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「これが写真だ」という表明  GC magazine 個展「魁*タギッテルステイト」(see you gallery)

写真の世界の「いまならこれ観よう!」を紹介していきます。

「夜明け前」第1回のグランプリ受賞者であるGC magazine が、東京・恵比寿で個展を開催中です。
see you gallery での「魁*タギッテルステイト」。

《滾旗!!》

 会場のギャラリーに足を踏み入れると、そこには大きなチェッカーフラッグが据えられており、風を受けてバタバタとひるがえり続けています。《滾旗!!》と題された作品のインスタレーションです。
 まるで映画の劇的なワンシーンが三次元化されているかのよう。またとない空間が現れ出ていて度肝を抜かれますが、この展示が何を表しているかは、にわかにわかりません。

 考えるのはそこそこにして、会場の奥へ進むと、こんどは映像作品が上映されています。《GACHINKO BOOT CAMP》です。武道の鍛錬中だったりするのか、男性がひとり大汗をかきながら、重そうな塊を持ち上げては掲げる動作を繰り返しています。 こちらも行為の意味はわからないものの、映像自体のクオリティとユーモアに魅せられて、つい画面に見入ってしまいます。 

《GACHINKO BOOT CAMP》(左)

 さて、もういちど《滾旗!!》のフラッグがたなびく空間へ戻って、いったいこれが何なのかに思いをめぐらせます。十数人のアーティストコレクティブであるGC magazine は、これまで一貫して「写真の錯綜と当惑」というトピックを扱ってきたといいます。メンバーそれぞれが写真と向き合っていくなかで、いつからか生じた無意味な規範(「写真とはこうあらねばならぬ」といった言説など)への疑問が募っていたようで、それら不満をユーモアでくるみながら乗り越えていこうというのが、GC magazineの活動の核にあるようなのです。
 チェッカーフラッグは、モータースポーツのレースで、1位のレーサーがゴールした瞬間に振られるものです。ルール上、フラッグが振られると、ゴールの証明となります。仮にコースを50周回るレースにおいて、ミスにより49周目でフラッグが振られても、それはゴールと認められてしまうようです。チェッカーフラッグには、圧倒的な決定権があるというわけです。
 おもうに、チェッカーフラッグを振ることは、どこか写真を撮ることと似ています。フラッグは振ることで勝者を決めレースを終わらせます。写真を撮るのも、シャッターを押すことによって、その瞬間を決定的なものとして画面に定着させてしまいます。
 延々と続いていく時間の、ある瞬間にぽんと句読点を打ち、その瞬間を特別なものにしてしまう。チェッカーフラッグと写真に共通する機能はここにあるのでしょう。旗がたなびくインスタレーションは、「これも写真だ」もしくは「これぞ写真だ」というGC magazine なりの表明なのかもしれません。

 男性がレンガのような塊を延々と掲げる映像作品《GACHINKO BOOT CAMP》のほうはどうでしょう。こちらはどうやら、土門拳によるある逸話が、元になっているようです。
 土門拳といえば、日本の写真史に名を残す写真家です。「絶対非演出の絶対スナップ」という言葉を掲げ、一切の演出を排除し、写真のリアリズムを追求したストイックな作風で知られます。
 土門拳が若きころ、自身に課したのが「素振り」でした。カメラと同じ重さのレンガを用意し、いついかなるときも瞬時にカメラを構えられるよう素振りをし、フォームを固めたのだそう。
《GACHINKO BOOT CAMP》は、土門拳のこの逸話へのオマージュです。映像のなかで男性がしているのは、写真をよりよく撮るための筋トレであり素振りなのでした。
 土門拳の時代とは異なり、いまや写真はデジタルが主流で、カメラはすっかり軽量化されています。そもそも画像はスマホで撮って画面やモニターで見るのがふつうです。何なら欲しいイメージは、AIに頼んで生成してもらえばいいということにもなってきています。
 けれど写真を撮るという行為は本来、実在する外界と生身の自分が向き合うことであったはず。どれほどテクノロジーが進化しても、写真のフィジカルな側面を忘れずにいたい。この映像作品には、GC magazine のそんな強い意思が、たっぷり含まれているようにおもえます。

 アーティストコレクティブGC magazine の気概を、現場でぜひ体感してみてはいかがでしょう。


GC magazine「魁*タギッテルステイト」
see you gallery
2025年 5月31日~6月17日
https://seeyougallery.com/

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