【タイ族:Thái】集団円舞ソエ・ヴォンが語る、共同体の絆
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みなさん、こんにちは!
JICA海外協力隊としてベトナムで活動しているナオミです。
ベトナムの各民族に伝わる民俗舞踊について、貴重な文献を読み解きながら、踊りが語る文化や価値観に触れていきます。

Lâm Tô Lộc『Múa dân gian các dân tộc Việt Nam(ベトナムの各民族の民俗舞踊)』,Nhà xuất bản Văn hóa Dân tộc,1995年
本日は、ベトナム国内でキン族に次いで2番目に多い民族と言われる(と言っても全人口の1.9%ほど)、少数民族タイ族(Dân tộc Thái)です。
タイ族は、ベトナム北部に多く暮らす少数民族で、稲作を中心とした農村文化を大切にしています。伝統的な高床式住居で暮らし、祖先や自然を敬う精神を大切にしています。

画像:Dân tộc Thái Việt Nam
ソエ・ヴォン(Xòe Vòng)とは?
タイ族(Dân tộc Thái)は、日常の中に舞踊文化が深く根づいた民族で、その踊りは地域の人々に広く親しまれています。
なかでも「ソエ踊り(múa xòe)」は、タイ族の枠を越えて、ベトナム民族の他の兄弟民族たちにも広く親しまれるようになりました。
ソエ(xòe)とは、
タイ族の言葉で「踊り」や「開く・広げる」という意味。
輪になって踊るスタイルのソエ踊りを「ソエ・ヴォン(xòe vòng)」と言い、手を取り合って踊ることから「xế khắm khen(手をつなぐ踊り)」とも呼ばれています。

画像:Làng Văn hoá Việt Nam
この踊りはユネスコ無形文化遺産にも登録されており、タイ族文化の象徴としてだけでなく、ベトナムの多民族的文化の一部として国を越えて評価されています。
気が向いたら踊る、自由な気持ちで
かつてソエ・ヴォンは、村人たちにとって、労働後の疲れを癒す、ささやかな娯楽や遊びの時間でした。
気が向いたときにふらっと踊りに加わり、気が乗らなければ途中で抜けてもOK。振り付けはとてもわかりやすく、ルールや決まりごともないので、自由な気持ちで楽しめるのが特徴です。
また、服装も普段着のまま。
舞台もなく、化粧や衣装の演出もありません。
つまり、「舞台芸術」としてのダンスではなく、
暮らしの中に息づいた日常の踊り(生活舞踊:múa sinh hoạt)なのです。
みんなで踊っても壊れない家だね!
ソエ・ヴォンは、タイ族の村の様々な楽しい行事で踊られており、子どもからお年寄りまで世代も性別も関係なく、誰もがその輪に入りステップを踏みます。
■テト(旧正月)で踊る
ベトナムのお正月であるテト(Tết:毎年2月頃)になると、村中が太鼓とドラのリズムに合わせてソエ・ヴォンを踊り始めます。
大人数が集まれば踊りの輪は二重になり、内側に小さな輪、外側に大きな輪ができて、それぞれが反対方向に回り出します。
盛り上がってくると、踊り手たちは歓声を上げながら、輪をきゅっと締めて踊りに熱中していきます。
テトの祝日、高齢者による北西部ソエ踊り(2022)THÁI TỘC TV || MÚA XÒE TÂY BẮC TRONG NGÀY TẾT, HỘI NGƯỜI CAO TUỔI
■新築祝いで踊る
新しい家が建ったときには、お祝いの宴のあとに、来客たちがソエ・ヴォンを踊って祝福することもあります。
最初は「おめでとう」の気持ちを込めて。
そのあとは「この家はみんなが踊っても崩れないほど頑丈だね!」と、家主をたたえる意味を込めて踊るのです。
北部ソンラ省にて、新築祝いを盛大に祝うソエ (2018)
XÒE MỪNG TÂN GIA CỰC HAY TẠI CHIỀNG ĐÔNG ,YÊN CHÂU, SƠN LA
ソエ・ヴォンは集団舞踊の代表格
集団舞踊(múa tập thể)とは、多くの人が参加できる踊りのスタイルであり、踊りのスキルに自信がない人でも無理なく楽しめます。また、集団ごとに踊りの条件や習慣が異なるため、自然とその集団に合った踊りの形が生まれます。
このような集団舞踊は、みんなで心を一つにする協調性を育て、個人と共同体とをつなぐ役割を果たしています。そして、それぞれの民族が大切にしてきた健全で豊かな文化的ライフスタイルを築くうえでも、欠かせないものなのです。
タイ族の村の中で、ソエ・ヴォンは、暮らしの中に息づいた日常の踊りとして受け継がれてきました。
そしてそれは、ただ娯楽や演目としてだけではなく、社会的つながりや心の交流を支える文化の一部として長い間大切にされています。

画像:Lai Châu Portal
人との関わり方やふるまいを伝える役割
ソエ・ヴォンの踊りの中には、村の中でのふるまいや社会関係のあり方が表れているとされています。
踊りの中では互いに手をつなぎ、息を合わせて動くことが大切にされており、それが協調性や思いやりなどの道徳的な価値を育みます。
こうした価値観は、集団の中で信頼関係を築くための土台ともなり、タイ族だけでなく他の少数民族においても大切に受け継がれてきました。
このように、ソエ・ヴォンのような集団舞踊は、
人との関わり方や文化的なふるまい=道徳的価値観(Giá trị đạo đức)を伝える手段としても機能しているのです。
―おわりに
ベトナム少数民族・タイ族の踊り「ソエ・ヴォン」、いかがでしたか?
誰かと手を取り合い、円をつくり、互いに顔を合わせる。そしてタイミングを合わせ、みんなで同じステップを踏む。
踊りには、言葉では語りきれない、思いやり、協調性、節度、礼儀正しさがにじみ出ます。
踊りの中にしっかりと息づいている、美意識や共同体への配慮が、踊る人たちの心をやわらかくし互いを優しくつないでくれるのでしょう。
これまでも、そしてこれからも、長い長い時間をかけながら、ソエ・ヴォンはタイ族の人々の中に、共同体としての深い絆を築き続けていくのだと思います。
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