「史上最悪」の事件・事故

 「史上最悪」の事件・事故は何か?

 「史上最悪」は何を基準にするかによって変わる。死者数なのか、社会的影響度なのか、凄惨さか。ともかく、人類史の汚点を学んで後世に伝えるという意義について考えると、「史上最悪」の事件・事故について知っておくのは重要な事なのではないかと思う。

史上最悪の「事故」

 事故とは、予期せず発生した出来事を指す。つまりここでは、人によって意図的にもたらされたできごとを除いて考える。

チェルノブイリ原発事故(1986年)

 「史上最悪の事故」で検索すると、航空機事故が多くヒットする。しかし事故の規模と被害者数で考えると、チェルノブイリ原発事故は最悪の事例だ。

 死者数は、ある推計によると4000人だが、ある推計によると1万6000人、数万人、数十万人とされる。大量に漏出した放射線の影響で多くの人にガンをもたらしたが、目に見えない影響について正確に集計することは難しい。

 また、自然界への影響、そして故郷に住めなくなった人も大勢いた。半径30km圏内は強制移住となったが、30kmとは東京駅を起点にすると東京23区はおろか立川市あたりまで丸ごと入るような範囲だ。

 事故の原因は、黒鉛を用いたロシア式のRBMK炉が有する欠陥と、関係者の不適切な運用によるものだ。爆発事故が意図したものではないにしろ、人災と言える人類史上最悪の事故である。

史上最悪の「旅客事故」

 乗り物に関連した最悪の事故に限定して見てみる。

ヴィルヘルム・グストロフ沈没事故(1945年)

 旅客事故で最悪の事故は、航空機によるものではない。客船による事故だ。ただし、タイタニック号事故ではない。タイタニック号の沈没事故では1500名前後が死亡したが、それ以上の犠牲者を出した事故がある。

 同船は第二次世界大戦中、ソ連軍の雷撃を受けて沈没した。したがって、これは事故ではないようにも思えるが、Wikipediaにおいて海難事故として扱われていることから、事故とした。

 ある調査では、船に10582名が乗船していたが、3本の魚雷を受け、9343名が死亡したという。

史上最悪の「航空機事故」

 航空機や鉄道の事故は、発生率は低いものの、重大事故発生時の被害が極めて大きくなる。そのため、事故の原因調査を行う専門の政府機関も設置されている(日本は運輸安全委員会が担当)。

テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故(1977年)

 アフリカ大陸の北西にあるネテリフェ島で悲劇は起こった。管制官からの指示を取り違えたKLMオランダ空港の機体が、離陸許可がないまま離陸行動を開始。天候が悪い中、パンアメリカン航空の機体と衝突し、KLM機は乗員乗客248名全員、PA機は乗員乗客396名中335名が死亡。合計583名の命が奪われた。

史上最悪の「日本の事故」

 世界で発生した航空機事故のうち、単独の航空機事故で最も被害が大きかったのは、日本の旅客機墜落事故である。

日本航空123便墜落事故(1985年)

 乗員乗客524名を乗せたジャンボジェット機が群馬県の山中に墜落し、520名が死亡した。原因はボーイング社の修理ミスとされている。

 この事故は、世界最悪の単独の航空機事故であると同時に、107名の犠牲者を出した福知山線脱線事故(2005年)などの事故を上回り、日本で最も死者数が多かった事故でもある。また、未だ陰謀論が囁かれている事でも有名だ。

史上最悪の「爆発事故」

 史上最悪の爆発事故はチェルノブイリ原発事故だろう。しかし、爆発そのものの規模や被害を検討すると、他にも特筆すべき出来事が発生している。例えば広島・長崎への原爆投下だ。この項では、人為的な爆発(つまり原爆攻撃など)を除き、爆発自体の被害規模について見たい。

 なお、最近だとレバノンのベイルート港爆発事故(2020年)は218名の死者を出し、威力は1.1キロトンとされる。カナダのハリファクス大爆発(1917年)も、核爆発を除けば最大規模の、人為的な関与のある爆発とされており、約2000名が死亡した。

王恭廠大爆発(1626年)

