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中国人は、新海誠が大好き!「詩季織々」

今回は、映画「詩季織々」について書いてみたいと思う。
これは新海誠作品を制作することでお馴染み、コミックスウェーブフィルムのアニメである。

ただ、このコミックスウェーブという会社って

・宮崎駿のジブリ
・細田守のスタジオ地図
・庵野秀明のカラー


といった系統とは少し違うっぽいのよ。
というのも、今挙げた3つの(ジブリ、地図、カラー)と違い、コミックスウェーブは新海誠自身が仕切ってないらしいから。

・・いや、そうは言ってもこの会社、新海さんの為に作られたものであるのも確かなんだ。
それだというのに、会社と彼の関係は
制作会社(マネジメント業務も含む)⇔契約作家
という何ともクールな関係。

新海誠作品以外のコミックスウェーブ作品

よってコミックウェーブという<ブランド>は新海作品以外、ほとんど信頼されてません


そう、ジブリ/地図/カラーといったところには各自に<ブランド>の強みがあるのに、ここにはそういうのがほとんどないのよ。

なんせ、新海さんと並ぶ契約作家は、つのだじろうだし(笑)

だから、この会社がリリースした作品って、フタを開けてみるまでは中身が分からないともいえるんだ。
いうなれば、

日本アニメ界の<闇鍋>だね

めっちゃ美味いかもしれんし、めっちゃ不味いかもしれん・・。

でも新海作品を見る限り、その作画のポテンシャルが一流なのは事実だろう。
特に美術は日本屈指。
だから能力はあるんだろうけど、なぜか普通のTVアニメを作ったりはしないところなんだよね。
多分それをやっちゃうと、本命の新海誠の仕事に支障が出るからだろう。
よって、
支障の出ない範囲で小作品を手掛ける⇒ヘンテコなアニメができる
というのがコミックスウェーブの現状である・・。
なんかモッタイナイな~、と正直思うけど。

「詩季織々」(2018年)

で、この「詩季織々」だが、おそらく見た人は少ないと思う。
なぜなら、

興収が僅か2000万らしいので・・(笑)


こんなの、どう考えても大赤字である。
せっかく新海作品で儲けたおカネを、めっちゃ浪費しちゃったということか。
まぁ、Netflix契約作品ゆえ最終的には回収できるんだろうけど、それにしても2000万は酷い。

でさ、上の画像↑↑がこの映画のイメージビジュアルらしいんだが、こういう建物と青空とタイトルだけで構成されたビジュアル、皆さんどう思う?
これ見て、「わぁ、面白そう!」と思う人が世の中にどれだけいますか?
つーか、これ最初からヒット狙う気ねーじゃん。
モッタイないよなぁ、内容は悪くないのに。
・・あ、まず最初に言っときますけど、

この映画、内容は結構いいんですよ?

この作品の企画は、もともと中国から来たものらしい。
まず総監督がリ・ハオリンという中国のアニメ作家で、この人は新海さんの「秒速5センチメートル」に感銘を受けた系らしく、どうしてもコミックスウェーブと仕事をしたかったみたいだね。
なるほど。
それで日中合作という形になって、中国側が2編、日本側が1編、合計3編のオムニバスという形になったわけか。

1本目「陽だまりの朝食」監督/イ・シャオシン

2本目「小さなファッションショー」監督/竹内良貴

3本目「上海恋」監督/リ・ハオリン

一応、キャラデザと作画監督は3本とも日本側がやったっぽく、なるほど、ちゃんとコミックスウェーブっぽいテイストが出ている。
ただ登場人物は全員中国人で、舞台も中国。
プロットも中国側が作ったものだろう。

特に3本目は企画者のリ・ハオリンさんが自ら監督をしてて、おそらく彼はこれをやりたいが為にこの企画を立てたんだろうね。
なるほどというべきか、これはもう思いっきり「秒速5センチメートル」の世界観、甘酸っぱい<男女すれ違い系>のやつである。
ただ「秒速」の方はあまりに切ないラストなので、あれをリ・ハオリンさんなりに、もう少し救いのあるラストにアレンジしてみました、というところか。

うむ、オムニバスとして、なかなかの佳作だったと思う。
近年「時光代理人」「魔道祖師」などを見て薄々思ってたんだが、やっぱり中国のレベルは確実に上がってきてるよね?
・・でも、それもそのはずさ。
中国は国策としてアニメの強化を図ってるから。
皆さんはご存じか知らんが、

中国政府は自国のアニメ発展を目的とし、国外アニメのTVゴールデンタイム放映を06年以降禁止してますから・・

スゴイね、やっぱ中国という国は。
国がそこまでやっちゃうんだ?
というか、日本はそういうことをしなくとも、普通にゴールデンタイムでのアニメ放送はほとんどしてませんけど(笑)。
それでも、中国がアニメ育成に本気ということは伝わってくる。
この「詩季織々」もまた、そういう国策の一環といえるかもしれん。

一方、日本政府のアニメ支援政策はどうかというと、

あの文化庁メディア芸術祭が2022年をもって廃止されました・・(笑)

・・これ、毎年楽しみにしてたのになぁ。
少なくとも湯浅政明あたりは、これキッカケにしてブレイクしたようなもんだし。
多分、日本政府は「日本のアニメは放っておいても大丈夫、このレベルにはどの国も追いつけまい」とか考えてるんだろうね。
この国の危機感、ホント大丈夫かいな?

