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さまよい過ぎた果てに

気づいた時にはヒドい方向音痴でした。

と言っても子供の頃は親に手を引かれて頭を使う事もなくただ「連れて行ってもらう」だけの立場だったから、その事実にさえ私は気づけていませんでした。

そう言えば、3歳くらいの頃に母と二人で近所のスーパーに買い物に行って、決して広くはないスーパーで迷子になり、子供ながらに、いや、子供だから、すごいパニックになりつつ、これは一番確実に母と落ち合える方法を考えなくてはいけないと思って、たった一人、家まで歩いて帰った事。

(徒歩20分くらいですが、当時ちっちゃい私にとっては大冒険でした。一方一人スーパーに残された母は私が人さらいに遭ったかと思って肝をつぶして帰ってきたら、思いもよらず私が家にいて、こんなちっちゃい子供でも家からスーパーまでの道を覚えているもんなんだと驚いたらしいです。←怒られたのか泣かれたのかは覚えてない。)

→子供だからそういう事もあるよね、と思っていました。

そう言えば、仲良し4人で行った高校の卒業旅行。

友達同士での泊りの旅行も、その行先がディズニーランドだったのも人生初で、富山—東京の深夜バスで明け方ディズニーランドに到着。興奮しながら四人で入場してお城をバックに写真を撮って間もなく迷子。のライトアップパレードを見て再び深夜バスに乗るまでの間(つまり一日中)迷子のまま(途中で一人見つけて、二人ずつで過ごし)バラバラで楽しんだ(?)ディズニーランド。だから卒業旅行の写真、4人で撮った写真が一枚しかないという思い出。

→これも東京ディズニーランドみたいに人が多いところは、富山にはないもんね、と思っていました。

今思えば、そういう片鱗はありつつも、明確に気づけていなかった方向音痴を決定的に自覚したのは社会人になってから。

新卒の頃、私は地元の会社に就職していましたが、隣の市だったので車通勤していました。

私は迷子癖があるにも関わらず(←明確な自覚がなかったから)「車」という足の出現で自分の行動範囲が劇的に広がった事から、いつもどこか興奮気味で、色んなところに車を走らせるのが楽しくてしょうがありませんでした。

そして、ある日の帰り、会社と家との間にない道も走ってみたいと思いました。

それまでも普段、仕事が早目に終わると海岸で車を止めて海をぼ~っと眺めているのが好きで、海は日常的に眺めていました。

なので、その日は「山に行ってみよう」と思い立ったのです。

そうは言っても所詮県内の山です。ものすごい標高の高い山というわけでもありません。だからわざわざ道案内の看板もありません。こっちからあっちに抜けるだけの簡単な山だったのでしょう。多分・・・。

そんな山を走りつつ、しばらくの間は普段見ない「森」という風景に見とれて私は満足していました。進んでいくとY字路になって道が分かれていました。私は何の確証もない「自分の感覚」に従って進んでいきました。

「登ったんだから下りればいい」

そう簡単に考えていました。そしてその後も自分の感覚のまま進んでいくと、下りを走っているのに、いつしか坂を上っている事に気づきます。山道も登り一辺倒、下り一辺倒というわけではなく、一本の道でも登ったり下りたりしています。だんだんワケがわからなくなってきました。

山から出られないのです。

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私はまず「自分の感覚に任せて進むのはやめよう」と思いました。そして「右!」と思ったら「左」に、「左!」と思ったら「右に」と進んでいきましたが、これまたそういう時に限って「正しい方向」は私の裏をかいているかのように、やっぱりハズレらしいのです。

終いには自分がホントに「左!」と直感しているのか、それとも「右と感じていながら左!」と既に裏をかいて感じているのかもわかりません。
辺りは日も暮れて真っ暗になり、私は途方に暮れて真っ暗になりました。

ほんの20分くらいと思った山ドライブはもう二時間が経過していました。

めちゃくちゃに走りながら、やっと道案内の看板が出ているような下の道まで辿り着くと、これまた予想外なほど遠くに来ていて、家に帰るのに更に時間がかかりました。

家に帰ると遲い帰宅に母から叱られましたが、まさか「道に迷って遅くなった」とも言えないので残業したという事にしました。

この事で、私は自分の方向感覚がドえらく狂っている事を自覚したのです。

時を隔て、この香港に来ると私は営業になりました。その辺の事はこちら↓↓

営業—— それは日常的に迷宮ミッションクリアが課せられた部署。

この香港の隅から隅まで、方向感覚が壊滅的に損傷している私が地図を片手に、決められた時刻に客先を訪問するというミッション・インポッシブル。

日々の迷宮ミッションをこなす中でも、私は地図を自分の立ち位置と周りの目印を合わせ、逆さにしたり横にしたり、磁石代わりにグルグル回しながら見ていました(←成長なし_| ̄|○)

方向感覚は完全崩壊していましたが、こんな私にも強みがありました。

私は時間の感覚がとてもいいのです。時間がどれだけ経ったかという把握も、これをするのにはどのくらいかかるかという把握も、わかっている道ならどのくらいの時間で移動できるかの把握も、とてもきっちりできました。

あと、当時私は記憶力がいい方でした。方向はわからなくても一度行けば記憶に頼る事ができました。仕事なので出発時間をどれだけでも早められるわけでもないので、ホントにミッションインポッシブルでしたが、一度行ってしまえば記憶が残るので何とかなりました。

それが更に時を経てフリーになると、好きなだけ事前に時間を早めて出発できるようになりました。通訳で知らない場所に出向く時、私は多くの場合、自分が辿り着くだけでなく、お客さんを案内しなくてはなりません。そんなわけで私には、ある癖がつきました。

当日が来るまでに現場に下見に行って、実際に駅から現場までを歩いてみてかかる時間や、工事中とかの道路状況をみます。当日は待ち合わせの1時間前には現場に到着します。

そして目的地に行ったらば、その付近を自分が来た道とは逆方向からも歩いてみます。自分が元来た道を帰るという意味でなく、AからBに行くのに反時計回りで来たとしたら、時計回り(つまり歩いてきてない方の道)逆回りに進んでもう一度Bに辿り着ける道順を探します。AからBに行く二通りの道を試してみるのです( 意味わかるかな~(;^_^A )

普段の散歩も、できるだけ通った事のないような道をむやみに歩きます。
でもこれをするようになってから、壊れていた方向感覚がまともになってきました。大体の方向性が自然とわかるようになってきたのです。

まあ、今はグーグルマップという強い味方があるのですが。

でも、私の迷子人生、色んな所を迷いに迷い、さまようだけさまよったら、そもそも「迷う」事がコワくなくなった。それこそが何よりの収穫だったなと思います。

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