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障害年金「不支給増」は本当だった。厚労省の報告書から見えた、もっと根深い問題

「障害年金の審査が厳しくなり、不支給とされる人が倍増している」

2025年4月、共同通信社が報じたこのニュースに、胸がざわついた方も多いのではないでしょうか。特に、ご自身やご家族が障害と向き合っている方にとっては、まさに死活問題です。

この報道を受け、厚生労働省は実態調査を実施。そして6月11日、ついにその調査報告書が公開されました。

「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表します(厚生労働省)

「結局、不支給は本当に増えていたのか?」

「もし増えているなら、その原因は何だったのか?」

この報告書はPDFで誰でも読むことができますが、専門用語も多く、読み解くのは少し大変かもしれません。そこでこの記事では、報告書のポイントを分かりやすく解説し、そこから見えてきた「本当の課題」について、私の考えを述べたいと思います。

これは、決して他人事ではない、私たちの生活とセーフティネットの話です。

以下、私が記載する情報の根拠は上記プレスリリースの「令和6年度の障害年金の認定状況についての 調査報告書(2025/6/14アクセス)」とします。

厚労省の調査報告書、その中身は?

結論から言うと、不支給の割合は明らかに上昇していました。

今回の調査は、令和6年度に申請された新規裁定(初めて障害年金を申請するケース)から1,000件を無作為に抽出し、分析したものです。

その結果がこちら。

・1級 109件(10.9%)
・2級 539件(53.9%)
・3級 221件(22.1%)
・手当金 1件(0.1%)
・非該当(不支給) 130件(13.0%)

1.集計結果(令和6年度)
(1)新規裁定 1,000 件及び再認定 10,000 件の内訳

注目すべきは、非該当(不支給)の割合です。

令和5年度の不支給率は8.4%でした。それが13.0%に上昇しているのです。

私が以前の記事「【障害年金】不支給が倍増ってホント? データから見える現状と私たちのこれから」で解説した通り、ここ数年(令和2〜5年度)の不支給率はおおむね8%台で安定していました。

報道にあった「倍増」とまではいかないものの、この上昇率は異常です。何かが起きているのは間違いありません。

さらに深刻なのは、その内訳です。

診断書の種類別に見ると、精神障害の不支給率が突出して上がっていました。

・精神障害の不支給率 6.4%(令和5年度) → 12.1%(令和6年度)
・外部障害の不支給率 10.2%(令和5年度) → 10.8%(令和6年度)
・内部障害の不支給率 19.4%(令和5年度) → 20.6%(令和6年度)

1.集計結果(令和6年度)
(2)新規裁定の分析

つまり、実際に「精神障害の不支給率は令和6年度に(ほぼ)倍増した」ということなんですね。

うつ病や双極性障害といった精神疾患を抱える当事者からすれば、これは由々しき事態と言えます。

なぜ不支給は増えたのか? 報告書が示す「理由」

では、一体なぜ不支給は増えてしまったのか。

報道では「2023年10月に日本年金機構のセンター長が交代してから審査が厳しくなった」と指摘されていました。

しかし、今回の厚労省の調査では、センター長が審査を厳しくするよう指示した事実は確認できなかったと結論付けています。

職員へのヒアリングによると、センター長は「認定の根拠を明確にすべき」「認定医にきちんと説明できるよう精査すべき」とは指示したものの、それは不支給を増やす意図ではなかった、とのこと。

「では、なぜ?」

報告書の中に、その明確な答えはありません。そもそも、明確な判定の理由を記録に残すことが徹底されていない(単語や記号だけが記載されているケースが見られたと報告書に記載あり)という理由で、追跡調査自体が困難なのかもしれません。

なんともモヤモヤする報告書です。

ただ、職員へのヒアリング結果からは、こんな「肌感覚」が透けて見えます。

・SNSなどでの情報拡散や、コロナ禍を経て精神科受診のハードルが下がったことで、軽症者からの申請が増えたのではないか。

・職員の習熟度が上がり、診断書に疑義がある場合にカルテ照会を行うなど、審査の精度が今までより上がったのではないか。

令和6年度の申請件数全体がまだ公表されていないため、これらはあくまで現場の「感触」に過ぎません。しかし、申請の現場に何らかの変化が起きている可能性を暗に示しているようです。

