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【タイ族:Thái】北西部解放と舞踊の発展

Xin chào các bạn、
みなさん、こんにちは!
JICA海外協力隊としてベトナムで活動しているナオミです。

ベトナムの各民族に伝わる民俗舞踊について、貴重な文献を読み解きながら、踊りが語る文化や価値観に触れていきます。

Lâm Tô Lộc『Múa dân gian các dân tộc Việt Nam(ベトナムの各民族の民俗舞踊)』,Nhà xuất bản Văn hóa Dân tộc,1995年

本日は、前回の続きです。

暮らしに根付いた踊りとして発展してきたタイ族のソエ・ヴォン。
シンプルなステップと手の動きで構成されていて、誰でも参加できるのが特徴な踊りです。

今回はそのソエ・ヴォンから生まれ、地域ごとに進化したさまざまな舞踊たちをご紹介します。



ソエヴォンを率いた2つの舞踊団


かつて、この踊りをより芸術的に発展させた2つの有名な舞踊団がありました。

・ライチャウ省Phong Thổ地区
Đèo Văn Ânさんが率いた舞踊団
・ディエンビエン省Mường Lay地区
Đèo Văn Longさんが率いた舞踊団

これらの舞踊団は、地域の文化を代表する存在として活躍し、タイ族の舞踊を洗練された表現へと導いていきました。

Đèo Văn Longの舞踊団
画像:Chuyện xòe của thư ký 'vua' Đèo



北西部解放、村に戻った舞

1950年代、第一次インドシナ戦争のなかでベトナム北西部地域はフランス支配から解放されます。

政治体制の大きな変化により、これらの2つの舞踊団も解散。
踊っていた若い女性たちや音楽を奏でていた人々はもとの村へと帰っていきました。

しかし、踊りは失われたわけではありません。
むしろ、村の人たちは、それぞれの暮らしの中で踊りを再び楽しみ、伝えていくようになりました。

この時期から、布、扇、鈴、笠などの道具を使ったさまざまな舞が誕生し、これらが徐々にタイ族の村に広まっていきました。
そして次第に、地域ごとに特色あるスタイルが生まれました。



◆スカーフの踊り(Múa khăn)

タイ族の「スカーフの踊り(Múa khăn)」は、タイ族の中でも古くから伝わる舞で、宗教的な儀式「キン・パン・テン(Kin Pang Then)」の中で発展してきたとされています。

ライチャウ省白タイ族のキンパンテンの儀式(2024)Lễ hội Then Kin Pang - Nghi thức tín ngưỡng đa thần của người Thái trắng Lai Châu | Điền Đi Đâu

「キン・パン・テン」は、毎年旧暦3月10日に開催される伝統的な祭りです。
天界の神々(Then)を地上に招き、人々の願いを伝え、豊作や平和、健康を祈るための重要な宗教儀式です。雨乞いや花の豊作を願い、村の人々が共に踊りを捧げます。
この儀式の中では、スカーフ(布)を使った特徴的な動きがいくつも登場します。

ディエンビエン省のチームによるスカーフ踊り(2025)Múa khăn - Xuân đoàn kết, Tết nhân ái- do đội VN Nà Tòng biểu diễn


◆扇子の踊り(Múa quạt)

タイ族の舞踊の中で、「扇子の踊り(múa quạt)」は、スカーフを使った舞とはまた違った魅力を持っています。

スカーフの踊りが、女性たちの体のラインに沿って長い布をまとい、優雅で詩的な動きを描くのに対して、
扇子の踊りでは、折りたたんだ扇子を左手に持ち、空間に色とリズムを描くような演出がなされます。

扇子の踊り(2023)SIÊU PHẨM MÚA QUẠT THÁI CỰC ĐẸP XEM MÃI KHÔNG CHÁN - BỨC TRANH XUÂN

扇子は1本で踊る場合もありますが、スカーフと一緒に使われることも多く、2本の扇子を使って両手で開いたり閉じたりする振付もよく見られます。
扇子の動きには動きの法則に基づいた名前があり、それぞれに独特の意味があります。


ライチャウ省ムオン・チエン村(xã Mường Chiên)という地域には「Vi Chien」という特有の振付があります。
このように、民俗化の過程で独自のスタイルが発展してきました。タイ族の地域文化の豊かさを象徴しています。

ムオンチエン村の扇子踊り(2019)Múa Quạt | Chi Hội Người Cao Tuổi Bản Mường Chiên


◆笠踊り(Múa nón)

笠という新しい道具を取り入れることで、ソエ・ヴォンの一部だった動きは、やがて独立した舞踊として発展していきました。

笠踊り(Múa nón)は、村ごとの暮らしや感性を反映しながらそれぞれに個性あるスタイルを生み出しています。
たとえば以下の3つの村のように、それぞれの地域で衣装や振付、隊列の組み方が少しずつ異なります。

  • Múa nón Phong Thổ(ライチャウ省フォン・トー地区の笠踊り)


  • Múa nón Mường Lay(ディエンビエン省ムオン・ライ地区の笠踊り)


  • Múa nón Quỳnh Nhai(ソンラ省クイン・ニャイ地区の笠踊り)


この踊りのはじまりは、実は男性の試みからでした。

伴奏者(bảo khóa)たちの語りによると、最初の笠踊りは男性によって踊られたそうです。

しかし、笠という道具が持つ繊細な美しさや軽やかさは、男性の動きではうまく表現できなかった。そこで女性たちが改めてこの舞を試すようになり、やがて女性の集団舞として定着していきました。


ーおわりに

タイ族の踊りには、暮らしの中で自然と育まれてきた美意識やリズム、そして人と人とのちょうどよい距離感があります。

なかでも北西部の地域で伝えられてきた踊りには、土地の歴史や時代の流れが深く関わっています。

そこから派生した道具を使う踊りは、いまも各地で受け継がれ、保存や継承のための取り組みが続けられています。

このすばらしい文化がこれからも長く大切に守られ、次の世代にも受け継がれていくことを願っています。



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