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【保存版】日本のスペシャルティコーヒーの相関図

これまで3回にわたり,ポール・バセットから始まった日本のコーヒー革命を追ってきました。
第1回では,新宿の地下にあった「バリスタの虎の穴」ともいえる修行時代。
第2回では,GLITCH,FUGLEN,ONIBUSという三巨頭が築いた「東京スタイル」。
第3回では,その流れを受け継ぎながら,科学的アプローチや新しい提供スタイルで進化する次世代のコーヒーシーンを見てきました。
最終回となる今回は,さらにマニアックに,点と点をつないでいきます。
「あの名店も,この系譜だったのか」
「ここもGLITCHやONIBUSとつながっていたのか」
「ポール・バセットの流れは,ここまで全国に広がっていたのか」
そんな発見があるように,日本全国へ広がる「孫弟子」や「関連店」の系譜を整理しました。
この記事は,日本のスペシャルティコーヒーの“今”を読み解くための相関図です。


1. GLITCHの遺伝子:シングルオリジンの極北へ

鈴木清和氏が立ち上げたGLITCH COFFEE & ROASTERSは,今や日本のスペシャルティコーヒーシーンにおいて,最も多くの独立者を輩出する巨大なハブの一つとなっています。
GLITCHの特徴は,なんといってもシングルオリジンへの徹底したこだわりです。
豆の産地,品種,精製方法,焙煎,抽出を通して,コーヒーが本来持つ果実味や個性を,できる限り鮮明に伝える。
その思想は,多くのバリスタに受け継がれ,全国各地で新しい形に発展しています。

blend kyoto(京都)

店主は奥井大輝氏。
GLITCH,LEAVES COFFEEを経て,京都で独立。
客一人ひとりの好みに合わせて「ブレンド」を提案するという斬新なスタイルで,京都のコーヒーシーンに新風を吹き込みました。
GLITCH的なシングルオリジンの解像度と,京都らしい余白のある接客が重なった,独自性の高い一軒です。

Raw Sugar Roast(東京・経堂)

店主は小坂田祐哉氏。
ポール・バセット渋谷店を経て,GLITCHの立ち上げにも参加。
2023年には焙煎の日本チャンピオンにも輝き,バリスタが焙煎家としてキャリアを広げていく,新しい道筋を示しました。
Raw Sugar Roastは,GLITCHの流れを汲みながらも,より日常の中に浅煎りコーヒーを溶け込ませるような,親しみやすさも持つロースタリーです。

BECAUSE COFFEE BREWERS(東京・池ノ上)

店主は立川義邦氏。
GLITCH,Raw Sugar Roastを経て,2024年にオープン。
エアロプレスの日本王者でもあり,圧倒的な技術を持ちながら,フレンドリーな接客で一杯を届けるスタイルが魅力です。
高度な抽出技術を,難しく見せず,日常の体験として開いている点に,新世代らしさがあります。

YARD Coffee & Craft Chocolate(大阪・天王寺)

店主は中谷奨太氏。
GLITCHで修行後,大阪・天王寺で父の営む「なかたに亭」の菓子とコーヒーを融合。
スペシャルティコーヒーとクラフトチョコレート,菓子文化を接続することで,大阪における新しいコーヒー体験をつくり出しています。
コーヒー単体ではなく,甘いものとのペアリングまで含めて楽しめる点が特徴です。

OBROS COFFEE(福島・郡山)

店主は荻野稚季氏。
GLITCH COFFEE & ROASTERSでの修行を経て,2016年に兄の夢紘氏とともにオープン。
福島県において,産地の個性を伝えるライトロースト文化の先駆けとなった存在です。
東京の先端的な浅煎り文化を,地方都市の暮らしの中に根づかせた重要な一軒です。

butter baby(東京・世田谷上町)

Raw Sugar Roastが2025年8月にオープンした最新拠点。
世田谷・上町で,「バターの香りと異国の朝」をテーマに,自家製パン,浅煎りコーヒー,クラフトビールを楽しめるベークハウスとして注目を集めています。
GLITCHからRaw Sugar Roastへ,そしてさらに日常的なベーカリーカルチャーへ。
シングルオリジンの思想が,より生活に近い場所へ広がっていることを象徴する展開です。