今後の改善策と、不支給になった方への「朗報」

今回の調査結果を受け、厚労省は今後の改善策を打ち出しています。公平性と透明性を高めるための、前向きな内容です。

  • 不支給の理由を分かりやすく記載する

  • 担当する認定医を無作為に決定する

  • 報道で指摘された、職員が認定医の判断を誘導するような内部文書は今後作成しない

  • 全ての不支給事案を、複数の認定医で審査する

  • 障害認定審査委員会に福祉職などの外部委員を加え、透明性を高める

そして、すでに不支給となってしまった方にとっても、安心できるニュースがあります。

令和6年度以降に不支給、または等級が下がった精神障害などの事案について、速やかに点検を行う。
点検の結果、必要なものは、処分を取り消し、改めて支給決定を行う。

Ⅲ 今後の対応策 2.不支給等事案の点検

もし、あなたが令和6年度以降に不支給の決定を受けていたとしたら、その決定が見直される可能性があります。これは、本当に大きな一歩ではないでしょうか。

この報告書から本当に見える「構造的な問題」

さて、ここまでが報告書の解説です。

しかし、私が本当に気になったのは、報告書に添付された職員へのヒアリング結果に書かれていた、彼らの「生の声」でした。

「残業が多く、毎日書類を処理しなければならない。」
「精神グループは、特に業務量が多いと感じる。」
「サービススタンダードを守る ために、量が多くても頑張って対応している。残業も含めて一生懸命頑張ってきた。 コントロールしてやろうという考えはない。」
「難しい判断のために、みんな悩んでいると思う。自分は少なくともそう。責任が 重くなっていると思う。今後の請求者の人生に影響してくるものなので。」

【別添2】個別事案に係る審査担当職員に対するヒアリング
【別添3】報道の内容等に関する障害年金センター職員に対するヒアリング

これらの声を見て、「言い訳だ」と感じる人もいるかもしれません。

だからって手を抜いていいわけじゃないでしょう? それはそうなんです。

ですが、「それほど精神障害に関する申請が殺到しているにもかかわらず、現場の体制が全く追いついていない」という悲痛な事実も見えてきます。

考えてみれば、障害年金の支給決定は「人の一生を左右する決定」です。

しかも、障害という「今、真剣に困っている人の声」を受け止める立場。診断書や申請書を読むというだけでも、職員の方々には、想像を絶するプレッシャーがかかっているに違いありません。

SNSの影響などで申請が増えた。それ自体は良いことです。結果として「支給」がなされなかったとしても、支援を求める声が可視化されることは、国が社会保障を考える上で大切なシグナルです。

問題は、その声を受け止めるべき現場が疲弊しきっていること。その体制を放置していること自体です。

精神的な負荷が高い仕事だからこそ、時間的な余裕を持ち、心身をリフレッシュできる配慮があってしかるべきではないでしょうか。

これでは、セーフティネットを支える側が壊れてしまう。むしろ精神障害者を増やすことにもなりかねません。

今回の改善策では「もっと審査を丁寧にします」と約束してくれました。

しかし、そんなこと言ったって、そのためのリソース(人員や時間)はどこにあるのでしょうか。

ただでさえおおむね3ヶ月かかり、事務処理が逼迫している審査。

「丁寧にやる」ために、審査期間が半年になるのでしょうか?

それとも、現場の職員に「もっと頑張れ」と、さらなる精神論を強いるのでしょうか?

そうではないはずです。

人員を増やし、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、職員一人ひとりの負担を軽減する。そういう具体的な手立てを講じるべきです。

この問題の根本にあるのは、職員の意識でも、申請者の質でもない。

申請する側にも、審査する側にも、過度な負担を強いる「仕組み」そのものです。

この仕組みを変え、誰もが追い詰められることのない体制を築くこと。困っている人が必要な時にアクセスできるサポート体制を目指すこと。それこそが、私たち一人ひとりの穏やかな生活に繋がっていくのだと、私は信じています。

この問題はまだ始まったばかりです。

そもそも、今回の発表は、「確かに不支給が増えていた」ということを明らかにしたまでであり、明確な不支給増の原因も明らかではありません。

今後もこの問題について、新たな動きがあれば、この場所で、私の言葉で伝えていこうと思います。


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