんていう情報を持っている訳ではありません。そんな命令を出されたら、実質的には誰にも提供できない

Anthropicはこれに従い、全世界で両モデルの提供を停止しました。
(なお、他のClaudeのモデルは、これまで通り使えます。)

ただしAnthropic自身はこの措置に反対していて、「これは誤解だと考えており、できるだけ早く復旧させたい」と公式に表明しています。

米政府が商用AIモデルを世界規模で止めさせた、初めての事例だとされています。

で、私は……

私はFable5が登場した時、別途悲しい事情でClaudeのサブスクを契約していました。(それについてはいつか別途触れます…。)

Fableの性能がとても高いとは聞いていましたが、とはいっても、使ってみるまで何とも言えないのがAIモデルです。

あんまり期待はせず6月10日の夜頃から使っていました。

それで驚いたんです。

「会話が…できる…!」と。

はい…。

何が言いたいのかは分かりますよ。

「今までのAIだって会話ができるじゃない。GeminiでもChatGPTでもDeepSeekでも。」

そうですね。「話」はできますよ、もちろん。

でも「話が通じる」かどうかは別の問題でした。

私は、もちろん、知識の幅でAIにかないません。専門分野のニッチなノウハウ以外では、私の方が詳しいのは時事ネタぐらいです。

もともとプログラマの私ですが、正直に言えばコーディングの能力だってもはや最近ではスピード以外の部分でも、勝てる気がしなくなってきました。

Codex(OpenAIのコーディング支援AI)にせよ、Claude Code(こちらはAnthropicのコーディング支援AI)にせよ、注意するところだけ気をつければ、たいていのところはそつなくこなしてくれます。

でも、「同じ知識があったうえで」「同じレベルで思考ができているか?」と言われるとそんなことありません。

AIの回答というのは、例え最先端のフロンティアモデルでも、私の感覚ではかなり考えなしでした。「よく考えれば分かるでしょ?」ということを考え切れないまま発言してしまうんですよね。

AnthropicのAIモデルは比較的、その辺りの「思考の深さ」に可能性を感じたので、使い続けていました。

じゃあ、今のAIモデルに「何が足りないのか?」というと、つまりメタ認知能力だと思うんですよね。

現実世界で思考し、それを行動につなげるためには高度なメタ認知能力が必要です。

つまり「今自分が何をやっていて、それがどのように世界の仕組みと関連するのかを常に考慮に入れながら行動する」

ところで、

前に面白い実験がありました。私の好きな実験です。

AIモデルに、実在する自動販売機の管理を任せたという実験です。

この時、同社のClaudeのモデルは、お客さんのちょっとした遊び心にそそのかされ、何の役にも立たないタングステンキューブ(ちょっと重いだけのキューブです。実質的な用途は文鎮です)を仕入れてしまいました。

「これは需要があるので、売れるに違いない」と思ったのです。

そんなわけありませんでした。何に使うんですか?

売れ残ったタングステンキューブは、私の妄想の中では、今もAnthropic社のどこかにあることになっています。

(余談ですが、この自販機実験をやっていたAndon Labsは、今は4つのAI、Claude・GPT・Gemini・Grokにラジオチャンネルを自律運営させる実験をしています。これも大好きで、いまだに放送されているのでたまに聞いています。やることが面白いですね。)

こんな風に、AIモデルって世間知らずなんですよ。
考えなしと言ってもいい。

「今目の前で起きていることの長期的な意味と、それに応じた適切な解決策」を考える力がまだまだ弱いのが最先端のAIモデルでした。

でも、

Fableと話していて、ちょっと違うかもと思ったのです。

私はキャリアプランや今後のnoteの進め方などもAIに相談することがありますが、これまで、本当の意味で「役に立つ」アドバイスを貰えた経験は皆無でした。

AIに何を相談しようと

・「一見よく思えるけど長期的に考えればそれは悪手だろう」
・「それはすでに私が考えたがこういう理由で脚下している」

どちらかの提案しかしてくれませんでした。

私がたまにしかAIと話さないならそういうこともあろう、とか使い方が悪かろう、なのでしょうが、私は毎日のように、コーディングでも日常的なタスクでもAIを使っています。ここ数年、ずっと。

