第二次世界大戦後から現在までの物価 推移
こちらのグラフは第二次世界大戦後から現在までの物価推移を表している。

出典:日本銀行、総務省
まず特筆すべきは、戦後1945~1951年の日本史上最大のハイパーインフレであり、卸売物価で見れば、物価はこの間約100倍になっている。
ハイパーインフレの背景
そもそも戦前から財政拡大で通貨が大量に発行されていたところに敗戦による供給ショックが重なった。また、戦前の物価は統制された物価であり、敗戦後、物価抑制に歯止めが効かなくなったという面もある。
現在58歳の私は当然生まれていないのでリアルな感覚はないが、GHQ統治が1945年から1952年まで続くなか、日本政府に対する国民の信任はどの程度あっただろうか。なにより大きな敗戦のショックは政府に対する信任を失わせた可能性がある。
「この国は、そして自分達は一体どうなってしまうのか?」「これからどうなるのか明日も分からない、でも食べていくしかない」という不安があっただろう。
そんな時、日本政府発行の紙のお金に信用が生まれ、粛々と経済運営されることは考えにくく、人々は米などのモノの方が信頼できたことだろう。どんどん紙屑のようになる紙幣、これは使えないという感覚があったと思う。現に闇市では紙幣の代わりにコメやたばこが他の物の価値を測る基準になったという言い伝えも聞かれる。

ハイパーインフレの結果
実はこの間、1946年には預金封鎖、新円切り替えが行われ旧紙幣は使えなくなる。そして更に財産税も課せられる。
こうした通貨回収、増税策は①インフレを抑制し政府債務を整理するため、さらには②戦争支援者、資産家の勢力を削ぎ、再配分を行う為などと言われているが、インフレ抑制面では殆ど効果がなく1951年までハイパーインフレが続いた。
面白いことに、実際にはこのハイパーインフレによって戦前の巨大な政府債務は、ほぼなくなった。資産税ではなく、ハイパーインフレが政府債務を削減したのだ。
ただ同時に、戦前、政府の財政支出により戦争需要を獲得した人々の巨大な現金資産はほとんど無価値になり、資産格差という意味では、戦前あった大きなギャップはかなり解消された。
一方でこの間、預金封鎖の直前に現金をレイヨンに変え、この価格高騰で得た資金を虎ノ門周辺の土地購入に充てた森ビル創業者の森泰吉郎(たいきちろう)氏などは、戦後インフレで資産を大きく増加させた例の一つだ。このハイパーインフレの期間に資産を保有する人は大きく入れ替わった。

卸売物価と消費者物価
ところで先ほどの物価のグラフを見ると、赤い卸売物価の線と、青の消費者物価の線に乖離がみられる。この点について補足する。

出典:日本銀行、総務省
まず戦後1946年まで政府が集計する公式な消費者物価というものは存在しなかった。戦後GHQ統治下にて初めて「消費者物価」というものが作成されるようになったのだが、これは戦後の混乱期に作られた指標だ。データ取得上の物価は、市中の公表価格が元になるが、この価格での取引は配給物資など限定的で、実際に闇市等で取引されている価格はもっと高く、大きな差があったとみられる。
また消費者物価は食料品などが中心であり、配給される物資の表面価格は低く据え置かれていた可能性もある。
一方で卸売物価は企業間の価格なので、ある程度実勢を反映していた可能性が高く、個人的見解だが、この間の物価動向、水準をみるには卸売物価の方が適しているように思う。
時間の経過とともに消費者物価は企業物価に収斂しているので、おおむねそうした理解で良いと考えている。
戦後のもう一つのインフレ
さて、戦後のもう一つのインフレは、1973年からのオイルショック時のインフレだ。
この時の混乱は原油を中心とした供給ショックが要因だったが、オイルは1970年代前半1バレル2~3ドルで推移していたものが、1980年代には1バレル30ドル程度と10倍程度に上昇した。
またオイルショックが起きる2年前、1971年に米国はドルと金との兌換を停止。世界の通貨制度が金本位制から管理通貨制度に移行する、いわゆるニクソンショックと呼ばれる事態が発生した。
要は米ドルの信用の裏付けが“金”から米国という“国家”に変わったわけだが、基軸通貨であったドルの価値の見直し、つまり通貨価値が下落したことで、ドルベースで見た物価は大きく上昇することになった。

出典:日本銀行、総務省
冒頭のグラフのオイルショックの部分、これは縦軸の1メモリで2倍になる、いわゆるログスケールグラフだ。戦後のインフレが激しくオイルショックの傾きは目立たないが、それでもこの時期、薄い赤い帯の10年間で物価は2倍になっている。その間ドル円は300円から200円にかけて円高が進む局面だったが物価は2倍になった。為替の影響ではなくそれだけ元になる原材料などの物価そのものが上がったと考えて良いと思われる。
その後は主に供給力の向上により物価が安定に向かっていった。江戸時代に供給力の拡大で物価が比較的安定していたことと背景的には似ている。
そしてバブル崩壊、デフレ期となり物価はやや落ち込むが、それでもこれまでみた過去の物価推移を見れば安定推移していたと言える。
続いて、物価動向の歴史的推移にみる、インフレ・デフレのパターン認識
(近日公開予定)
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