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BLと異世界転生モノに共通すること

 BL作品と小説家になろう(※以下、なろう)の異世界転生モノは似ている。この記事では、どこがどう似ているのかについて一考察を述べたいと思う。

 BL作品はカップリングを様々変更しても、繰り返し、何度も何度も、同じようなテーマ、同じようなストーリーを扱うことが多い。

 なぜなら、それでも売れるから。

 少年漫画や一般商業漫画で同じようなストーリーを描き続ければそのうち飽きられるだろう。しかし、BL作品をよく見る層はそんなこともなく、似たようなテーマの作品を買い続ける。漫画なら特定の作者の「絵が好きだ」とか「セリフ回しが好きだ」、という理由はあるだろうが、それでも不思議なほど「繰り返し似た話を読みたい」というニーズが高い。

 同じように、なろう小説も繰り返し少し味付けを変えた「異世界転生モノ」が流行り続ける。「歴史小説も読みたい」「ホラー小説も読みたい」というニーズを上回って、「異世界転生モノ」を繰り返し読み続けたい層がいるのだ。

 BL作品でもなろう小説でも、「繰り返し同じテーマで読みたい」というニーズの裏には「解消されないフラストレーション」があると私は考える。

異世界転生モノ

 例えば、「異世界転生モノ」の裏にあるのは現実への無力感だ。現実がつまらない。活躍できず、見下されてばかり。いっそ異世界に転生して、チート能力を得てチヤホヤされたらどんなにいいだろう。

 特に男性はマッチョな社会圧が強い。強くあれ、お金は稼いでナンボ、泣くな動じるな、女にはモテて当然。あれやこれや。

 でも成功できる人は現代社会において、一握りだ。

 もっと若かったら、もっと美しかったら、もっと強かったら、もっと頭がよかったら、いっそ女だったら、自分は勝ち組になれたのに

 そういう叶わない願望を描き、心の気持ちいいところを刺激するのが「異世界転生モノ」だと考えている。

BL作品

 BL作品は広範に渡るので「王道的な」という但し書きがつく(何が王道かは個人の判断による)が、どうも「恋愛」や「愛されること」に対するフラストレーションで読まれているような気がする。

 少女漫画じゃダメなのか? と思う方もいるだろう。
 でも少女漫画では、感情移入に問題が生じる場合がある。

 第一に、当然ながら、ほとんどの女性は少女漫画の主人公ほどには美しくない。

 男性向けの漫画では主人公をフツメンにするとか、イケメンだけど女に興味がない、という形で無用な嫉妬を生まないようにしているが、女性向けの場合、そうもいかない。

 女性は子供の頃から容姿を比べられるので、どうしてもルッキズムに支配される。だから、容姿にすぐれない主人公が主人公の漫画は特殊設定だ。そういう漫画はタイトルに「ブスが~」などとわざわざつける。残念ながら、美しくない主人公は普通じゃないのだ。

 だが主人公を美しくすると、自分との落差に引け目を感じて感情移入できないことがある。主人公を「友達」のように見て物語を楽しむことはあっても、自分自身の投影として楽しむことができないどころか、思春期だと「どうして私は彼女のようにきれいじゃないんだろう」と落ち込んでしまうことすらある。

 そこをいくと、BL作品は「安心して読める」。主人公がどれだけイケメンでも、女性ではないから比べて引け目を感じないし、美形だから同じく美形のヒーローに愛されても当然と思える。

 また、主人公が男性であれば、女性特有のしがらみからも距離を置ける。

 常に容姿の優劣を比べられること、画一的な女性らしさを押し付けられること、女性のコミュニティにおける陰湿さ、力で負けて傷つけられる恐怖、望まぬ妊娠、生理や出産の痛み苦しみ。女であることには不自由が多い。

 でもBL作品の主人公に感情移入している間は、絶対に自分は傷つかない、安全なところから恋愛を楽しむことができる。

 実際、BL作品で恋愛しているのは本質的に、女性同士だ。正確には、「女性が思う最高のいい男」と「男性の顔をした女性」。

 相手役は現実の男ではないので、絶対にソファに寝転がって鼻をほじりながら屁をこいたりしない。主人公に至っては、口調と体が男性なだけで、言ってることは少女漫画の主人公と大差ない。

 王道的的なBL作品は、少女漫画の閉じた世界観とよく似ている。多くの場合、本物の同性愛者の恋愛を描きたいわけではない。すべては女の子の夢で、「こういう風に愛されたい」という願望の投影なのだ。そこに現実の男はいらないし、いない。だからある種のファンタジーとして、BLが好まれるのではないか。

まとめ

 書いてきた通り、女性が「丁寧に愛されたい」という強烈なフラストレーションを抱える限りBL作品は繁栄するだろうし、(主に)男性の「認められたい」というフラストレーションがある限り異世界転生モノは流行り続けるだろう。

 私はこういった繰り返しのコンテンツを、常に心の同じ部分を気持ち良くするマッサージ的コンテンツだと考えている。なろう小説のアニメ化などを見ると、また異世界転生かーと思うこともある。

 でも、それがないと生きていけないという方の気持ちは分かる。もはやエンターテインメントとして楽しむ範囲を超えて、窮迫する現実の苦しみを癒すために、心の薬としてこれらのコンテンツが役に立つときがある。


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