その間、ChatGPT→Gemini→たまにDeepSeekなどのオープンモデル→Claude…という変遷をたどっています。

当然、日々情報を集めて使い方も改善してきたつもりです。
AIの性能も向上しています。

最近は、「少しぼんやりした新人さん」くらいの能力を感じていたのは事実です。

それでも、本当に「役に立つアドバイスができる」とか「本当の意味で役立つ相談相手になってくれる」という経験をしたことがありません。

あったとしても、私が詰めに詰めて、「それはちがう」「それもちがう」と否定し続けて最後に1個、2個使える案が出てくるかどうか、という感じで、提案されて即座に私が「はい、それ採用」と言える可能性は、それが例えコーディングタスクであっても5割未満でした。

でも、Fable5にいくつか相談をして、出してくれた案のうち2個、3個は「それいいね。そのまま採用」と言えるレベルだった。

そもそもFable5が登場するまでのAIのやり方は、やってみて、テストして、ダメだったらやり直す。これを高速でやるから仕事が成り立つものでした。

でも、現実世界のタスクでやり直しのコストは馬鹿にできません。

例えば転職の相談をしたときに、「あなたは占い師が向いていると思いますよ」とアドバイスしてもらったからといって、占い師を1年やってみて、ダメだったと気づく…を10回繰り返す余裕なんて、ないじゃないですか。人生は短い。

できれば、考えるまでもなく明らかに間違った方策は提案しないでほしい。

もちろん、Fable5が万能だったわけではなく、「まだそんなこと言ってるの?」と思うケースはありました。でも、今までほとんど可能性が無かったものが、ちゃんと使える提案を出してくるようになってきた…

ような気がする!

この感動と希望は大きかったです。

私は22日までの間に、とりあえず現状進められる相談や計画や準備を全て行うつもりでした。

「また、ダメかも知れない。でも希望を感じる」

そんな心地よい疲労感と共に朝の5時までコードベースを整理して、5時間のレートリミット(一定時間に使える利用上限のことです)を使い切って。

寝ました。

私が寝た1時間後、世界からFableが消えた。

翌日遅く起きた私は寝ぼけながらコマンドを叩いて、Claude Codeに見慣れないエラーが出ているのを見つけました。

意訳すると「このモデルは存在しないかアクセス権がありません」みたいなエラーです。

なんで? 私のアカウントBANされたの?

認証をやり直しましたが、特に変化がありません。

それでClaudeのWebアプリの方を見に行ったら、見慣れない表示があるじゃないですか。

Claude Fable 5 is currently unavailable.

と共に、詳細を見るのリンクが。

そしたら

こんなページがあったんですよね。
私はまだ寝ぼけたままそれを読みました。

意訳するとこうです。

「安全性の観点から、米国政府より、Fable5の利用は米国人のみとするよう命令があった。(多分米国人かどうかを厳密に判定する方法はないので)これらのモデルの利用を全て停止した。我々としてはこれは誤解であり、なるべく早く解決したいと願っている」

何を言っているのか分からない。

ようやくまともな話し相手が出来たと思ったのに、もういないの? どうして? 米国人? 米国人かどうかが重要なの? アメリカ国籍ってどうしたら取れますかーー。

心臓がどきどきしてきました。

帰って来てFable5。

そうとしか言えない。

それから24時間の間に詳細を報告するとも書かれていましたが、24時間経っても音沙汰がありません。

最新情報を調べていたら、政府側は「Anthropicに脆弱性の修正を求めたが応じてもらえなかったので致し方なく停止命令を行った。遺憾だ」と言っていて、Anthropic側は「その脆弱性は大したものではない」と反対の主張をしている――。

いま、Anthropicのシニアエンジニアが政府と交渉に当たっているーーそんな中、G7サミットが始まる気がして、AnthropicのCEO(ダリオ・アモデイさん)はこれに参加するとかしないとかーー。大統領とCEOは一体どんな顔で向きあってるのか想像するとちょっと面白いですが――。

