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誰にも見られなかった善意【SF小説】

 あなたが
この記事をタップして下さったことに
心から感謝いたします。

 前回に引き続き
AIを編集者に迎えて、
SFファンタジーを
書かせて頂きました。

 よろしければ
お読みください。

【あらすじ】

 近未来。
人々の善行が「ギブ・スコア」として
数値化される社会で、高校生の春野凛は
評価のために親切をする風潮に
違和感を抱いていた。

 ある日から、
彼女が行った善行だけが
なぜか記録されなくなる。

 しかしその後、
凛は謎のシステム「ナイト・ログ」に招かれ、
自分が助けた人々の行動が
さらに別の誰かを救い、
見えない善意の連鎖となって
広がっていることを知る。

 拍手も称賛も得られない小さな親切が、
遠い未来で何千、
何万もの人生を支えていた。

 やがて凛は、
本当に価値のある善意とは
評価されることではなく、
誰かの未来へ静かに
受け継がれていくことだと気づいていく。


 二〇三八年。

 人々は「いいこと」を数値で
 見られるようになった。

 スマホには標準で
 《ギブ・スコア》という
 アプリが入っている。

 席を譲れば一ポイント。
 落とし物を届ければ三ポイント。
 献血をすれば十ポイント。

 AIが街中のカメラや記録を参照し、
 自動的に加点する。
 善行は可視化されたのだ。

 しかも、
 《ギブ・スコア》が高くなると、
 「人が欲しがるもの」
 が手に入るようになる仕組みだ。

 《手に入るものの例》

 1. 税金の減免
 善行が多いほど税金が安くなる。
 → 人々は節税のために親切をする。

 2. 医療優先権
 病院の予約や高度医療を優先的に受けられる。
 → 善意が保険のようになる。

 3. 住宅・家賃補助
 ポイントに応じて家賃が安くなる。
 → 「善人ほど住みやすい街に住める」。

 4. AIによる推薦枠
 進学や就職で有利になる。
 → 善意が履歴書の一部になる。

 5. 交通優遇
 新幹線や飛行機のアップグレード。
 → 善行で快適な移動を得られる。

 6. 寿命延命
 優先的な医療によって寿命が延びる。
 → 「親切すると長生きできる」

 7. 災害時優先支援
 災害や非常時に救援順位が上がる。
 → 善行が安心の備えになる。

 8. 発言力の増大
 SNSや公共投票で一票の重みが増す。
 → 「善人ほど社会を動かせる」。

 その結果、社会は少しだけ優しくなった。
 だが同時に、少しだけ息苦しくもなった。

 誰もが善人になろうとした。
 いや、正確には。
 善人に見られようとした。

 高校二年生の春野凛は、
 その仕組みが嫌いだった。

 駅で転んだ老人を助ける人々。
 その直後、スマホを見る。

 ポイントが入ったか確認するためだ。

 SNSには、
 「今日は二十ポイント獲得!」
 「困っている人を見かけたら助けよう!」
 そんな投稿が並ぶ。

 凛は思う。
 それって本当に優しさなんだろうか。

 ある雨の日だった。

 凛は帰宅途中、古い商店街を歩いていた。
 人通りは少ない。

 突然、道端でうずくまる男性を見つけた。
 スーツ姿の中年だった。
 顔色が悪い。

 「大丈夫ですか?」

 声をかける。

 「……少し、めまいが」

 凛は救急相談窓口へ連絡した。
 しばらくして救急車が来る。
 男性は運ばれていった。

 凛は帰宅した。
 スマホを見る。
 ポイントは増えていない。

 おかしい。
 救助行為は最低でも五ポイントのはずだ。

 翌日。
 学校で友人の美羽に話した。

 「たぶんカメラの死角だったんじゃない?」

 「そんなことある?」

 「あるでしょ。古い商店街だし」

 美羽は笑った。

 「でも残念だったね」

 「何が?」

 「ポイント」

 「別に欲しくないし」

 「嘘だ」

 凛は返事をしなかった。
 本当に欲しくなかった。

 数日後。
 学校帰り。

 凛は再び商店街を通った。
 すると、
 見知らぬ老人が店先で荷物を落としていた。

 りんごが転がる。
 凛は拾った。

 「ありがとう」

 老人は頭を下げる。
 ポイントはつかなかった。

 翌週。
 迷子の子どもを交番へ連れて行った。

 ポイントはつかなかった。

 その翌週。
 捨て猫を保護した。

 ポイントはつかなかった。

 「おかしい」

 凛はつぶやいた。
 どうやら商店街周辺だけではない。
 自分の善行だけが記録されていないようだった。

 問い合わせをした。
 運営AIから回答が来る。

《異常は確認されません》

 それだけだった。
 妙な話だった。

 しかし、もっと妙なことが起き始める。
 凛が助けた相手が、
 次々と誰かを助け始めたのである。

 救急搬送された男性は、
 その後ボランティア団体へ寄付をした。

 荷物を落とした老人は、
 近所の子ども食堂へ毎日顔を出すようになった。

 迷子だった子の母親は、
 地域の見守り活動を始めた。

 偶然かもしれない。
 そう思った。
 だが偶然にしては続きすぎていた。

 ある日。
 凛は帰宅途中に小さな封筒を拾った。
 中には手紙が入っていた。

 差出人は不明。
 たった一行だけ書かれている。

《あなたの優しさは記録されています》

 意味が分からなかった。
 気味が悪い。

 その夜。
 眠れずにいた凛は、
 スマホに見慣れない通知を見つけた。

《招待が届いています》

 タップする。
 画面が黒くなった。
 そして表示された。

《ナイト・ログ》

 初めて見るシステムだった。
 パスワード入力欄がある。
 適当に「0000」と入力する。

 開いた。
 そこには一覧が並んでいた。
