低空飛行をつづけるよりも、いっそ歩いてしまう
とりあえず楽なほうでいく
(2025年5月雑記+読書メモ)
お天気のさだまらない季節ですが、みなさまお変わりないでしょうか。
わたしはこじれた風邪とつきあいながらの5月になってしまいました(6月のいまは復活)。連休明けに押し寄せるあれこれをやり過ごしながらわかったのは、無理にいつもの目標を達成しようとしなくてよし、ということでした。こだわってもこだわらなくても、結果はおおむね一緒なんですね。
地面すれすれを飛びつづけるより、いったん降りて歩いてしまったほうが楽に進める。ちょっと複雑な気持ちですが、ひとつの学びとなりました。
1 いつものこと
文芸同人誌、note関連
所属同人誌2誌「ignea」「星座盤」で自作の提出と合評がありました。自身とは違う視点で読みこんでいただけるのは、とても勉強になりますし、励みになります。シュールで小さな作品が多いからこそ、リアリティのある表現と視野の広さを身につけていきたいと感じました。
また、noteでは作品をご紹介いただいたり、noteでの出会いをきっかけに素敵なお便りをいただいたりと、継続していたからこそのうれしいできごとがありました。
どちらも「あなたの作品だね」と受け入れてもらえる貴重な場。GW中に仕上げられなかった掌編も、引き続き取り組んでいきたいと思います。
2 やってみたこと
国際博物館の日(5/18)に無料観覧へ
5月18日は「国際博物館の日」。無料開放してくださる施設のうち、国立国際美術館(大阪市)の「コレクション2 Undo, Redo わたしは解く、やり直す」に行ってまいりました。本展のタイトルはルイーズ・ブルジョワ作品「I Do, I Undo, I Redo」や手塚愛子氏をはじめとする作家の制作から着想されたものとのこと。既存のものをいったんほどいて、編みなおす。創作への思いが高まるような展示でした。ちなみにこちらの美術館、映画『寝ても覚めても』のロケ地なんですよ。
来年はぜひ、お近くの施設をチェックなさってみてくださいね。
3 やめてみたこと
ひとつの文章をこねつづける
5月前半は療養に専念していたぶん、後半で複数の締切に追われることになりました。ですが、そのおかげで「できないものは仕方ないね~」と、どれもある程度できりをつける訓練ができました。結果的にそれがよかったのです。大体のものができたら、フィードバックをもらって精度を上げていく。それを繰り返すほうが自分には向いていそうでした。思えば、翻訳勉強会の課題でも、文章をこねるほど原文から離れていくような……。自身が納得するまでとことんやり切ってから手渡すのもひとつですが、素直な感覚を差し出して受け手とともに練っていくのもひとつ、ですね。
4 印象に残った本(3選)
5月はほとんど本が読めなかったので、6月の読書会に推薦した本を代わりにご紹介します。「困難を超えてつながる」をテーマに、文庫から三つ選んでみました。気になられるものはあるでしょうか。ちなみに、メンバーと相談した結果、次回は『三つ編み』に決まりました。
①『三つ編み』レティシア・コロンバニ著/齋藤可津子訳
三つ編みをモチーフに、三人の女性の人生がひとつに編まれていきます。国や境遇は異なっていても、宿命に立ち向かう姿には通じるものがあり、まるで自分のことのようにハラハラ。ジャンルとしては「フェミニズム小説」、小説を書くことが社会的なアクションでもあることを感じさせてくれる作品です。フランスでは200万部以上のベストセラーとなり、30言語以上で翻訳されているとも。著者はフランスの映画監督なのですが、本作を後に自身で脚本化・映画化(2023年『La tresse(英題The Braid)』)しているようです。
所属している読書会は小説の書き手が多いので、
・「当事者」に代わって語ること
・「三つ編み」になぞらえた構成の効果
・日本の人物を登場させるとしたら?
など、意見交換できるポイントも色々あるかと思いました。
②『あなたのことが知りたくて : 小説集 韓国・フェミニズム・日本 』チョ・ナムジュ、 松田青子ほか著
大阪・九条のMoMoBooksさんで購入。今年2月にこちらの書店でイベントをされていた小山田浩子氏、先日ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏をはじめ、いまの文学シーン最前線で活躍する12人の作品が、韓国と日本、交互に収められています。個性とその響きあいが感じられる豪華な一冊で、これから読みたい作家さんの発見にもつながりました。そばにいる「あなた」こそ、実はよく知らないものだなと気づかせてくれます。
<Amazonの紹介ページより>
チョ・ナムジュ「離婚の妖精」小山内園子/すんみ=訳
松田青子「桑原さんの赤色」
デュナ「追憶虫」斎藤真理子=訳
西加奈子「韓国人の女の子」
ハン・ガン「京都、ファサード」斎藤真理子=訳
深緑野分「ゲンちゃんのこと」
イ・ラン「あなたの能力を見せてください」斎藤真理子=訳
小山田浩子「卵男」
パク・ミンギュ「デウス・エクス・マキナ deus ex machina」斎藤真理子=訳
高山羽根子「名前を忘れた人のこと Unknown Man」
パク・ソルメ「水泳する人」斎藤真理子=訳
星野智幸「モミチョアヨ」
(解説=倉本さおり)
③『すべての見えない光 』アンソニー・ドーア著/藤井光訳
第二次世界大戦を舞台に、若きドイツ兵とフランスの盲目の少女が、ラジオの「声」に導かれるように出会います。「壮大なボーイ・ミーツ・ガールの物語」とおっしゃる方の言葉にうなずきました。過酷な状況なのに圧倒的な美しさで、思い浮かべるたびに涙がこみあげてくる場面も。光も声も感動も、いわば波ですね。文庫でさえ約3cmもの厚みなのですが、現実が吹き飛んでしまうくらい、すっかり物語世界に呑み込まれてしまいました。本好きの友にすすめたら、(彼女も記憶が吹き飛んでしまったのか)数か月後に「すごい本があるよ!」と推薦し返してくれました。それほどの力強さを湛えたピュリツァー賞受賞作です。いま、こんな時代だからこそ、みんなで読みたくなりました。
今回も近況報告におつきあいくださり、ありがとうございました。5月はカレンダー上、いつもと違うリズムで過ごされた方も多いかと思います。これから日本はどんどん蒸し暑くなりますので、それぞれに合った過ごし方で楽に調子を整えていけるといいですね。雨の季節も味わってまいりましょう!
<おまけ>
最近は、さわやかな柑橘類に手が伸びます(商店街のお得ねらい)。はまったのは「河内晩柑」。ほろ苦さが、すっきりした甘さの秘密なのでしょうか。ぷりっとした食感も後押しして、ほんとうにいくらでも食べられそうです。皮をマーマレードにしても絶対においしいはず。柑橘好きの方、そうでない方もぜひ!