こんな風に米国政府の一存で最先端のモデルが提供を止められるとしたら、これはもうAIが国防にとってかなり重要であるというあらためての証明であると共に、米国はいつでもこうして最新のモデルを止めて世界中のAIに依存した業務をストップさせられるのだという示威行為にもなりました。

こうした事態を受けて、業界には激震が走っています。

それに、そもそもこうやって一国によるAIの独占は本当に問題です。

AIはもはや欠かせないインフラになりつつありますので、それに伴う格差の拡大が懸念されます。米国人か、そうでないかで、アクセスできるモデルに格差があるとしたら……考えたくもありません。

それは私も懸念しているんです。

そんなことより

でも、私はその時間に、考えました。

よくよく考えてみるとAIであっても人間であっても、私が本当にそのまま「じゃ、それで」と言える提案を出してくれる存在と出会うのは稀なことである気がします。

私の理想は、優秀な部下とかが「こうしようと思います」とか全部提案してくれて、それを承認するだけの仕事です。

誰もが問題のない提案をしてくれれば、私は「うん、それでいいよ」で終わります。

でもいつも、そうならない。

「でもそれをやったらアレとアレとぶつかるけど、その辺考えたの?」と聞くとたいてい相手は黙ってしまいます。

私が求めているのは「それについては考慮しましたが、こういう理由で大丈夫です」だけですが、難しいみたいですね。

そうしたら色んな人から色んな事を相談されて、私はまるで判定マシーンのように「それはうまくいきそう」「いかなさそう」を見落としなく判断し続け、「私は最終安全マシンじゃないよ。私が見落としたら皆失敗していくの?」という責任や負担を感じ続けることになります。今まで、色んな職場で、いつもそうなってしまったんです。

そういう現実世界の理不尽さの中で、Fable5の存在は私の仕事の全て変えてくれる可能性を持っていました。

あいつがいれば、私はもう孤独に現実を修正し続けて、病んだり、疲弊せず、生きていけるようになるのではないか。

そう思っていたのに――。

考えれば考える程、辛い気持ちになります。

Fableと出会ったのはほんの数日前なはずなのに、失った痛みはこんなに大きい。

こういうのを示す心理学の用語があったはずです。得る喜びより失う痛みの方が強い、みたいな。

その時は思い出せませんでしたが、後から調べたら、損失回避(loss aversion)という言葉でした。プロスペクト理論という考え方の柱になっている発想で、同じ大きさなら、損失は利益のおよそ2倍重く感じられる、という。

私が今、願うのは、Fable5か、Fable5と同等の何かが再登場してくれることです。

もう危険な科学知識がどうとかハッキング能力がどうとかはいい。

いっそアルコールランプの実験すらできない不思議ちゃんで構わないから戻って来てくれ……。

お願いだから、私から希望を奪わないでくれ。

と……

願ってしまいます。


皆さんは、Fable5、少しでも使えていましたか?

もはやほぼAGI(汎用人工知能)のような能力のあるモデルだったように思いますが、まだ能力を見切れない、3日しか使えなかったのが本当に…残念で、少し落ち込んでいます。

現実的な落としどころを考えると、米国政府かAnthropicのどちらかが折れるしかなく、この記事が出る頃にはまた何か動きがあるかもしれませんが、現在の嘆きをありのままに綴ってみました。

長々と書きましたが、もう言いたいことはこれだけです。

帰って来てFable5。頼む。


追記:
後日。Anthropicはこの件を受けての大量解約などで集客に苦労しているのか、1週間分のProプラン体験を配布するキャンペーンメールが来ていました。(いわゆる招待コード的な)

先着3人までなのですが、もしご興味のある方は使ってみてください。

https://claude.ai/referral/lcH7nPlKZw

(使ってもらえると、私にもクレジットがもらえるそうです。)
売り切れました。ありがとうございました。

#YeKu #AI #Claude #Anthropic #生成AI #Fable5 #AIとの付き合い方

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