2. ONIBUSの遺伝子:日常とコミュニティの調和

坂尾篤史氏が築いたONIBUS COFFEEの思想は,単においしいコーヒーを提供することにとどまりません。
店名のONIBUSには,「公共バス」のように,人と人をつなぐ場所でありたいという想いが込められています。
地域に根ざしながら,世界基準のコーヒーを届ける。
その精神は,多くのバリスタに受け継がれています。

Sniite(東京・豪徳寺,下馬)

店主は神戸渉氏。
ONIBUSの初代マネージャーを務めた重鎮です。
看板のない静かな空間で,地元のファンに深く愛されるロースタリーとして知られています。
強い主張で引っ張るのではなく,街の中に静かに根を張る。
ONIBUS的なコミュニティの精神を,より落ち着いた形で受け継いでいる一軒です。

TASK COFFEE(東京・千歳船橋)

店主は田崎将司氏。
ONIBUSの顔として9年間活躍し,2024年に地元・世田谷で独立。
「早くて美味しい」バッチブリューを掲げ,日常の中で気軽に高品質なコーヒーを楽しめる店としてオープンしました。
スペシャルティコーヒーを特別なものとして閉じ込めるのではなく,毎日の生活に自然に溶け込ませる。
その姿勢に,ONIBUSの遺伝子が感じられます。


3. PASSAGEの遺伝子:世界一の抽出理論

PASSAGE COFFEEは,エアロプレス世界王者である佐々木氏の抽出理論を軸に,バリスタの技術とロジックを磨いてきた存在です。
感覚だけでなく,抽出を構造的に理解する。
なぜこの温度なのか。
なぜこの挽き目なのか。
なぜこの注ぎ方なのか。
そうした理論的なアプローチは,次の世代のバリスタにも受け継がれています。

warmth(群馬・高崎)

店主は福島宏基氏。
ポール・バセット,PASSAGEの立ち上げを経て,地元・群馬へ。
生豆バイヤーとしても活躍し,地方のコーヒー偏差値を押し上げている存在です。
東京で培った抽出技術や豆の選定眼を,地方のカフェ文化へ持ち帰る。
warmthは,その流れを象徴する店舗の一つです。

MINUTES(東京・神保町,浜松町)

店主は本山氏。
PASSAGEを経て独立。
小型焙煎機アイリオを駆使し,ビジネス街で働く人々に寄り添う一杯を提供しています。
忙しい日常の中でも,短い時間で質の高いコーヒーを楽しめる。
MINUTESという名前の通り,限られた時間に価値を与えるコーヒースタンドです。


4. ポール・バセット直系の実力派:第1世代・同期組

これまでの連載では,GLITCH,FUGLEN,ONIBUSといった象徴的なブランドを中心に紹介してきました。
しかし,ポール・バセットの現場を長年支えた後に独立した「直系」の実力派は,まだまだ存在します。
彼らは,いわば第1世代の同期組。
派手なトレンドだけでは語りきれない,いぶし銀の実力派たちです。

JAMES coffee&donut(埼玉・所沢)

店主は大槻佑二氏。
ポール・バセットのバリスタを経て,「Tokyo Coffee Festival」の立ち上げや,THE LOCAL,ALL SEASONS COFFEEの統括責任者を歴任。
2022年に地元・所沢でJAMES coffee&donutをオープンしました。
こだわりのドーナツと,厳選されたロースターのコーヒーを自在にペアリングする独自のスタイルが特徴です。
オープン初日から行列ができる人気店となり,所沢のコーヒーカルチャーを牽引する存在になっています。

swamp(東京・西新宿)

店主は石川篤希氏。
ポール・バセットに長年勤め,「オペレーションの神」とも称される実力派。
2022年,西新宿の路地裏にコーヒースタンドswampをオープンしました。
懐かしいレコードが流れる空間で,チャンピオンとしての高い抽出技術を,肩肘張らずに楽しめる。
技術の高さと気楽さが同居する,上質なコーヒー体験を提供しています。

Life Size Cribe(東京・国分寺)

店主は吉田一毅氏。
ポール・バセット渋谷ヒカリエ店のオープニングスタッフとして活躍。
2015年,自身が学生時代を過ごした国分寺に,「等身大」をコンセプトにしたLife Size Cribeを構えました。
ストイックな抽出技術を持ちながらも,地元の常連客と温かく心を通わせる。
地域密着型スペシャルティコーヒーの理想形ともいえる一軒です。

カルアジャア・エスプレッソ / Carruatge(東京・江東区北砂)