言っとくけど、中国アニメの歴史は日本より古いんだよ?
日本の最古長編アニメは「白蛇伝」で1958年だけど、対して中国の最古は「西遊記 鉄扇公主の巻」で、これは1941年の制作である。

日中戦争中に、こんなもん作ってたか・・。

じゃ、再び映画の内容の方に話を戻そう。
まぁ、本作は率直にいって「懐かしい」テイスト、ノスタルジー系である。
こういうの、中国は好きなんだろうなぁ・・。
「時光代理人」とか思いきりそっち系だったし、あ、そうそう、私は3本目の「上海恋」見て、これを思い出したね↓↓

「ラブソング」(1996年)香港

一組の男女がず~っとすれ違い続け、でも最後の最後、顔を合わせたところでエンディング、というオチ。
こういうの、多分あっちの人たちのどストライクだね。
私も嫌いじゃないけど。

で、本作はオムニバスの3本とも、その基本コンセプトは

「あぁ、昔は良かったなぁ。なのに今は・・」

といったテイスト。
高度経済成長の中で、おそらく中国人は疲れてますな・・(笑)。

厳しい格差社会の中で、貧しさから脱却して都会に出ることが人生の勝ち組という絶対的価値観がありつつも、でも本当の幸福は昔の貧しい時代の中にこそあったんじゃないか?と考えてしまう主人公たち。
・・うんうん、分かる分かる。
こういうのって、中国人も日本人も関係ない、一種の<普遍性>だよね。
ただ、こういうウエットな話となると、今の日本じゃどこか照れみたいなのがあって(こっ恥ずかしい?)、正面切っては誰もやろうとはしないんですよ。
「あぁ、小さい頃におばあちゃんと食べたビーフン、美味しかったなぁ」とか、日本のアニメならまずやらないでしょ?
なんか、湿っぽくなっちゃうから。
ほら、今の日本アニメは異世界転生系作品がやたら多いけど、その転生した主人公が現世に残してきた家族を思うシーンは皆無でしょ?

たとえばカズマが、ちょっぴりでも家族に思いを馳せたことがありましたか?

・・ないわな。
というか、<家族><田舎>、そういうのに思いを馳せる描写そのものを、日本の現代アニメは敢えて避けてるようにも思う。
そういうのを出すと、どうしても<昭和>感が出ちゃうから。

一方、中国の作家さんたちは、臆さずに恥ずかしいことをやってくれるのはとてもいいスタンスだと思う。
それダサくね?という表現でも、実に堂々とやっている。
逆に、あまりにも堂々と真正面からやってるもんで、逆にこっちの方が斜に構えた自分のスタンスを恥じちゃうぐらいさ。
で、「詩季織々」はまさにそういう恥ずかしい系のオムニバスで、3編とも全部が青臭く、どっちかというとダサいテイストである。
でも、それこそがこの作品最大の味なのよ。

ただ、プロモーションが非常に難しい作品であるともいえる。
だって、本作では誰も異世界に行かないし、誰も特殊能力をもってないし、誰もセカイを救わないし、ただ凡人たちが悶々としながら右往左往しているだけである。
・・うん、これ興収2000万というのも十分納得かも(笑)。

もし、毎回新海さんをフォローする川村元気プロデューサーがここに絡んでたら多分何らかのテコ入れをしたんだろうけど、でも本作彼は全く関与してなさそう。
あの人、新海誠に興味はあっても、コミックスウェーブには微塵も興味ないんだろう(笑)。

一番左が総監督のリ・ハオリンさん

・・あれ?
自分がこの作品を誉めてるのか貶してるのかよく分からなくなってきたけど、はい、一応誉めてるスタンスです。
ちゃんと良作ですよ。
まず、コミックスウェーブお馴染みの美少女キャラデザを見られる、というだけでも視聴の価値は十分ありますから↓↓

このヒロインの魅力、見て損はありません!


ただ、おカネ出してまで見たいかといえば、それはちょっとねぇ・・。
ゆえに、皆さんにもまずはネットでの無料動画視聴をお薦めしときます。
とりあえず、Google等のネットで「Flavors of youth-shikioriori-」と動画検索すれば見れると思いますので、お試しください。

なお、日本側の監督を務めた竹内良貴というのは本来3DCGの人らしくて、監督はこれが初めてだという。
なるほどね。
で、その映像クオリティはというと、まぁ美術の方は相変わらず完璧なんだが、ただそれ以外が美術のクオリティには釣り合っていない気も・・。
ただ、悪くはないよ。
そして竹内さんをはじめ、新海さん抜きでこうして映画を作った経験は絶対いい経験になったはずである。

ちなみにこの作品は、「君の名は。」大ヒット直後の仕事だったらしい。
ならば、ここで得たものが「天気の子」「すずめの戸締まり」に還元されているんだろうね。


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