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天才アニメーター沖浦啓之の仕事を見よ!「走れメロス」

今回は、少し古い映画、「走れメロス」を取り上げてみたい。

そう、皆さんもよくご存じ、太宰治の有名小説のアニメ化である。
多分この小説、これまで数回アニメ化されたことがあるのよ。
今回取り上げるのは、そのうちの1992年制作、おおすみ正秋監督のやつね。

「走れメロス」(1992年)

これ、数多くいるだろう太宰ファンから怒りを買う表現になってしまうかもしれないけど、

ぶっちゃけ、このアニメって太宰の原作小説を完全に超えてますから。


・・おいおい、と思う人も当然いるだろうね。
太宰の名作文学が、アニメごときで超えられるわけないやろ(怒)、と。

まぁ私の場合、そもそもが太宰の「走れメロス」とファーストインパクトがダメだったというか、正直いうと読む順序を間違えたのよ。

①「人間失格」⇒②「斜陽」⇒③「走れメロス」


という順序で読んじゃったから・・。
つまり、「メロス」の前に読んだ2作のインパクトがあまりにも強烈だったもんで、逆に「メロス」は屁に思えた、というところがある。
だって「人間失格」「斜陽」はコジらせ系の物語だったのに、「メロス」は普通に熱血系じゃん?
・・うん、分かりやすくいうと、「ブルーロック」を見た後に「キャプテン翼」を見た感覚さ。

「ブルーロック」
「キャプテン翼」

だけど、アニメ版の「メロス」は、たとえ「ブルーロック」を見た直後でも普通に大丈夫のはずです。
特にアニメオタクという人種には、もうタマらん作品なんだわ。

まぁ正直いうと、この作品は<作画オタク>にウッテツケの映画なんです(笑)

<「走れメロス」作画スタッフ>

【作画監督/キャラデザ】沖浦啓之

【原画】井上俊之

【原画】今敏

【原画】磯光雄

【原画】うつのみやさとる

【原画】橋本晋治



もう、今となっては絶対に実現不可能なドリームチームだわ。

なぜこんな凄いメンバーが集まったのかについては、正直、詳しいところはよく分からん。
だからあくまで私の想像なんだが、おそらく求心力になったのは作画監督の沖浦啓之じゃないかな、と。
沖浦さんってね、当時からちょっと特別な存在だったのよ。

なんせ18歳で、もう作監デビューしたという「天才」だし。


というか、16歳でもう業界デビューしてたらしい。
ギサブロー先生並みのキャリアやな・・。

沖浦啓之

それこそ、今でいう将棋界の藤井名人みたいなもんで、多くのアニメーターが「沖浦と仕事してみたい」という思いを抱いてたのは確かである。

まぁ、ちょっとしたバケモノでしょうね。
よく、彼と仕事をともにしたアニメーターが口にする内容が、「脳の作りが普通の人と少し違う」ということである。
多分、「空間把握能力」みたいなことをいってるんだと思う。
画を立体で脳内に自動構成できちゃう感じ?
よくサッカー選手の遠藤保仁が「天からのビジョンでピッチを俯瞰する」と言ってたが、稀にそういう能力持ってる人がいるんだよなぁ・・。

で、そんな「天才」がこの「メロス」では作監/キャラデザ/絵コンテと多岐に渡る仕事をしたわけで、というのも、監督のおおすみさんは画を描けない人なのよ。
よって、画的にはかなり沖浦色の強い作品に仕上がったと思う。

あと、制作が1992年ということもあり、時代としてはギリギリ末期のバブル経済といった感じかな?
妙に贅沢な資金が投じられており、たとえばだが、

ヒロイン役の声優が、なぜか中森明菜

音楽監督が、なぜか小田和正

めっちゃバブルやん!


・・そうだよね。
バブルでもなきゃ、今さら「走れメロス」アニメ映画化なんかしないって。

で、脚本は監督のおおすみさんが手掛けてるんだが、これがまた結構イイのよ。
太宰の原作を、かなりうまいことエンタメっぽくアレンジできてたと思う。
特に、ヒロインの中森明菜↓↓がめっちゃ幸薄い感じで

これは、そのまんま中森明菜やん!