監修はNori Yoshimi氏。
ポール・バセットの初期メンバーであり,当時の焙煎とエスプレッソを支えた伝説的バリスタが監修する店です。
多くの出身者が浅煎りフィルターへ舵を切る中,ここでは当時のポール・バセットの神髄であった「圧倒的な熱量のエスプレッソ」を今も体感できます。
浅煎りフィルターの時代だからこそ,エスプレッソ文化の原点を感じられる貴重な場所です。


5. 地方のコーヒーシーンを塗り替える系譜

ポール・バセットや東京の有名店で技術を磨いたバリスタたちは,東京だけに留まりませんでした。
それぞれの故郷や,自分が根を張りたい土地へ戻り,その場所に合った形でスペシャルティコーヒーを広げています。
東京の最先端技術を,地方の文化として定着させる。
この動きこそ,日本のコーヒーシーンが本当の意味で広がっている証拠だと思います。

COFFEE AND BAKE はしもと(沖縄・沖縄市)

店主は橋本貴弥氏。
ポール・バセットを経て,2024年に沖縄でオープン。
自家焙煎の浅煎りコーヒーと,自家製のクッキーやバナナブレッドなどの焼き菓子とのペアリングを提案しています。
那覇から少し離れた場所にありながら,コーヒー好きがわざわざ目的地として訪れる場所に成長しています。

LUCK APARTMENT(鹿児島・鹿児島市)

店主は福永寛尚氏。
オーストラリアでの修行後,ポール・バセットに4年勤務。
2022年,地元・鹿児島で10年越しの夢を叶えて独立しました。
エスプレッソの確かな技術を武器に,鹿児島のコーヒー文化に新たな風を吹き込んでいます。

OBROS COFFEE(福島・郡山)

GLITCHの系譜でも触れたOBROS COFFEEは,地方展開という意味でも重要な存在です。
福島県郡山市という土地で,ライトローストの魅力を伝え続けてきたことは,東京中心に語られがちなスペシャルティコーヒーの地図を広げる出来事でした。
地方でも,産地の個性を伝える浅煎りコーヒーは成立する。
そのことを早い段階から示した店舗の一つです。


6. この「系譜」を巡る旅に出よう

2006年,新宿の地下から始まった物語は,今や東京だけでなく,京都,大阪,福島,群馬,鹿児島,沖縄へと広がっています。
そして,その広がりは単なる店舗数の増加ではありません。
ある人は,シングルオリジンの可能性を突き詰めた。
ある人は,街の中にコーヒーを根づかせた。
ある人は,抽出理論を武器にした。
ある人は,エスプレッソの熱量を守り続けた。
ある人は,地方に新しい文化を持ち帰った。
バリスタたちのつながりを知ると,カップの中にある「味」だけでなく,彼らが積み上げてきた「時間」と「情熱」がより鮮明に見えてきます。
いつも何気なく訪れていたカフェにも,実はどこかの名店とつながる物語があるかもしれません。
次の週末,あなたはどの「系譜」の扉を叩きますか?


おわりに

全4回の連載を最後までお読みいただき,ありがとうございました。
この連載では,ポール・バセットから始まった日本のスペシャルティコーヒーの流れを,三巨頭,孫弟子世代,そして全国へ広がる関連店の系譜として追ってきました。
もちろん,ここで紹介した店舗だけがすべてではありません。
日本には,他にも素晴らしいロースターやカフェが数多く存在します。
それでも,こうして一つの流れとして見てみると,今飲んでいる一杯の背景には,想像以上に多くの人の挑戦とつながりがあることが見えてきます。
この「系譜図」が,あなたのコーヒーライフをさらに深める地図になれば幸いです。
ぜひ,次のカフェ巡りのお供にしてください。


☕️ 記事を楽しんでいただけたら,ぜひ「スキ」をお願いします。


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参考文献・もっと詳しく知りたい方へ

各店舗のストーリーと系譜の詳細

【blend kyoto】GLITCHから京都へ,奥井氏が挑むブレンドの可能性

【Raw Sugar Roast】日本チャンピオン小坂田氏の焙煎哲学

【BECAUSE COFFEE】池ノ上に誕生した実力派のフレンドリーな一杯


ONIBUS・PASSAGEから独立したバリスタたち

【Sniite】ONIBUS卒業生・神戸氏が描く理想のロースタリー

【warmth】高崎から発信する「ぬくもり」とコーヒー




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