「源氏物語」という美少女攻略ゲーム
来年の大河ドラマは、紫式部がヒロインらしいね。
紫式部役は吉高由里子。
私は、「源氏物語」を書いた式部を心から尊敬している。
だって、日本でまだカナ文字が開発されて間もない10世紀に、女性の身で小説を書いたんだよ?
それだけでも驚きなのに、処女作にしてあの大長編ラブロマンスである。
果たして10世紀の海外で、あのレベルの恋愛小説を書けた作家が他にいただろうか。
多分、いなかっただろう。
もちろん海外にも文学作品はあったが、そのほとんどが戦記か寓話である。
一方で式部が書いたものは、平安貴族のリアルを生々しく描写したノンフィクション風の恋愛小説であり、とらえようによっては藤原氏への風刺ともとれなくはないギリギリを攻めた内容だ。
もはや次元が違うよ。
私はなかば日本文学界に同情するんだが、我が国で文学がスタートした瞬間に「源氏物語」という文学史の中でも頂点というべき作品がいきなり出てしまったという悲劇。
これ、あとに続く者が結構しんどいよ(笑)。
まあ、日本って結構そういうのがあるんだよね。
日本でトーキー映画がスタートした瞬間に、いきなり黒澤明と小津安二郎が出てきちゃったりとか。
日本で漫画がスタートした瞬間に、いきなり手塚治虫が出てきちゃったりとか。
日本で歌謡曲がスタートした瞬間に、いきなり美空ひばりが出てきちゃったりとか。
レベルがゆっくり上がっていくのではなく、スタートと同時にいきなりMAXになる。
フェードインでなく、カットインだね。
「源氏物語」とは、そういうMAXのカットインだったんだ。

しかし、同時代にはあの清少納言もいたわけで、平安女子ってのはインテリが多かったのかな。
「妻問婚」の為に歌ばっかり詠んでるエロ男子連中と違い、女子の方はもっと純粋に文字を書くことを楽しんでたのかもしれない。
総じて、男子より女子の方が早熟なものである。
男子が「少年ジャンプ」等の「戦士が悪人を倒す!」みたく単純な物語でワクワクしてる頃に、女子は繊細な心の機微を綴った小難しい少女漫画とか読んでるわけですよ。
私は子供の頃、姉の所有してた少女漫画をいくつかパクって読んでたんだけど、池田理代子の「ベルサイユのばら」とか読んで衝撃受けたね。
あと、大和和紀の「あさきゆめみし」とか、まんま「源氏物語」じゃん。
あと、山岸涼子の「日出処の天子」とか厩戸皇子が主人公の古代史だし、女子ってガキの頃からこんな高尚な話を読んでんの?と正直驚いたね。
そんなこともあって、平安時代に紫式部や清少納言が男子より抜きんでて文学の才能を発揮したのも、あながちあり得ない話でもないな、と。

しかし、皆さんは「源氏物語」というと、まず高校の古文の退屈な授業を思い出してウンザリするだろう。
その気持ちは分かる。
私が「源氏物語」の凄さを知ったのは大人になって口語訳を読んでからのことであり、これ凄いな、と。
何でこんな凄い作品を授業で何度も扱ってたのに全然つまらなかったんだろう、と逆に不思議に感じたね。
ぶっちゃけ文法なんてどうでもいいから、古文の授業はもっとこの作品のストーリー概要であるとか、攻略対象女子の各キャラ設定であるとか、いかに「源氏物語」が美少女シミュレーションゲームっぽいかを生徒に伝えたら、もっと皆の古文の点数は上がると思うんだけどなぁ。
ツンデレもいれば萌えキャラもいるし、ヤンデレまでいるんだから式部はキャラ設定がホントうまいよね。
いや、違うな。順序が逆だ。
「源氏物語」が美少女ゲームっぽいのではなく、むしろ美少女ゲームが「源氏物語」をパクってるんだ。
だから、ツンデレも萌えキャラもヤンデレも、オリジナルの発案者は式部の方なんだよ。
だからゲーム業界もアニメ業界も、本来なら式部に著作権料を支払うべきだと思う。
古文の授業といえば、あともうひとつ、私は「平家物語」も凄いと思う。
こっちは作者不詳なんだが、これを書いた人もまた天才である。
昨年フジテレビ系の深夜アニメでこの「平家物語」をやってたんだが、私は不覚にもこれを見て泣いてしまった。
監督は「けいおん!」で有名な山田尚子なんだが、さすがは女性ならではの繊細な感性というべきか、主人公を平家の人間でなく傍観者の琵琶法師に設定したことで物語の「諸行無常」感がハンパなく強調されており、また主人公を演じた悠木碧が声の演技だけでなく「琵琶語り」を自らやってるという熱演で、私はこの「琵琶語り」で堪らず号泣してしまった。
平家物語、正直スゲーぞ。
こんな凄い作品、なんで古文の先生は面白さを生徒に伝えられないんだ?

さて、話を紫式部に戻そう。
ちょっと気になるのが、大河ドラマのことである。
普通、大河ドラマって物語の核に大きな戦争があるよね。
でも紫式部が生きていた時代って、そんなに大した戦争はなかったはず。
ということは、最初から最後までひたすら日常回?
そんなの、絶対男性視聴者層は離れるよ。
ただし、逆に女性視聴者層は食いつくかもしれない。
私がイメージするのは「セックス・アンド・ザ・シティ」の平安バージョンである。
女性同士がワチャワチャしてるやつ。
つまり紫式部や和泉式部や清少納言あたりが常にワチャワチャして、たまに喧嘩したり、仲直りしたり、仕事でトラブルあったり、でも仲間の協力で成功したり、そういうOLっぽいドラマになるんじゃないだろうか。
「源氏物語」の原稿締め切りが終わったら皆で打ち上げして、式部役の吉高由里子が思わずハイボール飲んじゃう、みたいな。
一説には式部はレズだったともいわれてるので、ちょっと百合要素をドラマに入れてみてもいいかも。
あと、女性向けドラマなら不倫要素も欲しいので、これは平安のジョージ・クルーニーこと、藤原道長に頑張ってもらおう。
・・・ああ、こういう内容なら大河ドラマじゃなくて「月9」でいいや。