と思ってしまった(笑)。

おおすみ正秋さんのことは知らない人も多いと思うけど、「ルパン三世」の初代監督であり、「ムーミン」の初代監督でもある人です。
ただし、「ルパン」も「ムーミン」も途中降板させられてるんだけど(笑)。

いや、これはおおすみさん自身が悪いわけじゃないんだけどね。
「ルパン」については「オトナ向けのアニメ」というコンセプトで始めたのに、放送開始3話目で早くもスポンサーから「子供向けに路線変更しろ」と言われて降りたらしい。
「ムーミン」の方は、原作者から「原作イメージと違う」と言われて降りたらしい。
多分おおすみさんって、お上から「こうしろ」と言われても、「承知いたしました」と従うタイプではないんだろう。
でも私の見た感じ、「ルパン」も「ムーミン」もアニメとしてのクオリティは決して低くはなかったぞ。
そこを思うと、おおすみさんって純粋に悲劇の監督なんだよな・・。

「ルパン」でお馴染みのこのムービーは、おおすみ監督の作品である

彼はもともと東京ムービー黎明期の演出家なんだけど、この東京ムービーは前身が人形劇の劇団だったという特殊なところなのよ。
で、彼も以前は人形劇の演出をしてた人である。
だから、その演出法も絵コンテを描かないというアニメ監督としては特殊な形態で、結構アニメーター泣かせだったと思う。

ところが、この「メロス」で沖浦さんとは妙に波調が合ったらしい。
おそらく、おおすみさんは人形劇出身の演出家だけに「立体」の舞台型演出なのよ。
そこを、画という「平面」の世界で仕事をするアニメーターは理解しかねて苦労するわけだが、でも天才の沖浦さんだけは3次元の「空間把握能力」があるだけに、おおすみさんの演出意図をほぼ即座に理解できたらしいんだよね。

そういう、おおすみ⇔沖浦の関係性があって、この「走れメロス」の画は妙に「立体」を感じさせるものとして仕上がってる。


じゃ、そのへんのニュアンス、実際に本編を見て確かめていただきましょうか。

「走れメロス」本編:約100分

・・うん、やっぱりこの映画、イイわ~!


改めて、太宰の「メロス」を読みたくなってくる。

じゃ、太宰ついでに、こちらの作品もご紹介しておきましょう↓↓

「人間失格」(2009年)

これもまた、なかなかの作品なんですよね~。

監督:浅香守生(「CCさくら」「ちはやふる」「GUNSLINGER GIRL」)
キャラ原案:小畑健(「DETH NOTE」「ヒカルの碁」「バクマン」)
設定イメージ原案:浜崎博嗣(「STEINS;GATE」「TEXHNOLYZE」)

で、こっちは「メロス」と異なり、ほぼ原作のイメージ通りで映像化をしてくれている。
主役の葉蔵は俳優/堺雅人で、これがまた結構巧いんだわ。
で、葉蔵を取り囲む女性陣のcvは、
・朴璐美
・久川綾
・能登麻美子
・田中敦子

って、どんだけ隙のない布陣やねん!

正直、実写映画のやつより、このアニメの方が遥かに完成度が上です。

じゃ、これもせっかくだから、本編を見ていただきましょうか。

「人間失格」(約90分)

素晴らしい世界観だと思う。
よくぞ、ここまで太宰ワールドに寄せられたもんである。
浅香監督、おそるべし。
ただ、そう何度も見たくはない内容だけどね・・。

この作品は、2009年に日テレで放送された「青い文学」という連続アニメの中の一篇で、他にも

「桜の森の満開の下」(原作/坂口安吾 監督/荒木哲郎)

キャラ原案/久保帯人

「こゝろ」(原作/夏目漱石 監督/宮繁之)

キャラ原案/小畑健

「走れメロス」(原作/太宰治 監督/中村亮介)

キャラ原案/許斐剛

「地獄変/蜘蛛の糸」(原作/芥川龍之介 監督/いしづかあつこ)

キャラ原案/久保帯人

という豪華ラインナップになってます。
マッドハウスの野心作である。

この頃のいしづかあつこ監督とか、まだ28歳の若手だからね?


これらに興味のある方は、いずれもYouTubeに無料フル動画ありますので、是非どうぞご覧ください。
いやホント、こういう名作文学に触れてみるのもいいもんですよ。


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