 助けた人の名前。
 日時。
 場所。

 そして。
 その人が後に誰を助けたか。
 凛は息を呑んだ。

 救急車を呼んだ男性。
 →大学へ寄付

 寄付によって奨学金を得た学生。
 →介護施設を設立

 その施設に入所した高齢者。
 →孤独死を回避

 数字が表示される。

《派生支援人数 8,721名》

 「え……」

 凛は画面を見つめた。
 別の記録を開く。

 迷子の子ども。
 →母親が地域活動開始
 →不登校児童支援
 →相談件数増加
 →自殺未遂防止

《派生支援人数 3,104名》

 凛は鳥肌が立った。
 善意が連鎖している。
 誰かを助けた行為が。
 見知らぬ誰かを。

 さらにその先の誰かを。
 何千人も助けている。
 その数字が記録されていた。
 ページの最上部には説明文がある。

《ギブ・スコアは見える善意を評価する》

《ナイト・ログは広がる善意を記録する》

《こちらは非公開です》

 凛はしばらく画面を見つめた。

 翌日。
 学校で美羽に話した。
 もちろん信じてもらえなかった。

 「それって秘密結社じゃん」

 「私もそう思う」

 「で、何ポイントだったの?」

 「ポイントじゃない」

 「じゃあ何?」

 凛は答えられなかった。
 数字はあった。
 だが評価ではなかった。

 未来だった。
 誰かの人生だった。

 それから数か月。
 凛は変わった。
 相変わらずポイントは増えない。

 SNSでも目立たない。
 だが気にしなくなった。

 見えない場所で善意は広がる。
 それを知ったからだ。

 夏休み。

 駅前で動画配信者の少女を見かけた。
 フォロワー三百万人。
 善行配信で有名な人物だった。

 「今からホームレス支援します!」

 カメラへ笑顔を向ける。
 周囲の人々が拍手する。
 大量のポイントが入る。
 配信は大成功だった。

 だが、その夜。
 その有名人の
 ナイト・ログを見ると。

《派生支援人数 17名》

 意外なほど少ない。
 一方、
 無名の清掃員が毎朝続ける駅前掃除。

《派生支援人数 92,311名》

 数字が桁違いだった。
 凛は理由を考えた。

 やがて気づく。
 派手な善意は見られて終わる。

 静かな善意は引き継がれる。
 引き継がれた善意は増殖する。

 ある冬の日。
 ナイト・ログから通知が来た。

《管理者との面会資格を獲得しました》

 指定された場所は古い図書館だった。
 地下へ降りる。

 そこに一人の女性がいた。
 白髪の老婦人だった。

 「初めまして」

 「あなたが管理者?」

 「ええ」

 凛は尋ねた。

 「これは何なんですか」

 老婦人は微笑む。

 「人類は長い間、
 結果しか見てこなかったのです」

 「結果?」

 「賞賛とか、お金とか、名声とか」

 彼女は続けた。

 「でも本当に重要なのは波紋です」

 「波紋」

 「石を投げた瞬間ではなく、
 どこまで波が広がったか」

 静かな声だった。

 「善意とは未来へ届く技術なのです」

 凛は黙って聞いた。

 「多くの人はギブ・スコアのために
 善行を行うよなりました」

 「はい」

 「誰にも見られない善行はやめてしまう」

 老婦人は言う。

 「しかし、あなたは違った」

 凛は少し照れた。

 「そんなことないです」

 「いいえ」

 老婦人は首を振る。

 「大抵の人は数字に酔います」

 そして。
 小さな端末を差し出した。

 「最後の記録を見ますか」

 画面を開く。
 そこには驚くべき内容が表示された。

《春野凛》

 凛の名前だった。
 さらに未来予測が続く。
 百年以上未来の記録。
 凛は震えた。

 「こんなの……」

 最後の行に目が止まる。

《派生支援人数》

 数字は。
 ゼロが多すぎて読めなかった。

 「間違いじゃ……」

 「いいえ」

 老婦人は言った。

 「あなたがこれから助ける人々の総数です」

 「そんなことあるわけ」

 「あります」

 彼女は静かに続けた。

 「人は自分が思うよりずっと大きな存在です」

 図書館を出た時。
 雪が降っていた。
 凛は空を見上げた。

 世界は相変わらずだった。
 SNSは騒がしい。
 人々は評価を求める。

 善意は数値化される。
 何も変わらない。
 普通の人はギブ・スコアが
 付かなければやめる。

 しかし、凛は記録されないと知っても
 人を助け続けた。

 ナイト・ログは、
 「評価をされなくても善意を失わない者」
 だけを招待する。

 誰にも見られなかった優しさが。
 誰にも褒められなかった親切が。
 いつか遠くの誰かを救うかもしれない。

 その連鎖は見えない。
 けれど消えない。
 凛は駅前で転びそうになった少年を支えた。

 「あ、ありがとう」

 少年は恥ずかしそうに笑う。

 「気をつけてね」

 それだけ言う。
 スマホは鳴らない。
 ポイントも増えない。
 拍手もない。

 けれど。
 凛は知っている。
 世界を変えるのは、大きな英雄ではない。

 誰も見ていない夜に、
 そっと差し出された手なのだと。

 そしてその夜。
 ナイト・ログには、
 新しい一行が記録された。

《派生支援人数 計測不能》

 その理由は簡単だった。
 優しさの連鎖は。
 まだ終わっていなかったからである。


 最後までお読みくださいまして、
誠にありがとうございました。

 私はいつも、
あなたの心の平穏も
心から願っております。

 どんなときも、
あなたからの
『スキ』、『フォロー』、『ご支援』
に心から感謝申し上げます。

 それでは、
あなたの心を軽くしたい
もっちんでした。

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