 史上最大規模の人が関わる爆発事故ともされているが、詳細不明。明朝時代の中国で発生し、死者数は2万人とされ、火薬庫の爆発と思われるが諸説あり。

史上最悪の「事件」

 出来事の何を「事件」とするべきかは悩ましいところだ。しかし、事故を除くあらゆる出来事を「事件」とするならば、規模、犠牲者数、共にやはり「戦争」が挙げられるだろう。

第二次世界大戦(1939年〜1945年)

 紛れもない人類史上最悪の事件がこれだ。

 事件はヨーロッパで発生した。ヒトラーが率いるドイツがポーランドに侵攻。そしてイギリス、フランス、ソ連が参戦。日本、ドイツ、イタリアはアメリカに宣戦布告し戦火はアジアへも拡大した。日独伊は押され、最後は日本が降伏し戦争が終結した。

 この戦争では航空機のほか原子爆弾も使用された。広島への1度の原爆投下により最大16万6000人が犠牲になったと言われ、これは一度の攻撃で死亡した人数としては最悪の結果だろう。

 世界全体の死者は、集計が難しいものの、6000〜8500万人と言われている。

史上最悪の「殺人鬼」

ペドロ・アロンソ・ロペス(1970年代)

 戦争を除けば、彼は人類史上最悪のシリアルキラーかもしれない。コロンビアで生まれた彼が生涯で殺害した人数は、自らが語るところによると310名以上だ。「アンデスの怪物」と呼ばれた彼は、1980年に逮捕された後、死刑が廃止されたエクアドルにて禁錮16年という軽い刑罰を受け、1998年に精神病院から釈放された後、消息を絶った。

アメリア・ダイアー事件(1860年代〜)

 何らかの事情で子供を育てられい親から子供を引き取る代わりに養育費を受け取り、子供を殺害する「貰い子殺人」。その最悪の事例がこの事件だ。

 イギリスで19世紀末に発生したこの事件は、犠牲者数が400名以上とされる。数え切れないほどの赤ちゃんを飢えさせたり自らの手で殺害した彼女も「シリアルキラー」と分類されている。最終的に彼女は死刑に処された。

 「貰い子殺人」は日本でも発生している。愛知貰い子殺人事件(1898年〜1913年)では、愛知県の3人が貰い子殺人を実行。被害者の総数は200〜300名とされ、人数基準では日本最悪規模である。

 貰い子殺人は複数発覚しており、その形態から犠牲者数は数十名にのぼることもあり、戦後にも発覚している。戦後に発生した寿産院事件(1946年〜1948年)では犠牲者が84名に上るとの見方もある。

史上最悪の「殺人数」

 いわゆるシリアルキラーではないが、直接手を下しておらずとも多くの犠牲者を生んだ人間も含めると、為政者の名前が挙げられる。

毛沢東/大躍進政策(1958〜1962年)、文化大革命(1966〜1976年)

 毛沢東は中国の政治家だ。彼が1958年から1962年にかけて発動した「大躍進政策」は、杜撰な農業政策等により猛烈な飢饉を引き起こし、推計にもよるが1500万〜6000万人が死んだという。

 その後、1966年には文化大革命を発生させた。全国で「造反有理(謀反には道理がある)」のスローガンを掲げる官製暴動が発生し、死者数は推計にもよるが1000万〜2000万人。毛沢東は、生涯で最大8000万人もの犠牲者を出した可能性がある。

 毛沢東のほか、ソ連で大規模な政治弾圧「大粛清」を起こした最高指導者ヨシフ・スターリンや、「カンボジア大虐殺」を引き起こしたカンボジアの独裁者ポル・ポトも、極めて大きな犠牲者数を生んだとして名前を挙げられることが多い。

史上最悪の「日本の殺人事件」

 日本で起きた殺人事件の中には、飛び抜けて許し難い、極めて残忍な事件がいくつも挙げられる。殺人数だけでなく、その内容も見なければ、本当の悪意は理解できない。日本人が忘れてはならない凶悪な事件について、独立項目で列挙する。

京都アニメーション放火殺人事件(2019年)

 青葉真司は、被害妄想を背景に、有名なアニメーション制作会社「京都アニメーション」に突撃しガソリンを撒いて火をつけた。爆発的な燃焼により、本人含め屋内が一気に燃え上がり、36名が死亡した。当時の状況は極めて悲惨だったとされ、ベランダから飛び降りた人は骨折などしたがなんとか生き延びることができた。動機、凄惨さ、被害者数、これらを考えれば日本史上最悪級の事件だと感じる。

 犠牲者名の公表にあたり、警察は慎重に対応し、マスコミ各社は実名報道の重要性を訴えつつ慎重な報道を行い、実名報道の是非が話題となった。最終的に36名全員の名前と功績が世に報じられることとなった。

 犯人は重度の火傷を負いながらも生還。2024年に第一審で死刑判決が下された後、青葉は控訴を取り下げ、2025年、死刑が確定した。

 京アニ放火殺人事件の犠牲者数は、戦前に発生した津山事件(1938年、死者30名)を上回る。1950年代以降では最悪の事件だと言える。

大津市身体障害者リンチ事件(2001年)

 半身不随を患い、全日制高校に進学した青木悠くんに対し、「生意気だ」と中学時代の同級生らが暴行を加えた事件。Wikipediaでは表現がぼかされているが、信じ難いような苛烈なリンチが行われ、被害者は死亡。このリンチの内容は、詳細が書かれた投稿がいくつかあるが、とても正気のままではいられないようなものだ。加害者側は未成年であったことから無罪放免となり釈放された。

女子高生コンクリート詰め殺人事件(1988年)

 極めて残忍な殺人事件として有名なこの事件。女子高生を拉致監禁し、何十日間にも渡って凄惨な暴行を加えて死亡させた。信じ難いグロテスクな暴行を与え続けており、経過を読むだけで吐き気がするようなこの事件は社会に衝撃を与えた。

 週刊誌の実名報道や、無関係な人への中傷などの問題も生んだほか、マスメディアが被害者女性を問題視する、いわゆるセカンドレイプのような問題も発生した。

史上最悪の「テロ」

 世界では毎年のように悲惨なテロが発生しているが、その中でも一際悲惨なのは「9.11事件」だろう。

アメリカ同時多発テロ(2001年)

 イスラム過激派組織アルカイダがアメリカに対して起こしたテロ事件。実行犯は9月11日、旅客機4機をハイジャックしてワールドトレードセンタービルや米国防総省に激突させた。死者数は2996名と、人為的な犯罪としては最悪の規模である。日本人24名も犠牲となった。更に、2棟からなるワールドトレードセンターを崩壊させる等して100億ドルもの被害を生じさせた。

 これを契機に対テロ戦争が始まった。アメリカはアフガニスタンへ侵攻し、アルカイダと、それを匿うタリバンとの長い戦争が始まった。また、首謀者のビンラディンは2011年にパキスタンで米軍により殺害された。最終的に米軍はアフガニスタンから撤退し、2021年にタリバンが政権を掌握した。

 アフガニスタンおよびパキスタンでの戦費は230兆円、関連する費用を含めれば880兆円もの費用がかかり、約90万人もの死者が出たとする報告もある。

史上最悪の「金融事件」

 事件は人だけではない。カネも事件の関係者となる。

バーナード・マドフ事件(1970年代〜2008年)

 年率10%の高配当を謳って出資金を集め、実際はその金を配当に充てて残りを着服するという自転車操業の「ポンジ・スキーム」と呼ばれる手口による出資金詐欺事件。2008年ごろのサブプライムローン問題を機に払い戻しを求められたが払いきれなくなり、やがて事件が露呈した。

 詐欺を裏で働いている中、マドフは米ナスダック証券市場の会長も勤めており、市場が彼を信用していたことがうかがえる。映画監督のスピルバーグ氏などの著名人のほか、日本も野村證券など複数の金融機関が被害者となった。被害額は500億ドルを超え、詐欺の規模は680億ドル(約7兆円)にも上ったようだ。巨額不正を見抜けなかったアメリカ証券取引委員会も批判された。

富士銀行巨額不正融資事件(1991年)

 巨額の金融犯罪は日本でも発生した。富士銀行(現在のみずほ銀行の前身となった銀行の一つ)が架空の預金証書を複数社に発行し、それらの会社が証書を使って融資を受けていた事件。不正全体の総額は8000億円を超え、金額ベースでは日本最悪規模であり、銀行の信用を揺るがす大犯罪である。

 このほか日本では、2007年に露呈した巨額マルチ商法事件「円天事件」も被害額が1000億円を超えている。

特筆すべき事件事故があれば追記します。

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